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手帳と保護

療育手帳を取得するメリットはたくさんがるけれど
一番のメリットは、行政と繫がれるということのような気がする。
特に母親が持っていると、子どもも母親も公的な見守りがつく。
けれども、

「いいですってずっと言ってきたの・・・」
というお母さん。

その背景には
「差別されたくない」
「普通でいたい」
という思いがある。

子どもはギリギリラインで手帳の取得には至らないが
お母さんは小学生のころから取得できる状態だった。
しかしお母さんのお母さん(祖母)は取得を拒み、
結果、お母さんもその意思を受け継いできた。
お母さんは18歳になって、必死で普通免許の勉強をして
配送業の仕事につく。

車の免許は一つの指標になるが
知的障害があっても、車の免許は取得できている人は多い。

結果、一度も行政とつながることなく
子どもの養育がうまくいかず
好きなものを好きなだけ食べさせて
行きたくない学校に行かせず、
健康も精神的発達も害して
社会生活が営めなくなった。

「私も学校は嫌いだった。いじめられるから。
だから、Aくん(息子)が行きたくないって言うのもわかるから
いかなくていいよって言ったの・・・」

お母さんは我が子が可愛くて仕方がない。
いないと寂しいと泣く。
子どもも、お母さんは優しいと言い
何でも言うことを聞いてくれるという。

誰も悪い人はいない。
でも、この光景、何かと似ていると思った。

かわいそう と
野良猫にエサだけをやる人・・・
吠えるからと、
好きなだけ安価なフードやおやつを食べさせて
ペットを肥満や糖尿病にしてしまう人・・・

愛護精神はあり
関係性も悪くないが
愛護の対象の健康や発達が蝕まれていく。

生活保護もしかり。
自分の力で頑張りたい。
人様に後ろ指をさされたくない。
という強い自立の思いから
必死で働き、体を壊して、子どもはほとんど留守番で過ごし
社会からとりのこされていく・・・

どうしようもならなくなる前に
SOSが言える世の中になるにはどうしたらいいだろう?

私が知る限り、犬も猫も、
食べ物が確保できる状態であれば
障害をもった同種のみならず
異種さえもありのままに受け入れる。

なぜ、ホモ・サピエンスは
「ラベリング」をしないと受け入れられないのだろう・・・
「Aくんが作ってくれた」と、
スマホについているキーホルダーを見せるお母さんは
涙を浮かべながらも、笑顔が見えた。

大丈夫、きっとまた一緒に暮らせるから・・・
現実とあまりにも程遠いその言葉を
最後まで声にすることができなかった。