Why
(電話の音)
ロ)もしもしジョン ローザよ おめでとうって言いたくて
ローザ 電話ありがとうございます
ロ)そりゃ朝から11件もメッセージ残されちゃね
あぁ そうでした
ロ)自分を誇りにおもいなさい なにもかもが美しかったわ
本当に? ありがとう キャストが素晴らしかったし 観客もみんな喜んでくれてたと思うし
あっあの 彼には会いましたか ス、ス、ス
ロ)スティーブン? 私は話したかったんだけどね
彼急いで帰っちゃったのよ
でもみんな楽しんでたわ おめでとう ジョン また近いうちにね
あぁ ちょっと待ってローザ あの どう思いますか 何か起きるかなって
つまり この作品を次のステップに進めたがる人いるかなって
つまり あなたが呼んでくれた興味深い関係者達は何か言ってましたか
ロ)えぇ ジョン みんなあなたの才能にぞっこんだったし
待ちきれないと思うわよ 次の作品が
次の作品?
ロ)えぇ なにかに取り掛かったら逐一私に知らせてね
何も? ちょっとしたオファーもなし?
ロ)ジョン わかってたことよ
あの作品はちょっと風変わりでブロードウェイ向きじゃないの
かといってオフブロードウェイでやるには出演者が多すぎるし
未来の話だから舞台装置にもお金がかかるでしょ
ミュージカルの劇場はどこへでも行けるニューアーク空港みたいなものなのに
あなたはバッファローで雪に埋もれてるって感じ
私今あなたの心臓をつかみだして熟した果物みたいに食べちゃったけど
くだけた夢のかけらは自分で片づけてね
バイバイハニーハッピーバースデイ
この後 関係者から3本電話があったけど みんな同じようなことを言った
マ)ジョン
僕はマイケルのオフィスに行く
もうおしまいだ マイケル
マ)は?
俺は演劇に音楽 人生をささげてきた
自分の持てる才能と努力をすべて注ぎ込んで 誠実に挑戦してきたつもりだ
そしてそれはうまくいかなかった
やったことに後悔はない 誇りには思っている
でも今は自分の状況をしっかり見つめて
自惚れずに 自分に嘘をつかずに 別の道に進むべき時がきたことを認めるべきだ
俺は行き詰ってる
他のみんなは お前やスーザンも前に進んでるのに
俺だけがまだ壁に頭を打ち続けているんだよ 痛いんだよ
だから いったんやめようと思う
あぁ 大事なのはいつだって戻ってこられるってことだ
もっと歳をとってかしこくなって 何をやりたいのかもうちょっと明確に見えてきたとき もしまたやりたければ
少し楽になった
口に出すだけで気持ちが軽くなったよ
マ)そうだな それがお前の心の声なんだろうし
それを口に出すことはすごく勇気がいることだ
すべてを放り出すなんて勇気がなきゃできない
お前はほんとにすごいよ
そう思う?
マ)誰が思うか このくそ馬鹿野郎 一体どうしたんだよ
こんなこともう嫌なんだよ あの作品は
マ)聞けよジョン あの作品はとてもよかった 誇りに思うべきだ 誰もが魅了された
俺の友達が魅了されただけだ
マ)それの何が悪い
プロデュースしたがる人がいなかった
マ)あれは試演会だろ もっとやり続けてよくしろよ
それか新しい作品を作りはじめろ
おい また5年もかけて上映されもしない作品を作り続けるのか
間違いなく俺はパンクするよ そのころ俺は35に
マ)35、30それがなんだよ くだらない
もっと大事なことに集中しろよ 作品を作れ
お前には簡単に言えるよな
仕事も高級アパートも BMWも手に入ったもんな
マ)待てよ 俺たちはそれぞれ選んだんだろ
俺は魂を売り渡すのは嫌なんだよ
マ)俺みたいみたいにか
そうはいってない
マ)車やアパートのことが気に障るなら謝るけど チャンスがあるうちにそれを楽しんで何が悪い
いや そんなこと 俺は
マ)ジョン 聞け これはお前の恐怖についての話だ
お前は自分でこれをコントロールしなければいけない
恐怖を感じてくれた自分の脳みそに感謝したら それを無視して前に進むんだ
恐怖はニューアーク空港みたいなもんで
