自閉症児の日常~お面の制作~
息子は現在小学2年生。自閉症と知的障害があり、公立小学校の支援級に在籍している。
先日、息子が交流級(支援級在籍の子が通常級に入って一緒に授業を受ける)で図工の授業に参加してきた。
その日の課題は「お面を作ろう」。
人の顔の形をした芯材に、カラフルな花紙を貼りつけて、自由にお面を作ってみよう、という工作だったようである。
「お面」という語から、鬼のお面や、何かかわいい動物などを想像しながら、「何のお面を作ったの~?」と何気なく息子に聞いてみた。
すると、「寝たままキャンディースティックをくわえているおじさん」
という予想を激しく裏切る回答が寄せられた。
「???ごめん、何て?もう1回教えてくれる・・・?」
何かの間違いだろうと思い、再度確認してみたが、息子の回答は全く変わらず、「寝たままキャンディースティックをくわえているおじさん」だった。
キャンディースティック・・・?
おじさん・・・??
なぜわざわざ「おじさん」・・・?
しかも寝たまま・・・??
お面で「寝たまま」って表現できるのか・・・?
もう何から何までわからなかった。
しかし息子は、さも当然という顔で、それ以上の説明はしてくれなかった。
息子は以前に比べると、ずいぶん会話が上手になってきたものの、まだ会話がキャッチボールにならないことは多々ある。
これ以上、無理やり話を聞き出すよりも、実物を見せてもらったほうが早いか、と思い至り、「お面、持って帰ってきたら見せてね」とだけ伝えておいた。
そして、いざ持ち帰られてきたお面がこちらである。
あー、うん、なるほど・・・???
実物を見ても何もわからなかった。
合わせて持ち帰ってきた制作見本の用紙には、予想通り、鬼や動物のお面が載っていた。
どれもかわいらしく作られている。
片や、息子のお面は、何とも言えぬ不気味な存在感を放っている。
絶対に夜中に見たくはない代物である。
「顔が赤いのはね、日焼けなんだー」
息子が嬉しそうに解説を加えてくれた。
そうか、おじさん、日焼けしてるのか・・・。
その情報が加わったところで、残念ながらおじさんに親近感は湧かなかった。
「よーし、お面、大事にとっとこうね~!」
息子にそう声をかけ、決して夜中にうっかり目が合わぬよう、お面は厳重にしまいこまれることとなった。