箸休め編 佐田 2
また佐田の話をしよう。
この男はとにかく浅いのだ。
研修生の男の子が来た時の事だ。
佐田と私の所に研修をしに来た男の子は1日一緒に仕事をする事になった。
そもそも朝から佐田の様子はおかしかった。
緊張しなくて大丈夫だって!と言いながら研修生の背中を叩いて見せる佐田。
何だ。このお兄さん感は。佐田のクセに。
私の性格が悪い様だが、いつもの佐田を見ている私からすれば違和感しかない。
朝から何か腹が立っていた私は、お前が言うな的な突っ込みをしたい気持ちを抑えつつ様子を見る事にした。
仕事場に向かう途中の車内でも佐田節は炸裂した。
わけーっていいなぁー
ほら俺なんか肌もうボロボロだよー
はは。。。
研修生の正解である。
はは。。。なのだ。
うるさい。
そもそも、この私がいてよくもまぁあの振る舞いが出来たものだ。
昼休憩になり研修生がパンを2個買って来た。
パン2個で大丈夫かぁ?
若いんだからちゃんと食べないとだぞー
はは。。。
研修生の正解である。
はは。。。なのだ。
うるさい。
いつも佐田はといえば 嫁がお金持たしてくれなくて と言って何も食べないじゃないか。
その時に凄く嫌な事がある。
食べてない佐田を横目で見ると必ず何もしないで前を見て座っているのだ。
気持ちが悪い。
携帯やら寝るやら何かして欲しい。
ただ、前を見て座るのは本当に直して欲しい。
気持ちが悪い。
その日はどこからお金が湧いたのか、奮発してカップ麺におにぎりを食べていた。いっぱい食べる元気なお兄さんの成功である。
そんなこんなで仕事も終盤に差し掛かった頃、最後の仕事場に向かう車内で事件は起きた。
若いから遊んでんだろー?
。。。いえ、全然です。
おぃおーい、若いんだから遊んどけよー!俺なんか若い時は女とか色々遊びまくってたぞー
。。。え?
研修生の大正解である。
。。。え?なのだ。
初めて会った研修生にも見抜かれている。
手が出そうなくらいにうるさい。
遂に我慢できなくなってしまった。
え?佐田?遊びまくってたの?
女??
詳しく教えてもらおうか?
遊んでたとは?何をして遊んでいたんだい?
だいたいの遊びは。。。
え??
佐田!おい!ごめん無理だ!
何でそんな事言うんだよ!
隣で研修生は下唇がもげてしまいそうなくらいに下唇を噛み締めて笑いをこらえている。
。。。嘘じゃないっすよ。。。
おぅ。そうか。ならいいんだ。
ごめんな。
信号で止まった佐田の顔面は赤信号と全く同じ色をしていた。
あれから何年か経ったが、あの時の佐田程ダサい人にまだここ数年会っていない。
それに私には、昔からお酒も呑めないですし初めて行ったスナックでぼったくられて払えなくて親を呼んだ話とか、そんなんが佐田らしくて可愛いのにこんな佐田は見たくない。
可愛くないしお兄さん大失敗である。
少しだけ嫌いになってしまった。
こんなお兄さん見たくない。
研修生を下ろして佐田と2人になった。
俺も悪いのだが、やっぱり気になって聞いてしまった。
ねぇ、何で嘘ついたの?
。。。
おい!何で嘘ついたんだ!
。。。嘘じゃないです!
うわ。うわうわうわ。こいつやり切る気だ。
でも、可哀想なのでこれ以上は詰めなかった。
ある日の佐田の出来事でした。
つづく