給料はあがったけれど・・・
「4月になって、800円時給があがったんだ!」
そりゃ、すごい!!
喜びの知らせかと思いきや、どうも声のトーンが暗い・・・
「よく考えたら、就職した時の10年前と比べたら、4000円もあがってるんだよね。日給が。すごくね?」
確かに。
「月8万円もあがってるわけだよ。それなのにさ・・・」
それなのに?
「お金たまらねぇし、俺、なにやってんだろ・・・って自分がヤになってきた・・・。
10年前にKさんに言われた、自分で稼いだ金で飲む一杯のコーヒー、一杯のラーメンの味を忘れるなっていう意味がようやくわかったんだよね・・・
その味、今は全く感じられないんだよ・・・」
年収が約100万円もあがったのに
ひとつも、幸せになった気がしない。
むしろ、10年前のほうが、ワクワク感も感動もあったような気がする・・とのこと。
「お月様見て、きれいだなーとか
ひぐらしの鳴き声聞いて、秋を感じたり
あ、来週あの人にあえる!って一週間前からワクワクしたりとか、
そういう喜びがさ・・・今はないんだよなぁ・・・
欲しいモノばっかり増えて
でも、それを手にしてもさ、あんまりうれしくなくて
また次が欲しくなるわけ。
俺って、だんだん人間としては落ちてんじゃねぇかなって思ってさぁ・・・」
それを感じたから、どうも昇給を純粋に喜べない・・・どころか
昇給があって、なおのことそのギャップを感じたらしい。
星空の代わりに、手元のスマホを凝視し
なぜ、それが欲しいのかもわからず消費していく・・・
それって、資本主義ウィルスに感染しているってことかもねぇ・・・
それは、誰でもかかってるんじゃないかな・・・
とbubuが言うと、
「じゃ、昔の僕が純粋すぎたのかな・・・
でも、僕は昔の自分の方が好きだな・・・
あの頃の自分に戻りたい・・・
でも、お給料は下げてほしくない・・・」
Hくんが「俺」じゃなくて「ぼく」という一人称を使う時は
大抵、緊張が解けて素で話しているとき。
ひとり暮らしをして、安定した仕事があって
資格をとって昇給した。
夢が叶っているはずなのに、満たされないのはなぜ?
「資本主義ウィルスって、ヤク中(薬の中毒)みたいだね。
もっともっとってなって
自分でもわからないものに追われて
なんだか不安になったりさ・・・
この症状を治すには、どしたらいい??」
えっ・・・そうだなぁ・・・
夢って追っているときが一番楽しくて幸せで
叶ったあと、維持するのが一番きついって、イチロー選手がいってたよ。
だから、イチロー選手はもう一度生まれ変わっても野球選手になりたいって
思うかというとそうでもないって・・・
Hくんの10年前に言ってた夢、
叶ってるから、今きついんじゃないのかなぁ・・・
しばらく無言でいたけれど
Hくん、「そうだね」とぽつりと言った。
就職して、好きだった料理もチャレンジして
免許も取った、車も手にした。
資格もたくさんとって、出張もして、
なじみの店もできた。
「僕がしたかったこと、全部叶ってるね・・・
夢が実現するってことと、幸せを感じるってのは違うのか・・・」
そりゃそうだ。
海の見える別荘買ったって幸せにはなれない。
掃除が大変なだけかもしれない。
「今度は、したいことやほしいものの夢をかなえるんじゃなくて
幸せを感じることを夢にするよ」
じゃ、幸せを感じた時にまた連絡してね!
「うん、そうするよ!!そのときは、また聞いてね・・・」
日々の仕事をしていると、達成感とかやりがいはあっても
「幸せ」って感じることは少ないのかもしれない。
日々の中で幸せを感じる「感性」を磨き続けていくことは
もしかしたら、とても難しいことなのかも・・・
夢をかなえた踊り場にいる
Hくんの「幸せ」を聞くのが、bubuは今から楽しみな今日この頃です。