逆境のプロジェクトマネジメント

外資系の大手IT企業のプロジェクトマネジャーになって、早25年が経ちました。その間、様々なトラブルプロジェクトに遭遇しましたが、もうすぐ定年なので、具体的な事例をもとに皆さんに参考になるような経験とそこから得たLessons&Learnedを紹介できればと思い立ち、重い筆を執らせていただきました。

## 第一部 突然のアサイン
ソフトウェア開発研究所のLaboサービス部門でPMをやっている武相は、突然ラインマネージャーから呼び出され、某携帯キャリアのコールセンターシステム構築プロジェクトのアプリ開発チームのサブPMとしてアサインされる。そのプロジェクトは、開始から1月が経過していたが、ユーザー要件が急速に膨らんで、トラブルプロジェクトのきな臭い匂いが立ち込めており、カナリアを連れてきたら速攻で倒れてしまいそうな状況に置かれていた。

「はい。武相です。」呼び出し音がなると同時に、私は携帯電話にでた。
ちょうど、TAOの次世代Web委託研究案件の最終報告書を納品して、ほっと一息をついているところだった。私は、ソフトウェア開発研究所のLaboサービス部門でプロジェクトマネジャーとして、研究所で開発した製品の提案からデリバリーまで責任を負っている。入社して15年程は、ソフトウェア製品の開発に従事していたが、開発ミッションが徐々にUSに移るに従って、ビジネスサービス部門をサポートする形で、業務アプリ開発などのプロジェクトに参画しはじめて、約5年が経過していた。
「おはようございます。山野さんの秘書の木下です。至急、山野さんが話したいそうなのですが、ご都合はいかがでしょうか。」
「はい。大丈夫です。これから伺います。」

山野さんは、3000名の社員を擁する研究所の所長である。それまで、面識はあったが、仕事面での接点はほとんどなかった。
「わざわざ来てもらってすいません。早速ですが、レスキューマネージャーとして、武相さんに参画してもらいたい案件があります。プロジェクトはすでに始まっているのですが、当てにしていたアプリ開発ベンダーから、納期が厳しいということで断られてしまったそうです。そこで、あまり前例はないのですが、研究所のスタッフを投入してリカバリー体制を作ることになりました。武相さんには、アプリ開発チームのPMをお願いします。」
「わかりました。まずは、プロジェクト関係者にお話を聞いてきますので、少しお時間をください。」
山野さんのオフィスをでて自分のオフィスに戻ろうとした時に、木下さんから呼び止められた。「山野さんとしては、今回のプロジェクトは絶対に成功させなくちゃいけない理由があるの。山野さんが基礎研で開発した最新技術を実装したアセットが、初めて大規模システムに導入されるので、この成否には、USも注目しているの。」


いいなと思ったら応援しよう!