セルフライナーノーツ/「花火」
はじめに
どうも。一生駆け出し作曲者の虫恋です。今回はボカコレ2023春に投稿した曲「花火」の個人的解釈?背景?みたいなのを書いていこうと思います。セルフライナーノーツ的なアレです。一回やってみたかったんですよね。なんかソレっぽいし。
この曲ができた経緯
まともに一曲作れるようになったのが2022年の春頃(高校三年生)です。なんとなくラブソングを書いてたんですよね。「ハジメテ」とか作りましたね。その時はこれまたなんとなくで歌詞を書いてたんです。行き当たりばったりでそれっぽい単語を並べてそれっぽいのができちゃったってのが正直な感想です。多分そのうちリメイクします。
で、何曲か書いてきてそろそろ真面目に歌詞を書いてみるか、ってことで生まれたのがこの曲です。後はコンテストに出してみたかったんですよね。ちょうどボカコレっていうのがあるっぽいので、じゃあここに参加する用に曲を書くか、って感じです。
私、物語を書くのが好きなんですよね。なので物語を軸にした曲を書きたかった、てのもあります。
この曲の背景
さぁ歌詞を書こうと思って、どういった背景にしようか悩みました。僕はまともな恋愛経験が無いので、今まで書いてきた歌詞は全て妄想というか理想というかそんな感じなんですけど、今回この歌詞を書くに至っては僕の数少ない経験をひねり出しました。と言っても歌詞に落とし込んだのは後程紹介するほんの一部だけですが。舞台は夏祭り。この夏、遠くへ行ってしまう片思いの「君」と一緒に最後の思い出作りに浴衣姿で花火を見るっていう情景です。「私」は男でも女でも構いません。「君」も同様。そして「私」は「君」に恋をしています。「君」はそれに気付いていません。片思いですね。
1番Aメロ
前半はそのまんまですね。「君」は無邪気というかなんというか。きっとこの手を引くのも無意識でやってるんでしょうね。
「一言の勇気」っていうのは告白ですね。こんな「君」だから誰かに取られるんじゃないかと不安なわけです。つらいですよね。
1番Bメロ
さっきの続きですね。独占欲みたいなものです。「もうすぐ花火が上がるよ、早く見に行こうよ」と、楽しそうに言って「私」の手を引く「君」。こんな顔や言葉を他の人にも見せていると思うとちょっとチクッとします。「君」の全てを手に入れたい、ってまでじゃないですけど。そしてギターのユニゾンチョーキングを経てサビに入ります。これは打ちあがってるあの音と思っていただければ。
1番サビ
ついに打ちあがりましたね。ここだけ実体験を基にしています。花火が上がって無邪気な表情で花火を見上げる「君」。「私」は花火よりも、花火に照らされた「君」の顔の方が見たいんです。「君」はそんな私に気づきません。
ここは物理的な距離ではないです。心の距離というか。花火の様にきれいで美しくて。だけど遠い「君」。手を引くとかそんなんじゃなくて、ちゃんと私の手を握っていてほしい。僕としては珍しく、この欲は永劫的恋愛観に基づいて書かれています。
ここの四文字の想像は「大好き」でも「好きです」でも何でもいいです。想像にお任せします。小さな声で呟いたこの言葉は、花火の音に掻き消されて届くことはありません。
2番Aメロ
打ち終わりました。「君」は花火を見ることが目的なので、無意識かどうか「そろそろ帰ろうか?」と「私」に問います。「私」はもっと君と一緒に居たいのですが、もちろんそんなことを言えるはずがなく。「うん」と答えて彼の後ろについて行きます。「一言の勇気」が一番では「大好き」だったのに対してここでは「嫌だ」に変わっているのもポイントです。ずっとでなくていい、もう少しだけでも一緒に居たい、っていう。そんな感じです。幸せってちっぽけなものです。
2番Bメロ
帰り道ですね。行きは手を引かれていたんですけど帰りは何もないです。「君」の浴衣の帯を見ているので、ちょっと俯いている感じ。「私はこんなにも君のことが気になってしょうがないのに、君は今、何を考えているの?」みたいな感じですかね。「君」の無邪気さもあるかもしれません。
2番サビ
2番サビは前半と後半で分かれています。好きな人が話す言葉の中に自分の言葉が入っているのって何となく気になりませんか?好きな人が仲良さそうに他の人と喋っている中で自分の名前が出てきたら、「君は私のことどう思っているんだろう」みたいな。名前を憶えてくれているだけで安心できるというかなんというか。ここではそんな感情です。「君の記憶という本の中のたった一ページにでも、私の名前が残っているんだ」みたいに考えるのはちょっと重すぎますかね?
