見出し画像

対談② 茶寮ささの代表 笹野千津子さん&Buddycare株式会社代表 原田和寿

はじめに

笹野千津子さんはお茶農家の経営に携わりながら、製茶工場隣に「茶寮ささの」をオープン。緑濃い山あいに多くのお客様が訪れる人気スポットとなっています。また、笹野さんはバディフードの愛用者でもあります。バディケアの草創期よりご支援いただき、以来、愛犬ブリスくん(トイプードル)のごはんにバディフードをご利用いただいてきました。愛犬家同士、また地域の農産物とも関わりの深い経営者同士の対談を、ぜひご覧ください。

対談①からの続きになります。ぜひ前編もご覧ください。)

店頭に立ち、お客様を迎える千津子さん

原田:今までお話を伺っていて私自身、水分補給としてお茶を飲むだけで、お茶を楽しむというところまでいってない、知らないなと感じました。

笹野:お茶って本当に奥深い。お茶を楽しむ術は伝えるべきだし、そのためには自分も常に勉強しておかないといけないと思います。茶道のような伝統的なものと革新的なもの、両方楽しめたらいいですね。昔から絶えず伝えられてきたことはやはり、子どもたちにも伝えていきたいです。

原田:お店にきて、お香のようにお茶を使っていることにも感動しました。

笹野:これも昔からあったものだけれど、今の生活シーンに合うようなデザインで提案すると、楽しんでいただけますね。

香炉からほのかに漂う、清々しい茶の香

鹿児島のお茶文化の発信拠点として

原田:僕のような素人には、新しいライフスタイルの提案のように感じます。「茶寮ささの」が、笹野製茶の事業においてしっかりと情報発信拠点として機能しているのがわかりました。

笹野:そうですね、情報発信の場であり、お茶を楽しむライフスタイルの提案の場として、少しずつ定着してきました。来店される方々は「えっ?こんなところに?」という反応をくださいます(笑)最初の事業計画をお見せした関係者も一様に「こんなところに、こんな店を作っても…」という反応でした。「ほらね」と、今は言えますが(笑)起業のときは「本当にやっていけるのかな?」と、ドキドキでした。開業して一年一年、決算期を迎えては「よかった。今年もできた」と胸をなでおろして。まだまだ発信できること、やれることはある。楽しいな、って思います。

原田:イベントの開催やSNSでの発信も積極的にされています。

笹野:イベントやSNSをしていると、いろんなところからお声かけをいただきます。先日はシンガポールのお客様が鹿児島空港から直で来ていただいて。こうして喜んでいただき、いろんな方とつながって新しい発見を得ることが、とてもありがたいです。今はSNSで世界とつながれる時代。外からのお客様、地域のお客様関わらず、興味を持ったら訪ねてきてくれます。ここには「何もない」と、ここに住む人たちが思ってしまったら終わり。みんなで発信して、参加して交流することで「何もない」思考から脱却できるのではないでしょうか。

海外からのお客様に気づかされたこと

原田:海外からのお客様も多いと聞きましたが、彼らは何を求めてここまで訪ねてくると感じていますか?

笹野:そうですね、自分が口にするものが、どこからできているか?というのに敏感なのだなと感じます。お茶を飲んだら「畑は?工場は?」と知りたがります。ある時、たまたま新茶のシーズンにフランスから来たお客様は茶畑にお連れして、工場で製茶の過程を見てもらい「あの茶葉がこうなるんだね」と。生産から加工を経て、自分が飲んだお茶になっていることを目で確かめて、味わいに納得したご様子でした。店頭にあるだけの抹茶をご自分用とお土産用に買ってくださいました。ひとつの食に対するこだわりが、日本人よりも強いのだなと感じた出来事でした。

原田:たしかに。実際に茶畑や工場にお連れできるのもすごいですが(笑)

笹野:バディフードもそうですよね。愛犬にフードを与える時、「これって何の食材?」と製品の表示を見れば、すべて書いてある。生産者から加工に至るまでを追跡できる、いわゆるトレーサビリティは今からの時代さらに求められることでしょうし、大事だと思いますね。