ニューアーク空港なんてもううんざりなんだよ
お前が恐怖の何をわかるんだよ お前が何を知ってるっていうんだ
マ)知ってるんだよ HIVなんだ
もうよくなることはない
いつそれが いつから
マ)1週間前 もっと早く言いたかったけど言えなかった
マ)なぁ悪いけどまだ昼間だし
やらなきゃいけない仕事がたくさんあるんだ
出ていくときドアを閉めて行ってくれ
エレベーターの中でサマーキャンプのことを思い出す
マイケルはエムアンドエムズのチョコレートを賄賂にジムジャラハンと別途を交換し
俺たちあの日 夜通しひそひそしゃべったんだ
10代のころは家族通しで海辺に別荘を借りた
二人でビーチを歩いて フェンスを飛び越えて
海岸を行ったり来たり何度も
大学にはいって初めての夏休み
久しぶりに会って 防波堤でマリファナ吸ってた時
あいつは 自分がゲイだって打ち明けてくれた
太陽が一月の雲を染めて セントラルパークのむこうに沈んでいく
俺は53丁目と5番街の角からセントラルパークへと走る
動物園をすぎて 案内所 公衆電話だ
コインを押し込んで マイケルへ電話
留守電
もう一度かける
また留守電かよ くそっ
受話器をたたきつけ また走る 走る
スケートリンクを過ぎて 回転木馬を過ぎて シェイクスピアの銅像を通り過ぎる
芝生の広場は空っぽだ
フェンスを飛び越えて 広場の真ん中まで走る 雨が落ちてくる
俺はぐるぐるまわって アル中患者みたいにぐらつく
チックチックブーン
チックチックブーン
あの音がうるさすぎて 芝生をたたく雨の音も風の音も聞こえない
叫びだしそうになった時 俺は一人じゃないことに気づく
目の前の丘の上から 何百ものカモメが俺を見てるんだ
俺は彼らに向かって全力で走る
無人島に流れ着いた人が救助の飛行機を見つけたみたいに手を振りながら(実際に手を振る)
カモメが一斉に飛び立つと(両手を広げてあげながら一周する)
広場の向こうの別の丘に降り立つ
俺は彼らに向かって言う
友達が死にそうなんだ どうしたらいいんだ 怖いんだよ
また走る 走る
噴水や滝を超えて森を駆け上がりベルヴェデーレ城の頂上まで行く
誰もいない野外劇場を見下ろす
木の下に防水シートをかけられた古いリハーサルピアノが見える
俺は降りていき フェンスを越えて 防水シートを外す
~♪ Why
あれは9歳 俺たちは
YMCAのショーに出演した
リハーサル マイケルは緊張で歌えない
大丈夫 と僕は言って二人で 歌う
"Yellow Bird" and "Let's Go Fly A Kite"
何度も 何度も うまくできるまで
ショーが終わり外に出ると 太陽が野原を黄色にそめて 思った
あぁ なんて幸せなんだろう あぁ なんて幸せなんだろう
あの時に 誓ったんだ ずっとこうして生きてゆく
16歳 俺たちは White Plains Highで West Side上演した
マイケルの役は極脇役だ
マイケルは気にせずに みんなで歌う
"got a rocket in your pocket"
And "the Jets are gonna have their day, tonight"
何度も 何度も うまくできるまで
へとへとで外に出ると 月明り行く道を照らして 思った
あぁ なんて幸せなんだろう あぁ なんて幸せなんだろう
今は思う そんなふうに 生きる資格 俺にあるのか
あたえられた時間が刻々と過ぎ去っていく
もうこれ以上 無駄にできない 諦めるときが来たのか
29歳 俺たちは ソーホーのアパートで暮らしてる
マイケルは歌う 彼の人生を
俺も朝から歌詞をかき
目を覚まして守ってるだけじゃ
何度も 何度も うまくできるまで
夢中で引く B MinorかA
公衆電話のベル 急いで バイトへ
俺はあぁなんて幸せなんだろうあぁ なんて幸せなんだろう
今誓う これからも そう
ずっとこうして生きてゆく
ずっとこうして生きてゆこう