【大学教員公募】待っていても大学の教員にはなれない
私の指導教員は、「まずは博士号取得。その後着実に業績を積み重ねて頑張っていればそのうち食い口は見つかるよ。」という人だった。ひとまず消極派としておく。一方、就職時に私を支えてくださった恩師は、「博士号取得見込みの段階から積極的に狙っていくべき。待っていても大学の教員にはなれない。」という人だった。前者に対応させて積極派としておく。
研究者は無論千差万別だが、周囲の大学教員を乱暴に分類すれば、消極派と積極派に分かれる。私の印象では、そこまで苦労せずコネで大学教員になった年配層には比較的消極派が多く、若手から中堅どころは積極派が多い。もちろん例外はいる。両派の就職に対する心構えはなかなか調和しない。消極派が研究者としての実力を重視する一方、積極派は研究者として食べていくことを重視する。どちらが現代社会にふさわしいだろうか。
私は、研究者としての実力を重視し努力し続けるも、「ポストが降ってくる神話」を妄信し続け公募戦線での戦いを怠り、結局教員職にありつけず遂にこと切れて研究業界から引退した(消息を絶った)方を数名知っている。「こうはなりたくない」と心底思った。大学教員のポストは待っていても降ってこない、自分からつかみ取りに行くものなんだと自分に言い聞かせた。
公募戦線を意識し始めたD2の頃、コネで就職を決めた指導教員がなんとも心細く見えた。研究者としては超一流であるが、この人に就職の相談はできないと思った。消極派の権化のような人だったからだ。
大学のとある雑務を引き受け、先に述べた恩師と懇意になった。師は厳しい公募戦線を勝ち抜き教員の座をD3時に射止めた人だった。師の経験を聞き、力強いアドバイスをいただいた。「消極派は甘ちゃんすぎる。今の時代、チャンスは自分からもぎ取りにいかなければ大学教員にはなれない。大学教員になれなければ研究どころか生活自体が成り立たない。教員のポストを得ることが最優先事項だ。コネがあれば有利なのは確かだが、全コネがそのまま通るほど今の業界は甘くないし、逆にそんな職場は後で苦労する。博士号取得見込みのD3から、積極的に公募戦線で戦っていくべきだ。」昨日言われたかのように、心に鮮明に刻まれている。
私はD3の春から積極的に応募するようになった。「博士号取得見込み」で公募戦線に参戦した。少しずつ、大学研究の方法や書類の調え方を学んでいった。序盤は苦労した。年末に立て続けに不採用通知をもらい、遂に年内に面接通知が届くことはなかった。やはり厳しいか…と思いながらも年明けに1つ応募。その後、年末に応募した大学と年明けに応募した大学から面接通知が届いた。心躍りながら、寝る間も惜しんで大学研究と模擬授業・面接準備に臨んだ。結果、2内定。どちらに着任するかという、最高に贅沢な悩みを味わうことができた。面接時の先生方の対応、待遇、研究環境、授業の負担、、、様々なことを勘案し、現職の大学に決めた。こうして、私も恩師と同様にD3、公募戦線1年目で内定を勝ち取ることができた。
私は、紛れもなく「積極派」である。そして、ポストが減り続けている現代社会に適合的なのは、間違いなく「積極派」であろう。大学教員の座は、自ら貪欲に勝ち取りに行くものだと考えている。そのための努力を惜しむべきではない。特に公募戦士になってわずか数か月の方、あるいは近々公募戦線に名乗り出る予定の方は、肝に銘じていただきたい。様々な情報を収集しながら、魂を込めて書類作成に臨んでいただきたい。周りに消極派の先生、先輩がいたら惑わされてないけない。待っていても、大学の教員にはなれない。