理想のパートナーとは? 相手への期待が高まるほど絶望も大きくなる
パートナーのMarekが日本に来てから5年が経ちます。
先日、松山市のお店で、5周年記念を2人でささやかに祝いました。
出会って初めのころの相手のことを知るワクワク感や、離れているからこそ相手を理想化していた歪みは、不愛想で味気のない現実の下で、とっくの昔に減退し正常値に戻っています。
熱烈ラブラブな時期が永遠に続くなんてことはありえないですから、恋に落ちる経験をした人なら誰でもこの(残念な?)変化をリアルに体験できますよね。
科学的にも、ロマンチックな愛は12~18ヶ月で失われることが分かっています。四六時中相手のことで頭がいっぱいだった高揚感は時間が経つと薄れていく。恋をしている時の中毒のようなワクワク感を与えてくれた脳内物質は悲しいかな、やがて正常値に戻る。fMRI画像やドーパミン、セロトニン値を見れば確認できるという、何ともロマンチックじゃない話です。
だから、「あれだけラブラブだったのに、私たち愛は冷めたのね」とがっかりしなくても大丈夫。
あなただけじゃなくて、脳や身体の仕組みからして、みんなそうなのです。
だいたい、お互いのことが好きで愛があるから結婚するようになったのは、歴史上ものすごーく新しい概念です。
昔は結婚は愛とは関係がなく、生活の(経済的)安定を得るためのものでした。社会保障や失業保険、医療保険という現在政府が担っている役割を、結婚が果たしていたからです。愛のために結婚するようになったのは、歴史的に見ればつい最近のことなのです。
「あの女は金のために結婚するのか?」という人がいたら、「ふん、あなたってなにも分かってないのね。その方が常識なのよ」ということになるわけですね(歴史的に見て)。
現代において、私たちは以前よりお金を稼ぐようになり、結婚に頼らなくても暮らしていけるようになりました。政府からの社会保障というセーフティーネットもあり、生きていくために結婚しなくても、個人主義が現実的な選択肢となります。
好きな人と自由に愛のために結婚できるなんてすばらしい!と思うかもしれませんが、物事は表裏一体。
自由恋愛、自由結婚により、誰もがパーフェクトな相手を探すようになります。結婚への期待値が高くなることで、結婚生活でより幻滅や怒りを経験することになってしまったのです。
だからうまくいく秘訣は、現実離れした期待を相手に抱かないこと、ということになるかもしれません。
さて、私たち個人的な話に戻ると、遠距離2年を経て、日本で一緒に暮らして5年。
人生を変えるほどの決断をしたほどの強い気持ち(一時的な脳内麻薬)が5年前にあったおかげで、現在共に生活をしているわけですが、Marekが日本に来てから(脳内麻薬が抜けた後)が本番、私たちの関係は試されることになりました。
自由で好きなように過ごしていた独身生活から、街中の狭苦しい賃貸のマンションでの共同生活がはじまり、はじめの数年は、環境の変化からくるストレスや考え方の違いから、たくさんぶつかりました。
遠距離の時には毎日飽きることなく会話をしていたのが、ほとんど会話がなくなったこともありました。
さらに時が経って、一体どうなってしまったのか!?
えーと、結果、5年前より仲良しになりました。
この5年の間に、設計事務所を立ち上げ、不動産を購入し、住居兼事務所をリノベし、シェアハウスをはじめました。
その過程で現在の仕事仲間に出会い、心温かい友人たちが増え、現在も常に新しい人と出会う刺激がある環境です。
二人だけで向き合うだけでなく、外からの刺激があることもプラスに働いています。振り返ってみれば、楽しいことも大変なことも色々なことを経て、一緒に体験し成長してきたんですね。その積み重ねの結果、現在は親友みたいな感じです。
お互いの自由を尊重して心地の良い距離間を取りながら、日常のささいな楽しみを共有したり、冗談を言い合って笑ったり、良き話し相手になったり、という私たちなりの理想の関係をつくり上げることができています。
「この間、自転車でスーパーに向かう途中で、"今、こうやって日本で生活しているなんて、未だに夢の中にいるみたいだ!" って感じたんだ」という彼。5年も経つのに、脳内麻薬が切れずにそんな風に感じられるなんて、何とも幸せですよね。
幸せとは、どうやって世界を認識するかなんですね。
だって、日本で自転車にのってスーパーに買い物に行くのにそれだけの幸福感に浸れる人だっているんですから。