祖父が禁煙した話
祖父、89歳。
そんな祖父は、国体に出るほどのアスリートだったのだ。
スポーツ番組を見るのが好き、特に好きなのは自身と同じ種目である長距離。
いつもテレビで駅伝を見ている。
人生二度目の東京オリンピックを誰よりも楽しみにしている人かもしれない。
そして、何よりもタバコが大好きである。
いつ訪れても濃いめの煙をふかしている。
そんな祖父が、タバコをやめた。
タバコをやめた。
肺気腫。
秘密にしていたそうだが、実はずっと昔からそうだったらしい。
リハビリでなんとか歩ける状態をつないでいたことは、今になって知った。
そこでやってきた、新型コロナウイルス。
外出自粛と、病院側からのストップでリハビリに通えなくなった祖父は、歩けなくなってしまった。
東京オリンピックも延期になってしまった。
もう、寝たきりだ。
コロナはこんなところにも影響するのかと、驚いた。
医師の往診を受けているそうだが、ほとんど水に溺れている時と同じ状態らしい。
酸素を吸入しなければいけないのに
「だめだ、タバコを吸いたい。これだけ長く生きたんや、もういつ死んでもええ」
そう、タバコを吸っていると酸素吸入ができないのだ。
祖父はタバコを選んだ。
しかし、とうとう今日タバコを禁煙したらしい。
ずっとずっと2020年のオリンピックを楽しみに日々生きていた祖父。
「オリンピック見るまでは生きなあかん!」
そう言っていた祖父の言葉には純粋なアスリートの気持ちがこもっていた。
祖父の決断に金メダルを。
オリンピックまでの道のりは、長い。
BU(◎)DOH
あなたの一存で、これからの旅路を一緒に作っていけたらいいと思います。