今までは、「たった一瞬でも良いから君と居たい」だったのが、「ずっと一緒に君と居たい」と思うようになりました。「きっともうこんなチャンスなんてない」「このまま帰ってしまったら、もう自分に勇気なんて出ない気がする」そう思った「私」は、「君」を呼び止めます。そして目を見てはっきりと言うのです。「大好き」の四文字を。
間奏
間奏に入ります。このソロは「私」の感情の変化を音にして落とし込みました。前半は私の数少ない友人、「とぺ氏」にお願いしてピアノソロを弾いてもらいました。前半は、「君」に思いを伝える告白のシーンです。告白のときの、揺れ動くドキドキした感情を表現するソロに仕立て上げてくれました。所々に入るピアノアルペジオがその感情を掻き立ててくれます。
半音上に転調してギターソロです。後半は「君」を呼び止めるシーンです。「ねぇ」「何?」「君」は振り返って「私」の方を見ます。ですが、緊張で声が出ません。彼の目を見て辛うじて出た言葉は「奇麗だったね」。それは私の望んでいた言葉なんかではなくて。「君」は笑って「奇麗だったね」と返します。この時の「君」の笑顔は、いろんな意味で忘れられないでしょう。「また来年も」と言おうとした口は止まります。もう来年の花火は、一緒に見ることはできないと、自分で分かっているから。
感情をむき出しにしたソロに仕立てたつもりです。泣けるソロ、といいますか。ユニゾンチョーキングで「君が遠くに離れていってしまう」、あるいは「言葉がつまる」。そんな感情を表現したつもりです。そのあとにいくらかの音を経て、Ⅴの音にたどり着きます。数回Ⅴを繰り返した後に、ⅤのオクターブとⅠが入ります。どうにかしてぐちゃぐちゃな心を演出したくてこうなりました。
落ちサビ
物語の背景が変わります。今までとは打って変わって静まり返ります。祭りの会場から自宅の自室で一人泣いている所を想像して頂ければ。線香花火。落ちる前には一層輝いてから、落ちます。「私」の場合、告白の時が一番輝いていたでしょうか。結局、この恋は届かなかったのです。
ラスサビ
告白しようとして失敗して、二度と会えなくなる。伝えるには何もかも遅すぎて。そんな感情を表現したかったんです。あの夢のような、幸せな時間をもう一度。ただそれだけなのに。
あの時呟いた四文字は「大好き」ですね。ここでの「音」は「私」の泣き声です。一人で自室で後悔して泣いている。そんな情景を思い浮かべてもらえれば。泣き声で掻き消されるほど小さな告白は、届くことはありませんでした。
アウトロ
決別、とはまた違いますけど。ここでは君に伝えたい言葉が変わっています。「大好き」から「大好きでした」です。何でかは…ご想像にお任せします。
終わりに
ということで「花火」の製作者的解釈でした。もちろん、これ以外の解釈もあって良いですし、どれが正しいなんてありません。
全ての恋が実るわけじゃありません。でもそれでいいのです。そうやって人は強くなるはずです。
これは余談というか蛇足ですが、花火は永遠に咲き続けられるわけではありません。美しく咲いた後はいつか必ず儚く消えてしまいます。
その一瞬をどう生きるか。人生はそういうものだと思っています。言いすぎですかね。
ということで、「花火」のセルフライナーノーツでした。ありがとうございました。
「花火」製作班
作詞・作曲・mix・動画/虫恋
編曲/虫恋・とぺ
担当楽器
ギター・ベース・プログラミング/虫恋
ピアノ/とぺ