The Sun Also Rises
「ほーポンチョ的なもの……ポンチョ……的なもの??!???!」
開発室にリアムの叫び声が木霊した。
「アーーーーーーーーーーーー」
魂が抜けたように宙を見つめうなり続けるリアム。
「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
まだうなり続けているリアムを心配そうにアルベルトが見ている。
「よし、やるか~~~~!」
どこかから戻ってきたリアムが気合を入れて立ち上がる。
「やりますか!!」
ほっとした様子でアルベルトも返事を返す。
「備管に急ぎでリスト出して貰ってきて」
「分かりました!」
先程とは打って変わってピリッっとした空気に変わる。
こうして新たなる戦いの火蓋が切られた。
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「リストお待たせしました」
元気な声のタチバナが入ってくる。
「ありがとう。そこに置いといて」
設計図とにらめっこをしながらリアムが答える。
アルベルトは返事をする余裕も無いほど忙しく動き回っている。
「他に入用でしたら連絡ください」
タチバナの声掛けにリアムが手だけで答え、遠くからはアルベルトのありがとねーという声が聞こえてくる。
「また忙しくなりそうですね」
扉をしめたタチバナは独りごちる。
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「不備はなさそうですね。では、皆さんお気をつけて」
げっそりとやつれたタチバナがにっこりと笑って送り出す。
「装備問題なしでした。お疲れさまでした!」
開発室の屍達にタチバナが声をかける。
「アーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
リアムは唸り声をあげながら机に突っ伏しており、アルベルトに至っては床に横たわっている。
全ての常識を覆す凄絶な労働だった事が伺える。
唸っていたリアムがガバッと起き上がり
「煙草……煙草吸ってくる」
ノロノロと動き始める。
「僕も付き合いますよ」
アルベルトが応じ、同じ様にノロノロと動く。
「先に行っててください。後から僕も行きます」
タチバナも答える。
三者三様に動く屍達の如く活動を再開した。
リアムとアルベルトは、喫煙所のパイプ椅子に力なく腰掛けて空を見上げている。
「お待たせしました」
ドアを開けたタチバナの手元にはコーヒー缶が3つ握られている。
「備品から貰ってきちゃいました」
ニヤッと笑いながら二人へ手渡す。
「タチバナ君も悪だねぇ」
言いながらリアムはニヤニヤしている。
「頑張ったご褒美ということで」
タチバナも笑いながら返す。
「有り難く頂いちゃいましょうか」
アルベルトの言葉に皆が頷き、缶を持ち上げる。
「「「お疲れさまでした」」」
……沈黙
「……皆無事に帰ってきますかねえ」
「こんだけ苦労したんだ、無事に帰ってきてくれなきゃ困るだろ」
アルベルトがぼそっと呟いた言葉に対し、リアムが答える。
「そうですよね。皆を信じて待ちますか!」
……沈黙
「たまにはこういうのも悪くないですね」
「ごめんだわ」
「ごめんですね」
タチバナの呟きに対し二人の答えがシンクロしたため、3人は顔を見合わせ誰からともなく笑い始めた。
「ラーメンでも食べに行くか」
「「 はい 」」
灰皿から昇った白煙は、戦いの終わりを告げるかの様に空に消えていった。
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