未来を予測する最善の方法とはなにか?
不確実で先行き不透明な状況で、未来を描く方法について整理してみました。未来予測(Forecast)、未来洞察(Foresight)、そしてバックキャスト(Backcast)の3つ。中でも私が重要だと考えるのがバックキャスト。未来を予測する最善の方法がこれなのです。
未来を描く3つの方法
まずは未来を描く方法の一般的な考え方を説明しておく。
1. 未来予測(Forecast)
未来予測は、過去や現在のデータを基に、未来の出来事やトレンドを予測する方法です。例えば、過去の売上データや市場動向を分析し、将来の売上を予測することが典型的な例です。未来予測は、以下の特徴を持つ:
データ駆動型: 客観的なデータに基づいて予測を行う。
直線的思考: 現在の延長線上に未来を見出す。
シナリオ分析: いくつかの可能性を考慮し、最も確からしいシナリオを描く。
2. 未来洞察(Foresight)
未来洞察は、未来の可能性を広範囲にわたり考察し、さまざまなシナリオを描く方法です。これは、単なる予測ではなく、未来の不確実性を理解し、異なる未来のビジョンを想定するプロセスです。特徴としては:
広範な視野: 多くの異なる未来の可能性を検討する。
システム思考: さまざまな要因や相互作用を考慮する。
創造的思考: 予測不可能な要素を含む、複数のシナリオを描く。
3. バックキャスト(Backcast)
バックキャストは、未来の望ましい状態、ありたい姿を創造的に設定し、その実現に向けて未来から逆算して行動計画を立てる方法です。未来予測や未来洞察と異なり、バックキャストは意図や意思を持って実現したい、望ましい未来を描くことに重点を置く。バックキャストの特徴は:
目標志向型: 未来の理想的な状態から逆算して行動を決定する。
創造的アプローチ: 現在の制約に囚われず、理想的な未来を描く。
実行可能性: 具体的な行動計画を立て、実行に移す。
行動や実行を前提とした未来デザイン
3つの未来の描き方で、前2つと最後のバックキャストでは明らかに位置づけが異なる。Forecast(未来予測)の目的は予測であり、Foresight(未来洞察)の目的は可能性を検討することである。どちらも未来の姿を客観的、分析的に描いている。一方でBackcastは実現したい未来を描く。さらにそこから逆算して具体的な行動まで落とし込んで検討する。行動が伴うバックキャストだからこそ、そこには主体性や自分ごと化が強く求められる。
ありたい姿の意義と価値
バックキャストで設定するありたい姿は、単なる数値目標だけではいけない。実現したい未来の状況を具体的に描いたものであり、情景が思い浮かぶストーリーであることが理想である。なぜなら、単なる数字にワクワクする人はいないからだ。そこで私はありたい姿に以下の要素が含まれているのが理想的だと考えている。:
社会的価値: 社会全体に貢献し、持続可能な発展を目指す要素。
機能的価値: 実際に提供する商品やサービスが持つ具体的な価値。
情緒的価値: 人々の感情に訴えかけ、共感を呼ぶ要素。
ありたい姿は、ただ未来の状況を描くだけではなく、それを実現したいという魅力的で魅惑的な希望を持つものでなければならない。これが、人々を惹きつけ、共感を生み、モチベーションを高める力となるのだ。
ありたい姿はチームで共創すべし!
バックキャストには、実際に実行や行動するチーム全体でありたい姿とアクションプランを共創することが重要となる。共創することで、メンバー全員がビジョンに共感し、自らの役割を理解し、積極的に参加するようになるからだ。チームで共創すると以下のような効果も期待できるだろう。
エンゲージメントの向上: 自分たちが設定した目標に向かうことで、メンバーのモチベーションが高まります。
創造性の発揮: 多様な視点やアイデアが融合し、革新的な解決策が生まれやすくなります。
チームの一体感: 共通のビジョンに向かって協力し合うことで、チームの結束力が強まります。
未来を予測する最善の方法とはなにか?
自らそれを作り出すことである
「未来を予測する最善の方法は、自らそれを創りだすことである」
これはアラン・ケイの名言である。彼はパソコンの父といわれており、 1972年に現代のiPadの原型となるコンセプト(ダイナブック)を発表した。その後、多くの革新的な技術開発に携わった。グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)、ウィンドウシステム、マウスなど、現代のコンピュータの基盤となる技術を開発した。また、オブジェクト指向プログラミングのパイオニアの一人でもある。
ありたい姿を共創するバックキャストこそ最善の方法
未来予測や未来洞察は重要であるが、これだけでは何も生まれない。予測や洞察も参考にしながら、実現したい未来を描くことこそが重要である。
ただし、ありたい姿をリーダーや一部の人が描いてメンバーに検討させるようではうまくいかない。行動するメンバーといっしょに作り上げるべきである。
アフリカのことわざに「早く行きたいなら一人で行け、遠くまで行きたいなら皆で行け」というのがある。未来を予測し実現したいなら、チームの力や共創は不可欠じゃないかとおもう。
行動を起こすことが未来を現実に引き寄せることになるのだ。
ありたい姿を共創するバックキャストこそが未来予測の最善のやり方だと私は考える。
さいごに
バックキャストは、未来の理想的な姿から逆算して現在の行動を決定する強力な手法である。未来予測や未来洞察と異なり、バックキャストは意図や意思を持って未来を描き、具体的な行動計画を立てることで、長期的な成功と持続的な成長を実現する。チームで共創することで、全員がビジョンに共感し、モチベーションや創造性を高めることができる。未来を描き、現在を変える力を手に入れてみませんか。共にありたい姿を創り出し、未来を自らの手で創り出すのです。