おつかれ
今朝、私はスマートフォンのアラームで7時に目を覚ました。なんでもない、いつも通りの朝だった。窓の向こうに見えるのは曇り空。遠くから聞こえる朝の喧騒に嫌気が差す。
「あー、疲れたわ」とこぼれた。
そう、私は疲れたのである。
体を起こし大きく伸びをする。ぱきこきと音がする。心地よい。窓を開けると薄汚い空気が部屋に流れ込んできた。大きく空気を吸い込む。
さて、今日も1日頑張るか。
とはならない。
今日は頑張る気などない。
無造作に破かれた封筒から覗く請求書をゴミ箱へ押し込む。顔を洗い、いつもとなんの変哲もない平凡な顔を睨む。
「おいおいおい、なんだその顔は」
「はい!いつもの顔ですが!」
私は表情を変えながら鏡と会話をしてみた。あまり楽しくはない。
そう、私は疲れているのである。
そのときは突然訪れた。その刹那。というやつだ。靴棚の上に置かれた社員証を手にした瞬間だった。
仕事いきたぁくねぇえぁあえあ
こうして私は海に来た。細波の音に着信音が混ざっている。うざったい。私はスマートフォンをおもむろに鷲掴みにし、大海原目掛けて肩を振り回した。指先から離れたスマートフォンが一瞬だけ私に語りかけた気がした。
「おつかれ」
「おつかれ」
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