【オープンデータでデータ分析】石川県19市町の標準距離から測るコンパクトシティ度
おつかれさまです。石川県のシビックテック団体Code For NotoのBee.B.です。
民間企業で働きながら、石川県のデータアナリストをしている者です。
今回は、オープンデータを活用して、コンパクトシティ度を測る「標準距離」を算出し、奥能登地域の人口の散らばり度合と歳出の関係を見ていこうと思います。
本当はもっと深い研究まで踏み込むべきなんですが、今回は標準距離を算出してざっくり散布図を描くくらいの1合目程度の分析です。
まずは人口重心の定義
※すでに人口重視について知っている方は、飛ばしてください)
総務省統計局「我が国の人口重心」
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/topics/pdf/topics135.pdf
人口重心とは、人口の一人一人が同じ重さを持つと仮定して、その地域内の人口が、全体として平衡を保つことのできる点をいいます。(以上のリンクから引用)
総務省による定義:
人口重心は、行政施設や商業施設などをどこに置けばよいかといった施策に生かされたり、
被災した人口から算出された「被災重心」を求めることで、仮設住宅をどこに置けばよいか。と言った用途で検証に用いられている。
石川県に住んでいる人にとったら、大体どこが重心なのかは直観的に分かるかもしれないが、
実際に定量的に可視化することで、きちんとデータに基づいた施策を行うことが出来る。
扱うデータ
今回は以下の国勢調査2020の1kmメッシュデータを用いて人口重心を算出する。
総務省統計局の公表している人口重心は、町丁字ベースで算出している。
メッシュベースの中心緯度経度で計算を行うと、例えば、海に面しているメッシュの場合、人の住んでいない海に中心が来ていたり、県境のメッシュの場合、隣の県と按分する必要が出てくるが、今回はそれらを考慮せずに計算することとする。
実際の計算結果
石川県19市町の人口重心
実際にGoogleマイマップにプロットしたものがこちら
次に奥能登2市2町のそれぞれの人口重心について詳しく見ていこう
標準距離の定義
コンパクトシティを考える上で、人の散らばり具合が公共サービスのコストに与える影響を分析されるケースがある。そこで、都市の中心からの散らばり具合=「標準距離」を算出する。
標準距離:都市の中心部からそれぞれの小地域までの距離の標準偏差をその地域の人口で加重して算出する
本検証では、1km地域メッシュ内の人口数を用いて、それぞれの地域メッシュに存在する緯度経度の位置情報を人口数で加重平均することにより、都市の中の市街地の重心(人口重心)を特定させる。
さらに、その重心からのそれぞれの地域メッシュ距離のばらつき状況を指標化するために、都市の中心点からそれぞれの地域メッシュの中心点までの地表距離について人口数で加重した標準距離を人口数の平方根で除した数値を用いて「標準距離」とする。
ただし、SDは標準距離、𝑟_𝑖 は中心点からの地表距離、ℎ_𝑖は地域メッシュiにおける人口数
なぜ標準距離なのか
令和6年能登半島地震を機に、地方分散と都市部への移住、コンパクトシティの議論が活発に行われるようになった。
もともと特に能登半島は歴史が長く、北前船によって栄えた日本海側沿岸部や、平家末裔の時国家、上時国家のような豪族、畠山家や前田家、そして天領地としての歴史がある。1881年~1886年までは、福井県の越前地域を含む大石川県は日本で一番人口が多い都市だった。その後、鉄道が通ったことで大西洋側に都市の拠点が移り、人口が減少していった。1960年代には能登ブームと呼ばれる能登半島に旅行客が殺到する時期があり、当時の民宿施設が現在も見て取れる。平成に入り、蛸島や輪島まで伸びていた鉄道も廃線となり、交通も不便となり、奥能登地域には約5万人ほどの人が集落ごとに沿岸部、山間部、市街地に点在するようになった。
計算結果
さて、地域内に人口が散らばっていることが、どのような経済的な負担となるか。という点について、ひとつ検証してみる。
標準距離と一人当たりの歳出総額プロットしてみよう。
上図から分かるように、標準距離が大きいほど一人当たり歳出総額が大きくなる傾向がある。一見、面積が大きければ標準距離が大きくなるのではないかと思われるかもしれないが、次の図は面積と標準距離の関係を表している。
白山市、金沢市、小松市、加賀市は面積は大きいが標準距離は奥能登ほど大きくない。奥能登地域と加賀都市部地域で標準距離の枝分かれが出来ている。
奥能登地域の上下水道のインフラを考えてよう。
標準距離と一人当たり上下水道費の関係は以下の通り。
奥能登地域は標準距離の大きさと一人当たり上下水道費には関係がありそうだ。ただ、ここで、中能登町や宝達志水町の上下水道費の財政負担が大きいことが分かる。ここで、手取川ダムの給水地域とともに見てみよう
手取川ダムが都市用水を運んでいるのは、なんと七尾市まで。中能登町と宝達志水町は手取川の都市用水を使用していないことが、上下水道費の財政負担に大きく影響してそうです。
大震災後に「創造的復興」を目指す石川県としては、この上下水道インフラを今までのまま直すのか、それとも循環型のインフラを整備するのか。このデータがEBPMの一歩となりそうです。
まとめ
今回は標準距離をコンパクトシティ度として採用しました。コンパクトシティを測るためには様々な先行研究がなされているので、今後もう少し深掘りした検証を行いたいと思います。
標準距離や人口重心を見ることで、奥能登地域は集落の点在やインフラ整備などの要因で一人当たり歳出総額が加賀地域の都市部よりも大きいことが可視化されました。
今後、創造的復興を進めていく際には、人口分布がいままでと大きく変わるはずです。こうした人口重心や標準距離を引き続き算出していきたいと思います。
それではまた。おつかれさまでした!
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