私と彼のこと(474)-無理な注文-

数日前のこと。
帰宅すると、いつものように彼から「外に遊びに行こう」と誘われた。
しかし、あいにく小雨が降っているし、かなり冷え込んだ日だったので、彼と外出するのは難しかった。

和室に移動し、ボールハウスで遊び始める。
しばらくすると、彼は部屋の隅に置いてあった私のギターに気づいて近寄り、ケースを叩いて「弾いて」と要求してきた。
私は恭しく応じる。

彼が好むのはスリーフィンガー系の曲なので、『22歳の別れ』などを適当に爪弾いた。
笑顔で拍手してくれるので嬉しい。

次いで、彼はお気に入りの絵本『こぐまちゃんとどうぶつえん』を私に渡してくる。
私はこれも恭しく受け入れ、読み聞かせを始めた。
しかし、彼は立ち上がり「んーっ!!」と大きな声を出して抗議してくる。

しばらくやり取りをしてわかったのだが、ギターを弾きながら同時に絵本の読み聞かせを行えと要求しているのだ。
残念ながら、それは無理なのだよ。
腕の本数が足りないのだ。

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