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「文文日記」の舞台 「鈴木信太郎記念館」

成文先生 信太郎先生 そして 鈴木信太郎旧居

伝説のおじいちゃんブロガー、鈴木成文先生の「文文日記 日々是好日」。
その暮らしの舞台、そして、私たちが「書生」と称して暮らさせて頂いた住まい、それが、豊島区にある区指定文化財「鈴木信太郎記念館」なんです!

実は鈴木成文先生は、鈴木信太郎氏のご長男。
成文先生は、鈴木信太郎氏が建てられた成文先生とほぼ同い年のこの旧居を守り、住みつないでこられました。そして、2010年成文先生が急逝されたこともあり、ご遺族の皆様のご意向により豊島区に寄贈されて、2018年豊島区指定有形文化財「鈴木信太郎記念館」が誕生し、地元や海外など多くの方に親しまれています。

ところで、「鈴木信太郎氏」をご存知でしょうか?
鈴木信太郎氏は、フランス文学者、東京大学名誉教授で、辰野隆氏や山田珠樹氏らとともに東京大学文学部仏文科の活性化に尽力、小林秀雄や三好達治に代表される多くの後進を育てた教育者でもいらっしゃいます。

20世紀前半の日本のフランス文学研究黎明期に、ステファヌ・マラルメなどの象徴派の詩人や、ヴィヨンを中心とする中世文学を研究したフランス文学者です。
また、フランス文学関係の稀覯本蒐集家(きこうぼんしゅうしゅうか)としても知られています。(稀覯本…手に入りにくい珍しい書物)

豊島区 鈴木信太郎記念館 ホームページより

また、プルースト「失われた時を求めて」の抄訳や完訳で著名で、昨年ご逝去された鈴木道彦氏(フランス文学者、獨協大学名誉教授)は、鈴木信太郎氏の御次男、鈴木成文氏の弟様にあたられます。
実は、フランス文学って、とっつきにくそう…っと思っていました。そんな私が、書生として住まわせて頂くことになり、初めて読ませて頂いたのは、辰野隆氏との共訳、エドモン・ロスタン著「シラノ・ド・ベルヂュラック」でした。
2022年、イギリスのジョー・ライト監督による、ミュージカル映画「シラノ」が上映されていましたが、文学座などでも上演される、あの「シラノ」です。

この鈴木信太郎氏によって建てられた鈴木信太郎旧居は、昭和3年建設。
以下、NPO住文化と文化遺産を守る会による鈴木信太郎旧居リーフレットより。
『この建物には物語があります。大正末にフランスに留学した鈴木信太郎は、専門のフランス中世および近代の詩集等の貴重な書籍・豪華本を多数購入しましたが、帰国に際して送った荷物が船火事で全部失われてしました。そこで、世の中でいちばん大事なものは書籍だとの考えから、当時は住宅では珍しかった本格的耐火書庫を造ったのです。

書庫の外観
書庫の内観(成文先生がお使いになられている様子)

太平洋戦争末期、米軍機の空襲を受け、木造母屋は全焼しましたが、防災の備えのあった「書斎」のみは火災から守られました。書斎は2階部分は焼失し、鉄骨骨組の焼けた姿を曝していました。戦後1946年に木造平屋15坪の「茶の間・ホール」を新築し、さらに1948年に埼玉の鈴木家旧本宅の一部「書斎座敷」を移築・接続して、現在の姿になりました。』
(これら写真は、豊島区に寄贈される前に、記録として撮影された写真です。)

ホール部分
茶の間
座敷・続き間

私は、そんな物語をもつ建物に、何も知らないながら、寄贈される10年ほど前の1998〜2000年の3年間、4代目書生として住まわせて頂きました。
でも、住まいの歴史を知ると、この住まいの持つ雰囲気や何ともいえない趣きも、納得です。
ちなみに、私は現在、設計事務所を主宰する建築士。また、その傍ら、大学で住居についての教鞭をとっています。これから、少しずつ、建物とその魅力、その暮らしぶりを、日本の建築や文化の素晴らしさも交え、お伝えしていきたいと思います。どうぞお楽しみに!(NAN)

*鈴木信太郎氏、また、鈴木信太郎記念館について、詳しく知りたい方は、
 鈴木道彦 著「フランス文学者の誕生 マラルメへの旅」2014年 筑摩書房
 をぜひご覧下さい。


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