見出し画像

ブエノスアイレスの治安と防犯の心得/2024年版

ブエノスアイレスに住んでいると、必ずといっていいほど尋ねられるのは治安についてです。特に観光で来られる方々にとっては最も気になるトピックでしょう。

実際在アルゼンチン日本大使館によると、今年の邦人被害は報告されているものだけでもすでに14件で、全てブエノスアイレス市内で発生しています。ブエノスアイレス市での10万人当たり強盗発生件数を、日本での平均値と比較すると、約2,000倍以上に達すると報告されています。

ちなみにブエノスアイレス市は州に属さない自治市です。現地では「Ciudad Autónoma de Buenos Aires」と呼ばれ、頭文字をとって「CABA」と略されます。そしてエセイサ国際空港があるのが、ラ・プラタ市を州都とするブエノスアイレス州で郊外にあたります。現地では「Provincia de Buenos Aires」と呼ばれます。

アルゼンチンはブラジルよりも治安が良いと言われますが、インフレによる貧困層の増加により、強盗や窃盗などの犯罪は日常茶飯事となっています。治安省の報告によると、2023年の強盗件数は494,058件と報告されており、前年比で14.2%上昇しています。


市内で注意するべき地区

まずホテルやAirbnbなど滞在先を決めるにあたって特に注意していただきたいことは、宿泊先がブエノスアイレス市内のどの地区に位置しているかです。

比較的安全でおすすめなのは、プエルトマデーロ地区(Puerto Madero)、パレルモ地区(Palermo)、レコレタ地区(Recoleta)、サンテルモ地区(San Telmo)など観光客の多い地区です。

おすすめしない地区は、実際に邦人被害が発生したコンスティトゥシオン地区(Constitución)、スラム街に近い方のレティーロ地区(Retiro)、ボカジュニアーズやタンゴ発祥の地として知られるボカ地区(La Boca)、バルバネーラ地区(Balvanera)、バラカス地区(Barracas)などです。これらは一例で、もちろん市内には他にも危険なエリアがたくさんあります。

公認タクシーでも要注意

アルゼンチンに着いてホッとしたところで、まず気が抜けないのはタクシー選びです。残念ながらタクシー運転手の強盗や恐喝による邦人被害が、今年すでに2件起きています。脅すわけではありませんが、以下はその一例です。

被害者はエセイサ空港からブエノスアイレス市内の宿泊先に向かうため、タクシー乗り場からタクシーに乗った。乗車前に運転手と料金の交渉を行い、35,000ペソで目的地に向かえる事を確認した後に出発したが、空港のゲートから出た途端の走行中の車内にて「1キロあたり5ドルの乗車料金を支払え」と運転手から言い渡された。これに対して被害者は「そのような高額な現金は持っていないため払えない。」と強く言い返したところ、銃を突き付けられ「ATMまで連れていくから、そこで引き出せ。」と脅された。銀行口座を保有しておらず、現金を引き出せない旨伝えたところ、所持金を全て出せと脅されたため、現金35,000ペソを渡すと、空港から2~3km離れた林道で車から降ろされた。

在アルゼンチン日本大使館からのメール抜粋

もちろん親切でフレンドリーなタクシー運転手もたくさんいますが、乗る前に本性はわからないものです。それでUberDiDiCabifyなどの配車サービスを活用し、評価の高いドライバーか予め確認するなどの対策が必要です。

ちなみに私は信用できる何人かのタクシー運転手とのコネクションがあるため、空港送迎手配するサービスも行っており、すでに多くの日本人の旅行者の方にご利用いただいております。

邦人被害が多発しているのは実はホテル

邦人被害は安全だと思っていたホテル内で起きています!以下は昨年サンニコラス地区の四つ星ホテルと、モンセラット地区の五つ星ホテルで起きた置き引き被害です。

被害者を含む同行者数名が、ホテルのチェックアウトのためロビーで待機をしていたところ、見知らぬ男性1名から写真を撮影してほしいと要求され、被害者はその場から数メートル離れた場所に案内された。その際、スーツケースの上に同人のバックを置いた状態であった。写真撮影が終わり、被害者が元の場所に戻るとバックが無くなっていることを認識した。ホテルの防犯カメラの映像より、写真撮影の間に別の男性1名が当該バックを窃盗していることが確認された。

在アルゼンチン日本大使館からのメール抜粋

被害者がホテルの会議室で開催された会議に参加していたところ、休憩時間に、他の参加者の多くが荷物を会議室に残置したままコーヒーを飲みに会議室から出て行ったことから、被害者もリュックを置いて会議室を出た。休憩時間が終わり、被害者が会議室に戻るとリュックが無くなっていることに気付いた。なお、他の外国人参加者にも残置していた荷物からノート型PCを盗難された被害者がいた。

