
器たち その思い出と 餅搗きの後
餅搗きは 春の恒例 華やぐ住まい (7)
この餅搗きを支え、彩りをそえてくれたのが、たくさんの器たち。
どうやら、先生のお父様、鈴木信太郎先生も、お仲間やお弟子さん方々を集めて、宴会をされることもあり、維新號を家によび、料理を頼み、宴会をされた、とか。
この食器の数と、年に一度の餅搗きには、こうした鈴木家の家風もあるのかも。
さて、茶の間の台所には食器棚が2台。普段、先生との食事には、こちらの食器を使っていました。先生の普段づかいのお茶碗、お箸を始めとして、様々なグラス、小鉢、お鉢や大皿、それぞれが取り分けて使う銘々皿、どんぶり、お椀、蕎麦猪口などがあります。また、お箸とお猪口、徳利は、次の間の水屋に。特にお猪口は、箱にたくさん入っていて、各々の呑兵衛具合に合わせ、好きな物を選べる仕組み。
これら食器は、宴会となれば「そこから適当に持って行って下さい。」といわれ、これら様々な食器を、参加する人たち皆で準備するのです。
しかし、よくみると、見るからに立派な塗りの御椀、海外の器、古そうなものも。
大皿は、なんと!お父様の鈴木信太郎先生が筆で書かれた?と伝わるお皿まで。
そのため、普段は、ただならぬ雰囲気を感じる器は、控えたいところなのですが、先生は普通にお使いになれるので、洗い物時は、絶対割らないよう洗ったり、塗物は、洗剤を使わずぬるま湯でそっと布で洗ったり、緊張してました。
そして、年に一度の餅搗きは特別体制。
準備は前日から。
先生が、書斎の奥にある御蔵に入り(私たちは入ったことがありません)、まずは臼と杵を、そして、たくさんの箱入り食器も、続々と登場します。出された箱は、まず、座敷の次の間に所狭しと並べられ、先生と一緒に、そのいわれをききつつ、大皿、お鉢、銘々皿等、様々なものを次々と箱から出して並べます。これら様々な器に、お餅や手土産の品々が並べられ、それぞれの座卓へと運ばれていくのです。
しかし、ピークにさしかかると、皿が、コップが足りない!なんてことも。
そこで、すでに空いたお皿やコップ、お箸を下げ、洗い、ふきんで拭き、作業台に置いた頃には、また器たちは、再出動。そのため、ふきんとして使う手ぬぐいを、たくさん用意しておくことも、重要任務の一つでした。
そうこうしているとなかなか美味しいものにありつけなさそうなのですが、実は、台所チームは、事前に「味見」と称して堪能。あのババロアも、配り終わる最後の残りをちゃっかりと頂いていたのでした。役得、役得、笑。
しかし、実はこれだけの器、出すのは簡単ですが、片付ける時が大変!
どの皿がどこに入っていたか、わからなくなってしまうのです。そこで、初代書生HYUNさんのアイディアで、箱入のものには箱に付箋が貼られ、そのお皿の特徴や枚数、絵が描かれています。ですので、片付けもスムーズ。ありがたい妙案です!
一方、問題は食器棚。器総動員ですので、食器棚がほぼ空っぽになったところに、収めていくことになりますが、これが神経衰弱のよう。確かこれは、ここ、ここにこれを入れて、その手前にこれだったような…。日々の記憶が試されます。
ある年の餅搗きの翌日、先生から「私のお茶碗とお箸がないんです…。」との声。
慌てて、先生と二人、あちこちを探し回ってようやく発見!
先生は、これを「食器探しゲーム」と称し、それなりに楽しんでおられましたが、さすがにお茶碗やお箸は…いうことで、2階水屋に隠す知恵が生まれたのでした。
今だと、紙皿でいいんじゃない?と思う方もいるかもしれませんが、一つひとつのお皿を、思い出といっしょに年に一度ひっぱり出し、みんなをもてなし、みんなで楽しみ、思い出が重なる。そして、また、大切にかたづける。
けっこう大変なんだけど、なんだか楽しい。どこかお雛様に似ていた気がします。
追伸 noteを書き始めたら、なんとあのババロアに憧れて、同じ器を持っていたという友人が出てきました!
右下の写真、赤い器こそ、あのババロアの器と同じものです。後は、中身…。
