夫の実家大好き芸人
今年の正月以降、コロナの影響もあり、自分の実家にも夫の実家にも半年くらい帰省できていない。
緊急事態宣言が解除されて少し経った今、早く自分の実家に帰って両親や猫に会いたいのと同じくらい、夫の実家に顔を出したいという思いが募っている。
何を隠そう私は、世にも珍しい、夫の実家に帰省するのが大好きな嫁なのである。
私の夫は、平成の大合併で隣接する大きな市に飲み込まれた、元は◯◯郡◯◯町と呼ばれた山奥の出身だ。
結婚が決まった当時、夫の地元の話を友人等にすると、十中八九「田舎のお姑さんにいびられるんじゃないの」「年末年始とか法事とかこき使われるかもよ」などと脅されたし、結婚した後も、私が年に何度か三、四泊で夫の実家に帰るという話をすると「日帰りでいいのに」「よく平気でいられるね」と言われたりする。
大きなお世話にも程がある。
結婚して5年間、私は夫の実家において米の一粒も洗っていないし、理不尽な事をチクチク言われたこともないし、行事に呼び出されたりしたこともない。
自分達の帰りたいタイミングで帰省して、夫とゴロゴロしながらテレビを見たり、おやつを食べたり、夕方に近所の川辺を歩いたり、義母とJAの直売所まで野菜を買いに行ったり、義父とスーパー銭湯へ行ったり、夫の一番仲の良い同級生と飲みに行ったりしている。
随分前に亡くなられた夫のお祖母さん(義父の母親)が使っていた部屋に夫婦で寝泊まりさせてもらい、食事は上げ膳据え膳状態。常識の範囲内の時間帯に寝起きし、のんびり過ごす。これが私たちの帰省のパターンとなっている。
義父母は揃ってとても大らかで、優しい人たちである。
夫は男三兄弟の次男で、女の子のいないおうちだったので、お義母さんは特に可愛がってくださって、私の好きな焼きそばや鳥の唐揚げを作ってもてなしてくれる。定期的に、知り合いの農家の人から分けていただく新鮮なお米を私たちのマンションに送ってくれるのも、とても有難い(大抵お菓子や栄養ドリンクやレトルト食品など大量のおまけがついてくる)。
お義父さんは寡黙な感じであまりフランクに話をしたことはないけれど、お風呂が大好きな方で、帰った時には必ず、先述のとおり夫と私と三人でスーパー銭湯へ行く。一番長く浸かっているのはお義父さんだ。あがったら売店のジュースを飲み、休憩コーナーでダラっとくつろいで帰る。息子とともにお風呂でリラックスできたお義父さんは、いつもとても嬉しそうな顔をしている。
義兄と義弟は独身で今も実家暮らしだ。二人ともシャイで、挨拶を交わす程度。もっと言えば夫ともそんな感じ(笑)必要以上にベタベタ干渉されたらされたで困るし、ちょうど良いと思っている。
もちろん、帰省の際には手土産は欠かさないし、正月にはお年賀を用意する。
しかし義父母はいつも「ゆっくりしに帰ってくるのに、わざわざ気を遣わなくていいんだよ」と言ってくれる。
私を顎で使ったり、いびるような態度をとったり、親戚に挨拶回りをさせたり、ましてや孫の顔が見たいと催促するなんてことは一切無い。
結婚2年目くらいだっただろうか、私が一度も会ったことのない夫の叔父(義母の弟)が急に倒れて亡くなった時も「さーちゃんは無理に来なくてもいい。また落ち着いたら墓参りでもしてやって」ということだったので、私はお言葉に甘えて普通に仕事へ行き、夫だけが忌引を取って通夜と葬儀に出席したのだった。
礼儀に厳しい人から見たら非常識な行いかもしれないが、あの頃私はまだきちんとした喪服も持っていなかったし、面識のない夫の親戚の葬儀なんてまったく気疲れするだけだっただろうし、義父母がそう言ってくれてとても助かった。
本当に、尊敬できて信頼のおける義父母なのである。
以前記事にしたことがあるけれど、私は実家の両親の不倫やら浪費癖やら祖母の介護問題やらで、子ども時代からわりとしんどい思いをしてきた。できれば自分の実家とは適度な距離を保ちつつ過ごしたいのが本音である。
まさか、配偶者の両親をこんなに好きになるなんて、帰省がこんなに楽しみになるなんて、夢にも思っていなかった。
今年は一度、私一人で夫の実家に帰ってみるのも面白いかも…なんて思っていた矢先、世の中の情勢が危うくなり始めたため、その計画の実現はもう少し先伸ばしになりそうだけど、お盆には久々に夫婦で足を運べそうだ。
古稀を迎えたお義父さんへのお祝いをどうしようか、考えているところである。