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「社員を海外英語研修に送ろう」と思っている人事の方へ

海外の語学学校で仕事をしていると、個人留学の問い合せ以外に、法人の問い合せも頻繁に入る。

海外の学校に社員を送りたい日本の企業からの問い合わせだ。

私はBtoBの営業なので、クライアントの企業や、その社員と話をする機会が毎回あるわけではないが、日本の留学エージェントが企業と話し合い、海外研修の案件をもらい、私のような学校スタッフに依頼をして法人用のプログラムをつくる。

海外に派遣される社員は、短いと4週間、長いと半年から1年ほど海外で過ごし、会社が定めたプログラムに沿って英語を学んだり、現地法人を視察したりする。

法人の問い合せがある度に疑問に思うのだが、企業はどのように派遣する社員を選定しているのだろう。

将来有望な新入社員。

これから管理職になるであろう中堅社員。

現役バリバリの、働き盛りのベテラン社員。

各企業の方針により、様々な役割の方が海外研修に参加するのであろうが、会社の経費で留学させるのだから、現地で培った英語力や知識を使って、会社に貢献してくれる方に行ってもらいたいことは間違いないであろう。

ほとんどの場合、海外の学校スタッフが英語研修の企画段階で企業と話をすることはない。

問合せが来た段階で、期間や人数、研修の内容はある程度決まっており、学校側が受け入れ可能と返事をした後に、どの社員を派遣するか決めるのが一般的なパターンだ。

つまり、研修内容が先で誰を派遣するかが後であり、研修を受けさせたい社員が先に決まっており、その社員に合った研修を提供する、というパターンはほぼ皆無だ。

どの社員を派遣するかの判断材料のひとつになっていると思われるのが、TOEICスコアだ。

ここでお伝えしておくと、海外の学校スタッフは、TOEICスコアを英語力としてほぼ認めていない。

ごく稀に、TOEICスコアでも入学できる専門学校やカレッジなどがあるが、入学した後に勉強についてゆけず困らないか心配でならない。

大抵の日本人は、990点満点のReadingとListeningのテストだけを受ける。

400点満点のSpeakingとWritingのテストを受ける人は少ない。

そのため、日本でTOEICスコアと言えば、ほとんどの場合でReadingとListeningのスコアを指しており、受験者は990点満点を目指している。

そもそも、ReadingとListeningというのは、相手が話していることや書いたことが理解できるかが問われる。
言わば受け身の問題だ。

それに対し、SpeakingとWritingは、自分の意見や感想を、いかに上手く表現できるかが問われる。
こちらはアウトプットの問題だ。

日本語で考えても同様のことだと思うが、相手が話していることや書いたことが理解できても、自分の意見を述べたり書いて表現することができなければ、日本語ができるとは言えない。

そのため、ReadingとListeningのTOEICスコアを提示されても、その社員が英語で何が「できる」かはまったく読み取れないのだ。

そんなわけで、せっかくご提示いただいたTOEICスコアはほぼスルーで、会話力も含め総合的な英語力がどのくらいあるかを、学校が用意したテストで測定することになる。

社員は社内競争で生き残るためにTOEICの勉強をしたのかもしれないし、その会社に就職するためにTOEICの勉強をしたのかもしれないが、海外の学校スタッフは、TOEICのReadingとListeningテストだけを受けても無駄だと思っているのが現実だ。

企業によっては、せっかくTOEICスコアを持っているのに…と、追加テストに難色を示す場合もあり、日本はTOEICスコアの信者が多いなと残念に思う。

日本には、「グローバルな人=英語ができる人」のロジックがあり、そして、「英語ができる人=TOEICスコア(ReadingとListening)が高い人」という思いが根強いのであろう。

だから企業は、社員にTOEICテストを受けさせ、海外研修の選定ツールとして利用し、海外の学校にTOEICスコアを提示する。

海外研修の候補に挙がる社員のTOEICスコアは、低くても700点、高いと900点台もざらだ。

そんな方たちを、学校が用意したテストで英語力を測定すると、ほとんどが中級程度だ。

会話力のなさが足を引っ張って、総合点が下がるからだ。

もしTOEICスコアを選定基準に使うのであれば、SpeakingとWritingのスコアも提出されることをお勧めする。


だが、それ以上に私が気になるのは、海外研修をさせる社員を、英語ができるかどうかで選んでいいかどうかだ。

私が企業の人事なら、

英語力などどうでもいいので、

仕事ができる人を海外に派遣する。

実務を熟知しており、足りないのは英語だけ、という社員を選ぶ。

メジャーリーグで活躍する野球選手は、英語力が高いから北米に行ったのか。

野球が上手いからであろう。

世界で勝負できる仕事っぷりの人であれば、英語なんてどうでもいい。

通訳を付けることもできるし、翻訳機能を使ってもいいし、日本語を貫き通したっていい。

日本に必要なのは、世界で勝負できる仕事っぷりの人を増やすことであり、TOEICを勉強させることではない。

世界で勝負できる仕事っぷりの人は、たとえアウェイでも語学が堪能でなくても、仕事で実力を発揮する。

そんな人が、最終的に英語力まで身に付けたら鬼に金棒なのだ。

海外研修を受ける社員はきっと優秀なのだろうから、だからこそ、TOEICスコアでは選ばないでほしい。

学校では英語力を上げることはできても、仕事ができるようにはできないのだ。

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素敵なイラストは出雲千代さんからお借りしました~。


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