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学振DC/PDの申請書について②

学振の申請書作成について、思うこと・感じることを率直に書くシリーズです。
この時期になるとこの手の記事が大量発生します。私自身も現に書いています。書き手側は、意識してか無意識か、この時期に需要が伸びることを知っているのです。実際に同時期に地獄を見た経験があるわけですし、ある意味当然です。

一方で、この時期にこの手の記事を読みあさっているDC/PD申請者達がどのような記事を求めているのかについては、あまりケアされていない気がします。期日1ヶ月前になって、「やっぱり業績が重要だ」「研究がある程度進んでいないと仕方ない」「ラボ・ボスの選定が需要」と言われてもどうしようもありません。これらが重要な要素であることは間違いないと思いますが、この期に及んでそのような情報にはあまり価値がありません。

むしろ、業績の少なさ・思わしくない進捗状況・ラボの心許なさを如何に克服するかという点に光を当てるべきです。本記事は、これらを全てカバーするものではありません。ただ、その一助になればと思いつつ、私の感じること・思うことを綴った駄文です。暇なときに読み流すも結構、そんなことあるか!と反発していただくのも結構、煮るなり焼くなりしつつ何かしらを得ていただければ幸いです。

業績の少なさをどうカバーするか

そもそも、業績が十分な方は業績欄(現在では「研究遂行能力の自己分析」となり、やや趣向が変わっているようですが)について悩むことはないでしょう。むしろ、頭を抱えているのは業績が少ない方達です。

業績が十分であれば、選考に際して有利に働くのは自明です。中には「関係ない」という方がいますが、アカデミックの世界で業績が当人の評価に関係しないのはあり得ません。DC1であっても、業績はないよりある方が絶対的に有利です。
ではなぜ、業績が重要なのでしょうか。業績は、その人のこれからの研究計画に根拠を与え、実現可能性を感じさせるからです。論文を多く書き、学会報告等の荒波を経験してきた人がその経験を踏まえて語る研究計画と、そのようなバックボーンがない人が語る研究計画には、いかんともしがたい差があります。
逆に言えば、業績が少ないのであれば、「研究計画の根拠」と「実現可能性」の部分を工夫することで、その差をカバーすることは可能だということです。

業績がなくとも、先行研究の蓄積があります。まずはあなたの研究計画に関する先行研究を徹底的に調べ、整理し、現在まで明らかになっていること・明らかになっていないこと、これからの課題(「課題」となりうる事項は山ほどあるかと思いますが、重要だと思う課題をピックアップしてください)を指摘します。その上で、課題を遂行するための道筋(研究計画)を具体的に示しつつ、これまであなたが行ってきた(明らかにしてきた)事柄を記述してください。後者は、あなたの研究遂行能力を示す部分です。書きにくければ注などを駆使して、これまでの実績(注が必ずしも論文や学会報告などの業績である必要はありません)を端的に示しましょう。

審査するのは研究のプロです。一学生の下手な業績より、先行研究を如何に渉猟しているか・その上でどのような課題意識を持っているのか、こうした点が端的に指摘されている文章の方が何倍も魅力的です。
「実現可能性」については、もちろん内容も大事ですが、そもそもボヤッとした曖昧な概念です。書きっぷりから「この人優秀そうだな、研究課題を遂行できそうだな」という印象を持たせれば十分です。
前回も書きましたが、誇張表現は読んでいる側にとっては鬱陶しいだけです。意味が被る形容詞や過度な表現は削りましょう。「重要なこと」は、読んでいれば分かります。「非常に」「大変」「他に類を見ない」と書けば書くほど、その研究計画の魅力は低減します。

業績がなくとも、先行研究の扱い方をみれば申請者の力量を判断することができます。あくまで、業績<先行研究の整理の仕方であると私は考えています。
一応付言です。業績がない&先行研究もないというパターンの研究計画は単なる夢物語で終わってしまいますのでご注意ください。



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