【学部生向け】研究者を目指す方へ
本記事は、研究者を志す主に大学1~4年生に向けたものです。人生の10歳ほど先輩からの小うるさいメッセージとしてお読み流しください。
私自身、研究者として身を立てようとぼんやり思ったのは大学4年生の頃、より現実的に考え出したのはM1の頃でした。今覚えば、大学1~3年ともったいない時間の使い方をしてしまったと後悔しています。
「研究者になりたい」という志を持つのは、早ければ早いほどいい。研究者は自身の専攻に特化したスペシャリストであると思われがちですが、浅く果てしなく幅広い知識量を求められるのが現実です。大学生活前半は、様々な知識・教養を吸収するための時間です。「授業だるい」「サボりたい」と思いがちですが、研究者になるための基礎固めのための好機です。意欲が低下していた場合には気合いを入れ直すことをお勧めします。
研究者として飯を食っていく。この夢を実現できる人はわずかです。博士号を持っていても空きポストの方が少なく、大学も予算削減等で非常勤が増えているのが実情です。研究者を目指すのであれば、こうした状況の中で勝ち残っていかなければいけません。これが現実です。
別の記事でも書いていますが、確かに運ゲー・巡り合わせ・人の縁的な要素はあります。しかし、これらは自らの実力をしっかりと証明した上での話です。少なくとも、研究者になるだけの実力を備えていること・実力を証明できること、これらが揃った上で運ゲーステージに上がれるのです。
まずは研究者としての実力をつけましょう。幅広い知識を吸収してください。自身の専攻分野に関する本を読みまくってください。知識を吸収しつつそれらを自分の言葉でまとめ上げ、新しい課題を見つけてください。課題発見能力は必須です。何も見つからないのであれば、研究者に向いていないか、不毛の分野に興味を持ってしまったということです。99%前者ですが。自分の見つけた課題には、知識を総動員して取り組みます。実験や調査を惜しまないように。ここまでが、「実力を備える」パートです。
次は、身につけた「実力」を見える形で証明しましょう。論文を書くのです。論文執筆は、慣れない内は(私はいつまでも慣れません)「産みの苦しみ」です。自分の書いた文章を何十回も見直し、論理破綻がないか、読みにくくないか、チェックを重ねていきます。辛い作業ですが、やるしかありません。論文が形になって公表されればそれはあなたの業績になります。その上で、その論文が賞などを取れればより素晴らしい「証明」となります。
学部生向けの文章であることを前提に少し先の話をします。みなさんが本気であれば、M2の時に学振の特別研究員に挑戦することになります。特別研究員に採択されれば、月20万の奨励金と年間MAX150万の研究費(MAX取れた方は聞いたことないですが)が貰えます。しかし、それ以上に、特別研究員には「若手研究者としての品質保証」という意味合いがあります。必ずしも実力で決まるものでもないのでおかしな話なんですけどね。ただ、様々な研究分野の方がいて、その方達を比較して順位付するのが困難であるなかで、学振に採択されているか否かというのは、確かに「品質保証」的な意味もっています。学振に採択されるには、研究者としての実力や、その証明物が必要です。実力は、提出書類である研究計画書に現れます。これまで何人もの計画書を見てきましたが、確かに、計画書には申請者の知識量や能力が克明に表れます。読めばなんとなく実力が分かるのです。
学振は取れなくても研究者にはなれます。ただ、取れた方が有利です。M2ではまずこうした戦いがあるのです。その後も博士課程を修了するまではずっと戦いです。
その基盤を作るのは、学部生の時です。様々な講義を受講し、知識を増やしてください。忍耐力もつけてください。
自戒も込めて。