私と彼のこと(504)-うた-

彼はときおり、歌うように大きく長く声を出す。
欲求不満や苛立ちを表現する奇声ではなく、にこやかに朗らかに抑揚をつけて、まさに歌う。

私はつい、それに対して同じように歌って返す。
すると彼は、我が意を得たりという表情で、また別のメロディーを歌う。
そうして何度もコール・アンド・レスポンスが続く。

妻(彼の祖母)には、ご近所に聞こえて恥ずかしいから止めろと怒られるのだが、楽しくてやめられない。

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