あなたの見ている世界とはまったく違う
これまでの人生で今が一番幸せだ
先日、散歩中につぶやいたポーランド人のパートナーMarek。そのセリフが私の好奇心をかきたてました。
彼の見ている世界、私の見ている世界、そしてあなたの見ている世界は違う。たとえ同じ場所にいたとしても、人によって見ている世界がまったく違う。
そんな当たり前のことを、もう少し深く掘り下げてみたくなりました。
1.挫折がある人は幸福を感じやすい
ということがある研究から分かっています。
幸せというのは個人の感覚、それも相対的な比較によってもたらされるところが大きい。だから苦痛や障害を乗り越えてきた人は、少しくらいのことだったら「あの時の苦労と比べれば、こんなことくらい大したことない」となる。
そして、当たり前と思えるような日常の小さなことにも感謝できて幸福を感じやすいのかもしれません。
2.ロシア配下のポーランドで生まれる
彼が10歳になるまでのポーランドはロシアの共産党配下にありました。常に物資が不足していて、食料を買うのに列に何時間も並んだり、スーパーの棚が空でなにもないこともよくあったそうです。
父親は炭鉱で働いていました。国から支給されたアパートには炭鉱で働く家族たちが住んでいました。炭鉱で働く男たちは荒く大酒のみで、家庭内暴力は日常茶飯事だったと言います。壁の向こうから女性の悲鳴が聞こえて翌朝近所の奥さんの顔にあざが・・・
そんな環境で育ったんだよ、とポーランド人の彼は言います。
貧しく暴力と隣り合わせの環境で過ごした子供時代。ポーランドという国の歴史は複雑で、周囲の国から取ったり取られたり踏んだり蹴ったりの扱いを受けてきた。国が無くなったことも歴史上2度もある。
自分の国が消滅するって想像できますか?
ポーランドの共産主義が崩壊した1989年の反対運動のパレードには、Marekも両親に連れられて多くの市民と歩いたのを覚えている。そんな歴史や子供の頃の体験がアイデンティティーとして刻印されているMarekは、自国に対して複雑な感情を抱いている。
3.ある日、地球の反対側にある日本という国を知る
1990年代に入り、ロシアの共産党支配下から民主国家へと移行する中で、これまで入ってこなかった物や文化、情報が海外から入ってくるようになりました。
はじめて見た日本映画(黒澤明)。
自分が育った環境や文化や言語人々の考え方や暮らし方、言動が全く違う、地球の反対側にある国に衝撃を受ける。
その異国はいつしか彼の心をがっちりと掴む。
18歳の時、行きつけの釣具屋でダイワ製の釣り竿をはじめて買った感動は、彼の中で熱い想いとなって刻印されている。
That was the happiest moment of my life.
人生で一番幸福な瞬間だった。
ダイワ製の釣り竿!?
4.夢だった日本についにやってきた
20代のはじめにポーランドを出てイギリスに渡り、老人ホームで働きながら奨学金で大学に行きました。イギリスに渡ることも大学に行くことも、親からの援助はなかったので自力で実現しなければなりませんでした。
大学では森林学を専攻し、卒業後はイギリスに留まり森林調査士として働いていました。
16年間イギリスに滞在していましたが、日本という国に行って見たい、そこで暮らしてみたい、という熱く静かな思いは消えることがありませんでした。
長い間思い続けてやっと叶った夢、それが日本での生活だったのです。
今がこれまでの人生で一番幸せだなあ
という彼のつぶやきは、彼のこれまで見てきた世界、そして彼の今見ている世界からつくり出されているですね。
5.波乱万丈の方が人生の幸福度が高くなる
何不自由なく平和な環境で暮らしていると見えないもの、感じることができないことを、波乱万丈な人生を歩んでいる人は手に入れることができる。
自分の手で人生を切り拓いていく中で手に入れたもの。18歳のダイワ製の釣り竿からはじまり、日本にたどり着いた今もダイワ製の釣り竿(10倍くらい数が増えた)を手にしている。
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