書店パトロール24 普段使いじゃない書店には罠が仕掛けられている。
自分に興味のある本棚ばかり行っていたら新しいものに出会えなくなる。と、言いつつ、いつも同じ場所にばかり行ってしまう。
だから、本屋にこそ、書店にこそ、違う品揃え、というのを期待してしまう。
私は基本的には、文学、映画、芸術(美術)、漫画、アニメ、建築が好きである。スポーツ系は基本は雑誌しか読まない。サブカル本はたまに手に取るくらい。料理、写真、音楽、ライトノベル、一般文芸、アイドル、思想、宗教、哲学、宇宙、生物、などはあまり読まない。むしろ弱い。なので、私は非常に偏っている。
いつも足を運んでいる書店、これなんぞもう見飽きている。いつも同じコーナーに行って、たまたま目にした本を手に取り、パラパラと捲る。もしくは、新刊を手に取る。なので、違う本屋に行くと、お、これは……となることが多いし、お店のレイアウトが異なるので、意外な景色から意外な本が飛び込んでくることがしばしばあるのだ。
そんなこんなで、今日は気になった本がいくつか(いつもと違う本屋だ)。
まずは、『奇界遺産』。この写真集は既に10年以上前に出た本で、なんか変な遺跡とかいっぱい載っていて面白そうだった。
然し、これは入り口でしかない。私はその隣に置かれた同著作者の真っ赤な本に目を奪われる。
おお……。この写真、最高にイカすなぁ。これは今年の6月に発売された本のようだ。北極の廃墟であるピラミデンを撮ったこの廃墟写真集はたまらなく美しい。なんというか、こう、ブルータルで、『ブレードランナー2049』感があってええなぁ。パラパラと捲る。うーん、私には識らない場所が世界にはまだまだあるのだなぁ。とボソボソと呟きながら本を戻す。
まぁ、ピラミデンはソビエト連邦時代の遺産のようで、『ブレードランナー2049』もまたロシア・アヴァンギャルドというか、ソ連的な美術デザインのため、似てくるのは仕方ない。
次に私が手に取ったのは、『明治大正昭和 化け込み婦人記者奮闘記』だ。これも今年の6月に発売した本。
新聞黎明の頃、婦人記者が身分を偽り潜入取材ーつまりは、『インファナル・アフェア』であり、『ディパーテッド』である、ということだが、まぁ、潜入捜査なのだろうか。
これは結構当時資料が紙面にも掲載、充実していて、なかなか面白そうだった。で、当時資料が、といえば、その周囲に置かれていた『女の世界』がまた面白そうで、これもまた当時資料が豊富だ。
大正時代の雑誌『女の世界』に焦点を絞り、そこから大正という時代を炙り出していく本だ。まずは装丁が美しいこと、そして、『女の世界』は私もよく識らない雑誌で、こういう資料が多い本は本当にいいなぁと思う。
それから、今月発売されたばかりの『大阪の生活史』。
これはインタビュー本だが、まずは激烈に分厚い。濃厚だ。まぁ、全部読もうと思えば普通にドストエフスキーの『白痴』ばりにかかるだろう。それよりはライトだろうが。
然し、様々な街の人々へのインタビュー。これは非常に読んでみたい本だが、5,000円という金額に腰砕け。隣には2年前に発売されている『東京の生活史』も並べられている。東京と大阪。まぁ、日本の超巨大サイバーシティの二大巨頭だが、どちらも結局生きているのは人間なんでね、そういう、市井の声、というのは大事かもしれない。
それから、『沖縄の生活史』も。全部読むのに、まぁ私なら1年は要するだろう。私は一気に読む派ではないのだ。
そもそも、基本的にはどんな本でもつまみ食い、人生つまみ食い、というのが私の信条であり、そんな私がこの本3冊に15,000円もの大金をかけても、おそらくトータル20%くらいしか読めないだろうね。
そして、雨宮まみさんの『40歳がくる!』
女子をこじらせて系のエッセイを書き続けていた雨宮さんの本である。もう亡くなられてからだいぶ経つが、このように美しい装丁の本として出会えるのは不思議な感覚である。結句、芸術、というのはタイムマシンである。それも自覚なきタイムマシンである。書いた本人は、私が今こうしてこの本について思いを馳せているなど、私のことなぞ当然識らぬわけだし、思いも寄らぬことだとは思うけれども、然し、現実に、人が書いたもの、作ったものは、どこかで花を咲かせ続けているわけであって、それがはるか彼方、私達が神話の時代の存在として語られるときですら、誰かの心を揺らす言葉として、それが生命を咲かせるのであれば、それはもう、何より美しいことではないか、と思える、とはいえ、けれども、人は生きている時に、誰かに良かったよ、素晴らしかったよ、好きだよ、と語りかけてほしいものなのだ。
生きている時、死んだ時、そのどちらで花開けども、おそらくは、その人が懸命に書いたものは、どこかで美しいとそれを愛でる人がいてくれるもの、であって欲しい。