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秋田の冬祭り 金沢八幡宮梵天(金沢のぼんでん)観覧記③

前回の記事↓の続き。

 時刻は13:55。ついに、秋田県・金沢(かねざわ)の伝統行事、金沢の梵天(ぼんでん)のメイン会場(金澤八幡宮 一の鳥居)に立った。初めて長男にもこの祭事を見せられる喜びもある。

 梵天は周辺で待機しているようでまだ姿を現さない。「雪遊びだよー」と誘った長男との約束を果たすべく、急坂をロープ伝いに登らせ、下までお尻で滑らせるなどして梵天を待った。
 この遊びは、坂を下った先の道路が車両通行止めになり、坂道がしっかり踏み固められる「梵天の日」だけの年に一度の特別な楽しみ。

子どもたちが滑って、テロテロになった急坂。
梵天奉納の際はこの坂を舞台として先陣争いをする。
記録的少雪のため、トラックで雪を運んできたと聞いた。

 観客は私の他にもたくさん集まってきている。少子高齢化の波が押し寄せている当地にもかかわらず、若い人も多いし、幼い子供を連れた方も数え切れないほどいる。中には海外の方の姿も見える。
 (そんなところに目が行き、喜びを感じる年になったっていうね)

 その沢山の観客の中にも、集まり始めた奉納団体にも、何人も知り合いがいる。小中の同級生も、先輩・後輩もいる。
 懐かしい顔を見つけては「よぉ!」と近寄って、言葉を交わす。何年ぶりかの再開でも、つい昨日会ったようにくだらないことを喋って、笑いあえる。
 それは自分に限ったことじゃない。あっちの母さん(私の母親、という意味ではない)も、そっちのじっちゃんも、知り合いの顔を見ては「久しぶりだねが(久しぶりじゃないか)」「まめでらが(元気か?)」と旧交を温め合っている。
 さながら金沢地区の大同窓会といった様相さえあって、なんとも素敵な空間だ。

 コロナの前、梵天は、目安の集合時刻があっても、三々五々に集って来るーという感じだった。しかし昨年の縮小開催からは、全団体が集合して、一度大鳥居を背にして写真を取る、というふうに変わったようだ。(観客向けに公式にアナウンスがあったわけじゃないから確証はない)

 そんなわけで梵天は、集合時刻と決められた14:00をめがけて続々集まってくる。

まずは3本
どんどん集って、、
9本になった!
(それにしても観客が多くて嬉しい)

 今年の奉納本数は全部で10本と聞いていたが、何かの誤りであったのだろうか。すっかり「揃った!」という体で並んでいる。
 
 ところで、金沢の梵天には3つの異なる場面がある。
 
 1つは、1つ目の記事で紹介した「まわり梵天」。
 梵天側は一軒、一軒門付けし、梵天を披露し、言祝(ことほ)ぎの梵天唄を唄い、お神酒などを振る舞う。一方、家主の側は、祝儀を切り、梵天を褒め、奉納団体の若衆を労い、あるいは、歓待する。近況を話し合ったり、懐かしい話が弾む場合もある。
 
 2つ目は、「先陣争い」(押し合い、と呼ばれている)。観客が見ていて楽しいのはこの場面だし、奉納する側も盛り上がりが最高潮となるし、他にあまり類を見ないものだ。
 この「先陣争い(押し合い)」にも2局面あって、争い前半は、道路を戦い(?)の舞台として、ある団体は梵天を片手で差し上げたり、またある団体は太鼓を叩く方々にちょっかいを出したり、そうかと思うと、いくつかの梵天同士が絡み合ったり、場合によっては(人間同士が)掴み合いの喧嘩をしたりして、ボルテージを上げていく局面。
 太鼓の拍子が変わって、後半は急坂に戦いの舞台を移し、先に坂を駆け上がろうと競う局面。ここで、梵天を坂の上に到達した順に神殿へ奉納出来ることになる。
 
 3つ目は、奉納の場面。雰囲気は先陣争いとは一変する。参道を登り、三の鳥居前でお祓いを受けたあとに、厳粛な雰囲気の中で、神殿へ梵天唄(2回唄うとのしきたりがある)とともに奉納する。

 今更になるが、我々はこの第2場面、「先陣争い(押し合い)」を見に来たのだが、観客には、押し合いの激しい道路側で見るか、先陣争いをする坂側で見るかという選択肢があって、私は今回、坂の上を選択した。

 9本並んだ写真も取ったし、そろそろ移動するとしよう。

坂を登るべく後ろに回り込む。
裸に晒の姿も凛々しい。
整然と並ぶ梵天の姿が逆に新鮮だ。
坂は、今年は一層登りにくく感じた。

 しばらく上から梵天を眺めていて、(早く始まれ)って思った。梵天は参集しているはずなのに、まだ何も始まる様子がない。開始とされていた14:00はとうに過ぎている。男衆もぶつけ合いたくって、そわそわしているように見える。
 そして、私の中で、(やっぱり参加したい)って思いはもう止められないほど膨らんでいた。

(つづく)
 
 観覧記①は↓から。


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