在アルゼンチン日本大使館からのメール抜粋

また今年2月にはドミトリータイプの宿泊先でも事件が起きています。

被害者はコンスティトゥシオン地区宿泊施設にチェックインをした。(部屋はドミトリー6人部屋で、ブラジル人1名、トルコ人1名、アルゼンチン人1名、国籍不明者1名及び被害者を含む計5人が同室に入居。)夕食を終え部屋に戻った際、個人ロッカーにバックを収納したが、施錠は未実施。翌朝起床後に個人ロッカーを開けた際、荷物がないことに気づいた。同部屋のアルゼンチン人がチェックアウト手続き未完のまま、行方不明になっている状況。

在アルゼンチン日本大使館からのメール抜粋

例え低予算で宿泊できるとしても、ドラッグ常習者や買春の蔓延るコンスティトゥシオン地区に泊まると、このように大き過ぎる代償を払うことになりかねません。

突然遭遇するかもしれない抗議デモや物乞い

観光中にオベリスコ周辺(写真)、大統領府前の五月広場、国会議事堂周辺などで大規模デモに遭遇するかもしれません。「プロテスタ」と呼ばれる抗議活動は首都ではよく起こることです。2022年には道路封鎖デモの件数が、2020年の約2倍となる過去最高となっています。

7月9日大通りを封鎖する大規模抗議デモ

また街歩きしているとホームレスからお金をせがまれることがあります。高級地区でもレストラン内の外で食べるときに寄ってくるケースがありますし、子供が寄ってきて飲みかけのジュースをせがまれたこともありました。

物乞いは基本無視することが多いのですが、露骨に拒否して問題が起こるより渡してしまった方が穏便に済む場合があるのも事実です。その時のために少額の札だけポケットに入れておくことがあります。その都度財布を出したりしていると奪われて逃げられるかもしれませんので。もちろん状況によるので時に毅然とした対応が必要になります。

旅行者に忍び寄るブラックウィドウ

2024年2月に日本人観光客が標的になるブラックウィドウ事件が発生しました。ブラックウィドウとは、スペイン語では「viudas negras」(黒い未亡人)と呼ばれ、見知らぬ男性にマッチングアプリなどを使って接近し、睡眠薬や薬物が入った飲み物を飲ませた後、お金や貴重品などを盗んでいく女性たちを指す言葉です。

被害に遭ったとされる37歳の日本人男性は、ブエノスアイレスに到着した日に、マッチングアプリで知り合った女を滞在先の部屋に入れてしまったということで、意識を失っている間に女は共犯の男をホテルに招き、窃盗後に逃亡しました。

常に気を抜かない心構え

このように日本人にありがちな「四つ星以上のホテルなら安全」、「皆んなしているなら大丈夫」、「外国人はフレンドリー」といった思い込みは致命傷になることがありますので、自分の身は自分で守ることを肝に銘じる必要がありますね。

観光でブエノスアイレスを訪れる際は、治安が良いか悪いかだけで考えるのではなく、常に周囲に目を配ることや、道端でスマホをむやみに出さないこと(特にiPhone)カメラをぶら下げないこと、大事なものは分散して所持しておくこと、バスや地下鉄内でリュックを前に持つこと、そして最悪被害に遭うかもしれないという心構えをしておくことなどが大切です。もし万が一強盗に遭ったら、抵抗しないことが鉄則です。

被害に遭うのは若い男性のケースが多いように見受けられます。私がよく注意して観察するのは、すれ違う人の目線距離感です。慣れてくると、目的を持って歩いている人かそうでない人かが大体わかります。犯罪者は日本人の旅行者と現地に住むアジア人を見分けています。体をいわば目にし、最悪何かが起こってもダメージを最小限にしたいものです。

このように事前に治安について知っていただくことで、観光で来られる方にはできる限りの危機管理対策をしていただきたいと思います。在アルゼンチン日本国大使館のサイトから閲覧できる「安全の手引き」と「治安情勢」も一読されることをお勧めします。犯罪多発地域やスラム街の詳しいマップが見れますので、視覚的に把握しやすいと思います。

また万が一、盗難に遭った場合は以下の記事を参考になさってください。

せっかくブエノスアイレスに来られるのなら、南米で最も美しい街で安全に観光していただきたいと願っています!現地サポートや市内観光で同行者が必要な場合は、まずはお気軽にご連絡ください。

+54 9 11 5346 8213
buenosnized@gmail.com


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?