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コロナ禍だったので、カナダと日本の中高生にサードプレイスをつくってみたら

2020年の2月に日本に行った。

当時カナダの大学・専門学校で仕事をしていた私は、日本で取引先の留学エージェントを集め、大規模な学校説明会をしようと計画していた。

2020年1月には、中国の武漢から始まったこのウィルスが、クルーズシップに乗って横浜に来ていた。

「今回の日本出張、やめた方がいいのではないか」

UKにいる上司に相談をしたところ、遠いアジアで起こっていることと思ったのか、「こんなものは2月の出張までには収まっているだろうから予定通り行ったらよい」とのこと。

悩みに悩んだ挙句、なんとなく、これからしばらく日本には帰国できないような気がして、どんなウィルスかも、予防対策も分からないまま日本に行った。

日本に到着し、人々の日常生活に大きな影響がなさそうだったことに安心したのも束の間、状況は日を追うごとに悪化してゆき、たくさんの人を会場に呼んでイベントをするなど、不謹慎な状況になってきていた。

イベント会場は六本木にある高級ホテル。
私は以前にも何度かこの会場を利用しており、付き合いがあったためか、この緊急事態でのキャンセルならば、延期や返金に柔軟に対応してくれると回答を得た。

押し切ってイベントをし、感染者を増やすようなことになったら身も蓋もない。

わざわざ日本にやって来たはいいが、結局イベントをキャンセルし、早めにカナダに帰国することになった。


カナダに戻ってから、ずっとモヤモヤしていた。

このまま、この謎のウィルスに世界は肉体的にも精神的にもやられてしまい、人々は何の希望も持てないまま、混沌とした時代を生きて行かなくてはいけないのか。

そして私は、このままでいいのか。
ただ、被害者のような気持ちで、ロックダウンが明けるのを待つことしかできないのか。

留学という仕事に携わっておきながら、来ない留学生をカナダでずっと待ち続ければいいのか。

そんな最中、2020年5月に、突然飼い犬が死んだ。

まだ7歳半という若さで、すい臓がんで亡くなったが、すい臓がんを患っていたと分かったのは、亡くなった後だった。

どうして気付かなかったのか、自分にできることはなかったのか、あの時ああしていれば、こうしていれば、と自分を責めた。

基本的には陽気な私が、ペットロスにより、突然訳もなく涙が出てくる日々が続いた。

このままではまずい。

前に進まなくてはいけない。


2020年7月末を自分のデッドラインにした。

それまでにコロナの状況が良くならず、ロックダウンや様々な規制が続き、ワクチンも開発されず、閉鎖された世界で過ごすのであれば、自分がやりたいことをやってみようと。

仕事では日々、どの国からどの国への渡航ができるとかできないとか、フライトがあるとかないとか、現在カナダにいる留学生をいかに獲得するか、などの議論が繰り広げられ、今まで留学と言えば「対面授業」と言われていたものが「オンライン」に切り替えられ、オンラインでも学習はできる、という謳い文句での営業活動が始まった。

世の中のデジタル化が進んだのは、良いことだと思う。

オンラインで学習できることも十分にある。

ちょっとした知恵は、YouTubeから借りてくることも日常的になった。

それでも私は、モヤモヤした気持ちが拭い切れなかった。

なぜなら、私にとって留学の醍醐味は、「気持ちを通わせる」ことにあると思っているからだ。

日本で「学習」と言われる知識の詰込み型の勉強では、「気持ちを通わせる」ことはできない。

これにコミュニケーションやコラボレーションが相まって、やっと「気持ちを通わせる」ことができる。

従来の「オンライン英会話」は、知識の詰込みがメインになっていて、相手を知って、理解をして、交流をして、仲良くなる、というプロセスはない。

それをやってみたかった。


デッドラインが来た。

8月になってすぐに、専用のメールアドレスを作ったり、ウェブ作成に取り掛かった。

内容は、「中高生のためのオンライン国際交流サークル【バディプログラム】」だ。

知り合いの教育委員会に連絡をし、カナダの高校生で、日本の中高生と交流したい子たちを集めてもらった。

ロックダウンで退屈していたのか、30名ほど集まり、説明会を開き、規約にサインをしてもらい、バディプログラム専用のFacebookグループに入ってもらった。

今始めるなら、きっとFacebookは使わないが、その当時はコミュニティがつくれるプラットフォームに限りがあり、日本でもカナダでも知名度が比較的高いプラットフォームはFacebookしかなかった。

同時に、インスタのアカウントもつくった。

TikTokもYouTubeも、とりあえずやってみた。

試行錯誤を繰り返しながら、2020年10月にはパイロット版として運営が開始し、2021年1月には、自分で出した広告からお申込みしてくださる方がいて、初めてビジネスとして運営することができた。

今までに多い時期で50名ほどの参加者がいて、日本の高校とイベントをしたり、教育支援団体さんのお手伝いもした。

参加者の方たちは日本全国から集まり、カナダの高校生との交流のみならず、他県の同世代の子たちと交流ができるのも刺激になったようだ。

コロナ禍でおうちタイムが増えた時期は参加率が高く、毎週末他愛のない話をしたり、ゲームをしたりすることが楽しく、カナダの高校生と仲良しになり、気が付いたら英語力も上がっていた。

そして、「中高生のためのオンライン国際交流サークル【バディプログラム】」は、2023年2月末日をもって終了する。

2年以上、今日に至るまでに、たくさんの人たちに支えられ、助けてもらい、やり切ることができた。

私にとっての大きな収穫は、参加してくれた日本の中高生、カナダの高校生の成長を目の前で見ることができたことだ。

多感な時期の中高生は、同世代だから話せることがある。
大人の前では見せない顔がある。
価値観を押し付けず、ひとりひとりの価値観を尊重することで、私まで成長させてもらった。

ひとつ印象に残ったエピソードは、「THIS OR THAT」でカナダの高校生が聞いた質問とその答えだ。

「1億もらうのと、お札の顔が自分の顔になるのと、どっちがいい?」

私ならば迷わず、お金を取る。

今の中高生は、ほとんどが「お札の顔になる」を選んだ。

何者かになる方が、大金を稼ぐよりもいい、という考え方は素晴らしいと思った。

こんな素敵な中高生たちと出会えたこと、たくさんのことを学ばせてもらったことに心から感謝する。

私は、今の若い世代の味方だ。

「イマドキの若いもんは」と、時代錯誤の考え方を押し付けるのではなく、若い人と「気持ちを通わせる」ことができる人間になりたいと思う。

バディプログラムは来週で終わり。

これからの新しい出発に向けて、準備を進めて行こうと思う。

スタエフもやってます🎵





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