追放された業績付与術士
「田中、お前にもう用はない。営業に異動だ」
令和5年11月17日、私──田中洋一は所属する研究者ギルドから異動を出された。
「異動? どういうことだ?」
私は業績付与術士をしている。
業績付与術士とは、研究者や論文などに『インパクトポイント』と呼ばれる現代科学では解明されていない未知の特殊な量子を籠めることで、より高い影響を社会に対して与える術である。
このギルド『京都大学大学院理工学研究科』に所属する研究者や論文は、ほとんどに私の業績付与がかかっていた。
平凡な研究者でも、たとえば『ハーバード大学で准教授として勤務年数+10』なんてのを付与すれば、とたんに旧帝大の教授の公募に通る。
平凡な論文リストに『Natureに通した論文の数+15』なんてのを付与し、基盤Aに通せる論文リストに仕立てることも可能だ。
おかげで、『京都大学大学院理工学研究科』の研究者たちは軒並み強力な経歴業績を有し、めざましい昇進を遂げてきた。
このギルドが関西でもっとも強大な五つのギルド──『ビッグ5』の一つとして数えられている理由の一つは、経歴や業績が充実しているからだと、私は自負していた。
実際、ギルド員たちもこぞって俺の業績付与を称賛し、感謝もしてくれていた。
なのに、突然なぜ──?
これ以上はいろんなところから怒られるので自重
-fin-
お許しポイント
術師ではなく術士です
京都大学大学院理工学研究科は存在しない
そもそも大学で営業に異動したりはしない
業績付与術は魔法は関係なくて「「実在する」」現代科学ではまだ未解明の未知の量子による技術です