原田:最終の食べるところだけではなくて、その前までも。

笹野:そうですね。私たちも催事に行くと当然のように聞かれます。「これってどこで、どういうふうにつくっています?」と、求められて当たり前の世界になっているので、そこまで追求することが必要でしょう。私も以前、カリカリのフードをあげている時には、製品の表示を見て「畑ってどんなだろう?」なんて、想像することすらなかった。バディフードなら、それが見えてくる。行こうと思えば、生産者のところまで行くこともできる。原材料が県内産、国内産というのは、やっぱり安心です。

原材料のトレーサビリティを確立しているバディフード

原田:最近は、どの食品業界も見た目の「映え」と中身追求の二極化があるように感じています。

笹野:個人的な感覚でいうと「映える」のは一瞬。いいねとは思うけれども、それよりは、やはり中身追求のほうが、後々までの信頼関係を築けるだろうと思います。

原田:納得感があるからこそ、長く使おうと思いますよね。

笹野:消費者としては「この方が作っているお野菜、この方が育てている牛さんや豚さん」という状況が見えて初めて、ありがたみを感じる。自分たちは命をいただく立場なので、生産者さんの営みが可視化されることは、とても重要だと感じます。

土地には生きているものを植えたい

原田:笹野さんが製茶事業に始まり、「茶寮ささの」を拠点として、お茶に関わる情報発信や暮らしの提案を展開されてきたことがよくわかりました。いま大切にしていることはどんなことでしょうか?

笹野:私たちは生産者なので、安心安全なおいしいお茶を提供するというのは当然のこととして、地域の問題も考えながら事業活動を行いたいと考えています。お茶畑が減っていき、土地が荒れていくのを見るのは、住む者として悲しい。じゃあどうしたらいいだろう?と考えて、桑を植え始めて10年以上になります。荒廃していく土地を活かすためには、そこにはできれば地のもの、生きているものを植えたいという思いがある。有機の桑を育てて製品にすれば、みなさんの健康状態にも寄与できます。

原田:鹿児島の農産物に対する思いもあるのですね。

笹野:そうですね。鹿児島の生産者さんはみなさん、自信をもって作物をつくっていらっしゃる。いいものをつくっているのに、発信力が足りないと常に言われてきました。安心安全なものをつくるなかで、自分たちの生産品に誇りを持ち、ただ消費されるだけではなく、生産者さんの顔が見えること。生産者と消費者とがつながっていくことが重要なのかなと思います。作物を出しておしまい。ではなく、心を込めてつくったものがどう届いていったのか。お客様の反応は生産者にとって本当にうれしいものです。有機栽培のために農薬を使わず、自分たちの手で一本一本草を抜く。そんな大変な作業を経て、お客様の口に届き「おいしかったよ」という言葉として返ってくると、報われる気持ちがします。

原田:生産者やメーカーにとっては、遠くのマーケットを見に行く難しさがあるかと思いますが、笹野さんが外のマーケットを見ないといけない、消費者とつながらないといけないと思ったのはなぜでしょう?

笹野:やはり、催事がきっかけでしょうか。都市圏の催事でいただく質問は結構、手厳しかったりするんです。地元の人は優しいですよね、「あ、笹野さんね」でイメージしてもらえて、認めていただける部分もありますが、ひとたび外に出たら、都市圏では「笹野さん?何者ですか?」というところから始まる。笹野製茶とは何を作っていて、どういう状況なのか、どんどん質問が出る。それに対して、私たちはそれだけの情報をもってその場にいないといけないと改めて感じます。一回外に出ることは非常に大事。他業種の方を見て勉強になることも多いです。製茶会社だけでなく、いろんな方たちがいろんな思いを込めてつくっているところに自分たちもいざ立って勝負すると「まだまだだな」と毎回思います。商品説明にしても、ものすごく熱を帯びて説明してくださる。ひとつの商品が誰かのところに届く。それまでの間にどれだけの人が関わっているかという思いをもって、しっかりやらなきゃいけないなと感じます。

愛犬ブリスくんとの日々

―お茶やお花を愛し、地域や次世代の子どもたちを思う笹野さん。そして仕事にまい進するビジネスパーソンとしての笹野さん。事業に関するお話では実にさまざまな笹野さんの一面を知ることができました。最後に、愛犬ブリスくんとの日々について、現在の心境をお話していただきました。


