【オープンデータでデータ分析】石川県能登地域の人流は震災でどう変化したのか
おつかれさまです。
石川県のシビックテック団体Code For NotoのBee.B.です。
民間企業で働きながら、石川県のデータアナリストをしている者です。
今回は、オープンデータを活用して、震災の被害の大きかった石川県能登地域3市3町の人流の変化を見ていきます。
扱うデータ
今回も、2023年10月に公開された公益社団法人 日本観光振興協会さんのデジタル観光統計オープンデータ(お試し版)を使います。
データの概要はこちら
https://www.nihon-kankou.or.jp/home/userfiles/files/d-toukei/gaiyou.pdf
ざっくりいうと、GPS系の人流データを市区町村ごとに集計して公表している数値という感じですね。
このデータのすごいところは公表速度。
毎月第2週目の木曜日に公表されるようです。国の公表している観光宿泊統計は2か月くらいのラグですので、それに比べたらものすごくはやくて使いやすいデータです。
発地別の統計ではないものの、全体の傾向を分析するのには十分なデータです。
データの準備
データは月ごとにダウンロードし、ひとつのファイルにまとめておきます。フォーマットも月ごとで変わったりしない良心的なデータです。
解釈上の注意
GPSデータを基にしたデータのため、本当にその人が観光で来ているかは分からない。そのため、各種キャリア系の人流データは、滞在時間から居住地や勤務地を推定し、それ以外は来街者=観光客と解釈することが多い。
今回も現場の感覚からして、観光客が来ているとは思えない。間違いなく、災害救助・災害支援のために来てもらっている人たちだろう。
分析
例によって、こちらの画面で分析していきます。
珠洲市
最果ての地、石川県珠洲市の2024年1月は前年同月比+1.96%となっており、観光客ではないとすると、災害支援者がどれだけ多く来ているかが分かる。また、1.5次、2次避難所に移動している人も多く、高齢者も多いため、GPSデータでログが落ちているのは、災害救助者だと推測できる。
また、珠洲市や輪島市では2024年2月現在でも停電している地域も多く、電波が入っていない状況も長く続いたため、数字以上に災害支援者が入ってきていたのだろう。その様子は能登町や穴水町を見ると分かる。
能登町
能登町のデータは外れ値のように大きくなっている。幹線道路が崩壊し、交通渋滞も発生していたことから、車中の人のGPSが拾いやすかったのではないかと推測できる。同様に交通渋滞がひどい穴水町も見てみよう。
穴水町
穴水町も能登町同様に外れ値のように大きく跳ね上がっている。能登町や穴水町の外れ値観測は、電気の復旧の早さの違いや、交通渋滞でその場に留まる来街者が多かったことなのではないかと推測する。また、穴水町と能登町の道路を復旧は、先にある珠洲市への道であり、輪島市東部にも繋がるため、最重要な復旧拠点として多くの支援者が入ったと言えるだろう。
輪島市
輪島市も停電地域が多かった影響か、珠洲市同様に前年同月と同様の数値となっている。しかし、これは観光客の数ではなく、災害支援者の数だろう。
志賀町
志賀町は元々2つの町が合併しており、北部と南部に分かれている。町役場がある南部は地震の被害は少なく、北部は被害が大きかった。志賀町も輪島市同様に月に2万人程度の支援者を観測している。
七尾市
七尾市は和倉温泉街で年末年始を過ごす人が多いため毎年1月も多くの観光客が訪れる。2024年1月は大きく下振れしたように見えるが、輪島市・志賀町と同様に、おそらく支援者と思われる人が、月に2万人程度が記録されている。
さいごに
このような定点観測は毎月続けていくことで、復興に兆しや観光への転換点が見えてくると思っています。
今回の震災を見ていると、観光と災害は表裏一体だなと感じています。
観光施設だったところは避難所になる。災害が落ち着けばまた観光に戻る。
観光施設にも災害用の設備は完備しておく必要性を特に感じております。
日々、寒い中災害復旧作業をしてくださっているみなさまに心より感謝申し上げます。
それでは、また次回。
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