マジョリティとマイノリティの境界線
皆さんは自分のことを「マジョリティ」だと思っていますか?
それとも「マイノリティ」だと思っていますか?
カナダに住んで14年。
カナダのよいところは、みんな違うところだ。
肌の色、目の色、体形、服装などの見た目だけでなく、言語や宗教、食文化、慣習、性格、趣向、とにかく全部違う。
だから、「あの人は〇〇だから」という話には、あまりならない。
一部は共通点があっても、他は共通点がなかったり、共通点が多くても、絶対的に違う部分があったりするからだ。
多種多様な人々の中にいると、自分がマジョリティなのか、マイノリティなのかは判断がつかなくなってくる。
場所や場面によりマジョリティになったりもすれば、マイノリティになったりもする。
日本にいた頃は、「みんなと同じ」からはみ出さないように流行を追いかけたり、人を真似したりしたものだが、カナダではその必要はない。
「こうしなくてはいけない」という決まりもほとんどないので、人をジャッジすることもないし、されることもない。
それは、とても居心地がよいものである。
私は語学学校でBtoB営業の仕事をしているのだが、留学エージェントさんからのお問合せで、「60代男性・ホームステイ希望」というのがあった。
語学学校に来る留学生の平均年齢は22~25歳だ。
もちろん、幅広い年齢層の留学生がいるが、ホームステイとなると、10代~20代前半の学生が中心だ。
20代後半になると、レジデンスやシェアハウスを利用する方が増え、30代半ばを超えると、大半がレジデンスを希望する。
とても言いにくい話だが、年を取れば取るほど、ホームステイの受け入れ先を見つけるのは難しい。
ホストファミリーが受け入れを拒否するからだ。
理由は様々だが、大まかには「ホームステイという滞在方法は若い人向けである」という認識のホストファミリーが多いのだ。
学校に問い合わせると、案の定「年齢が高いので、ホームステイが見つけられません」とのこと。
これだけ多種多様なカナダなのに、ホームステイにおいては年齢ではじかれる。
カナダのよいところは、みんな違うところなのに、ホームステイでは年齢ではじかれる。
この事実は、「60代男性・ホームステイ希望」の方にとって、ショックなことであろう。
日本では差別や区別をされることがない「60代男性」が、海外でホームステイを希望したら、一気にマイノリティになり、受け入れてもらえなくなる。
切ない話だ。
何軒ものホストファミリーにあたってもらったが、受け入れ先は見つからない。
ホームステイは諦めてもらい、レジデンスを勧めようと思った矢先、2週間ほど頑張ってもらったところで、1軒だけ受け入れ先が見つかった。
そのホストファミリーは、女性同士のカップルだった。
私はそのホストファミリーが「60代の男性」をなぜ受け入れてくれたか理由は知らないが、もしかしたら、彼女らがマイノリティの側面を持っているからなのではないかと思った。
カナダでは、パートナーが同性だからといって差別を受けるようなことはほとんどないが、それでも同性カップルがマジョリティというわけではない。
マイノリティであるが故に、マイノリティに対して寛容ということがあるのではないかと思った。
会ったこともないのに、「60代の男性」というだけでホームステイの受け入れをしないのは間違っている、と思ってくれたのではないか。
それは、理解しようともせずにネガティブなコメントをしたり、試しもせずに跳ねつけることと同じだ。
まずは歩み寄ってみて、そこから考えてもよい。
お互いから学べることがあるかもしれない。
人は、場所や場面によりマジョリティになったりもすれば、マイノリティになったりもする。
多数決で少数派だったからといって、間違っているわけではない。
そんな当たり前のことを、自分がマジョリティという環境に染まっていると気が付かなくなってしまう。
誰も受け入れてくれなかった「60代の男性」を受け入れてくれた、このホストファミリーに感謝すると共に、大事なことを教えてもらったような気がした。
スタエフもやってます🎵
rio_akiyamaさんのお写真をお借りしました!ありがとうございます!