原田:ブリスくんが天国に行って、まもなく一年になりますね…。どんな思い出がありますか。

笹野:そうですね、本当に日常そのものでしたので、これという思い出は…誤嚥事件くらいかな? ずっと一緒にいたので、思い出を超えて。主人とはまた違う、パートナーでした。私のことは全部、知っているかも。いつもこのへんにいるんだろうなと感じています。実家が海に近かったので、よく一緒に訪れていました。今も海に行くと、ブリがそばにいるような気がするんです。この寒い季節、足元にブリがいたらなって。何が楽しかったって、ずっと一緒にいてくれたことが一番楽しかったかな。どこか旅行に行ったとかいうことではなく。いつも寄り添っていてくれたことが一番の思い出です。

原田:(笹野さんの手元にある服を見ながら)撮影に協力いただいた時の服ですね?

笹野:はい。自宅での取材の際にブリが着ていた服です。最後に着ていた服がこれでした。(ブリスくんの写真を見せながら)初めて私が手作りした服で、1歳くらいの時かな。トリマーさんに「小さい時しかできないよ」ということで、やってもらったテディベアカットですね。一番好きな写真です。

原田:僕が会った時が16歳だったかな。写真とあまり変わらないですね。

笹野:目がやっぱり特徴的で。いつかまた、こんな目の子と出会えたらいいなと思いながら。愛おしいですね…。原田さんからはお悔やみのお手紙をいただいて。うれしかったです。

取材中の笹野さん、ブリスくんと原田代表(2021年12月)

原田:笹野さんとブリスくんには、本当に何回も取材や撮影に協力いただきました。

笹野:こちらもうれしく、いい時間をもらえたかなと思います。ブリスをはじめ、ワンちゃんのために素晴らしいバディフードを作ってくださってありがとうございます。私からもお伺いしていいですか? これから先、原田さんの目標とするものを教えてください。

原田:今は事業の主軸がごはんです。おかげさまで、良いものを出せていますので、これを根付かせて文化にしていきたいですね。今後も改良はあるかもしれませんが、基本的には今やっていることを変えずに、しっかりとやり続けていきます。ごはん以外のヘルスケアソリューションの開発も進めていきます。愛犬のヘルスケア全般については、まだまだ解明できていないことが多い。多くの愛犬のデータを元にして、正しい健康管理方法を定義していく。これらを一つ一つ、しっかりとやり遂げていくというのがこれからの目標です。

笹野:素晴らしいですね、楽しみにしています。きっと、もっといろんなことができるんじゃないかなと思います。明るい未来しかないですね!

原田:ありがとうございます! 今後もバディケアに期待してください。

笹野:うちのブリスもお世話になりましたが、もっといろんなワンちゃんたちにも試してほしいですね。良いものだから、どんどん広がっていくと思います。企業として、やり続けていくことはとても体力のいることですが、継続を第一に、今までの経験をベースに走り続けてほしいと思います。

原田:笹野さんの熱いビジネスのお話から、心温まるブリスくんの話まで聞かせていただき、充実した時間になりました。ありがとうございました。

笹野:ありがとうございました。

Buddy TREATsをブリスくんに

対談を終えて

私の出身地、薩摩川内市の先輩経営者である笹野さんに対談の機会をいただきました。これまでにも、テレビ取材などで笹野さん・ブリスくんには度々ご協力をいただいていましたが、笹野さんの事業やBuddy FOODに対するフィードバックをじっくり伺うことができ、とても貴重な機会となりました。

お話しを伺う中で度々仰っていた「中身を磨く」「やり続けていく」ということの大切さを強く感じました。正しいことをやり続けていくことは、時間がかかりますが、それを通じて築き上げられた信頼だからこそ、長く続いて行くものなのだと思います。想いを「しっかりと伝えていく」ということについても、とても多くの学びがありました。

改めまして、この度は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。


茶寮ささの Instagram

https://www.instagram.com/sasano_tea/



いいなと思ったら応援しよう!