
おてらおやつクラブ前日譚(梵天勧請)
苦行を終えたお釈迦さまは菩提樹(ぼだいじゅ)の木の下で静かに瞑想にふけりました。忍び寄る悪魔たちを断ち切り、法(ダルマ)に目覚めたお釈迦さまは、ブッダとなりました。
しばらくの間、自身が悟った内容を誰かに伝えることもなく、悟りの喜びをかみしめていました。
自分の悟りの内容を他の人に伝えても、人々は理解しないであろう。そんなお釈迦さまのまえに梵天(ぼんてん・ブラフマン)が現れます。
「ブッダよ。あなたが目覚めたダルマ(法)を人々のために説かれよ」
他の人に悟りの真理は理解できない、かえって人々の心を惑わすことになるだけだ。そんなお釈迦さまも度重なる梵天の要請に応え、伝道のたびに出る決心をしました。
梵天勧請(ぼんてんかんじょう)と呼ばれるエピソードで、仏法が世界中に広がっていくきっかけとなった出来事です。
「おてらおやつクラブ」をはじめるきっかけとなった出会いがあります。
2013年5月大阪市で起こった母子餓死事件が起こりました。この事件をうけて、二度と悲劇を繰り返さないために、と立ち上がったのが「大阪子どもの貧困アクショングループ」です。2018年には認定NPO法人CPAOとなり「まずは、ごはん!」を合言葉に親子丸ごとをサポートする活動をされておられます。
「おてらおやつクラブ」が今のような活動となるまえ、お寺のお供え物をもって訪ねたのがCPAO代表の徳丸さんでした。
「お寺には食べきれないほどのお菓子があって・・・お母さんや子どもたちにお届けすることはできないでしょうか・・・」「自分も大阪に住んでいました・・・母子家庭で育ちました・・・」
お寺のこと、どうしてこんなことを始めようと思ったのか、色々なお話をお伺いしながらご縁のあったご家庭へ「おすそわけ」を始めることになりました。
しばらくしてお届けしていた「おすそわけ」がお役に立てているだろうか?(自分はイイコトしているだろうか?イイコトしているとお墨付きをもらいたい)ご家庭の状況を伺いにまた活動の現場へとお邪魔したのでした。
お寺から届くめずらしいお菓子や果物に子どもたちはとても喜んでいますよ、そんな子供の姿を見てお母さんたちも笑顔になってくれていますよ。
期待していた様子をお伺いし、よしよしという卑しさが浮かんだのも束の間、「まだまだ足りません・・・」「おすそわけが必要なお母さんや子どもたちがたくさんいます・・・」とお話は続いたのでした。
恥ずかしくなった僕は帰り道、普段は素通りするお寺の存在が気になりました。ここにもあこにもおてらあるやんけ。「まだまだ足りません」と言われれも自分のお寺にできることはもうこれ以上無い。でもなんとかお応えしたい。そうか、日本中にこれだけお寺があるんだから、その一部でも一緒に「おすそわけ」してもらえるようになったら、お応えできるかもしれない。
「まだまだ足りません」この一言で、個人的に仔細を考えずにやっていた活動に名前がつき、仲間集め、全国のお寺や支援団体さんとの連携を着想するようになっていったのでした。2013年秋の出来事です。
その後「おてらおやつクラブ」は全国へと広がっていくことになりますが、支援の現場への想像力がたりず失敗や反省多き活動であることも事実です。「おすそわけ」だけでは解決できない課題がたくさん存在しているのです。
現場に向き合う徳丸さんならどうするだろう?自分にとってこの活動の支え、原点に立ち返る道標となる存在、きっかけをくださった梵天さまが徳丸さんとの出会いでした。
現在、認定NPO法人おてらおやつクラブでは春から始まる新年度に向けて、クラウドファンディングを企画しています。どうぞお力添えください!
