私と彼のこと(386)-あしあしあひる-

彼の伝い歩きは既に堂に入ったものである。
目下の楽しみは、小さなイスや段ボール箱を押して歩くこと。
いわゆる手押し車だと、転がりが良すぎて転んでしまうので、イスや箱程度に抵抗があるものがちょうど良い。

とにかくどこまでも押していく。
ときおり強く抵抗がかかり、床にこすれて「ブーッ」と音が出ると、ケタケタと笑う。
ガタガタと揺すぶって、意図的に音を立てて楽しむこともある。

この時期になれば楽しめるだろうと思って、彼の手を引き「あしあしあひる かかとをねらえ」と歌いながら後ずさりしてみたが、それはお気に召さなかった。
彼が私に手を差し伸べたときは即ち「だっこしろ」という要求なので、わらべうたなど歌っても、「そういう場合とちがう!」ということなのだろう。

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