No.71 『小澤が芸人になるまでの流れ⑤』
飲食店あるある、自分が入ってから混み出す小澤です
さて広島で過ごして翌日の話です。
慣れない環境ながらぐっすりと寝て起きて、お世話になったオーナーさんに挨拶をしてゲストハウスを出ます。
行き先は九州。まずは博多を目指します。新幹線で。
まだ箱から顔だしたくらいの箱入り息子は新幹線しか移動手段を知りません。一人旅とは思えないくらいすぐ着く目的地。
さあきたぞ、九州博多。さあ、さあ、さあ。
そうです、来たはいいけどやることがありません。この時気づくのですが、一人で街を観光というのはなかなかきついものがある。なぜか。日本から日本で建物の感じがそんなに変わらない。田舎から都会、都会から田舎ならまだしも都会から都会。歩いてる感じ特に新鮮味がないんですね。友達とだったら楽しいけどこちらは独り身の宛先なし。
その結果小澤は博多市内の寺神社を回り出します。博多きてラーメン食べずに寺巡るやつ聞いたことない。
しかし実は調べてみると博多神社、寺が結構密集してあるんです。海が近く古くから貿易の窓口になっていたため、文化的なものが入って来やすかったからだそうです。すみません今調べました。諸説あります。
日本一大きい木造座像の大仏とかあるんですよ博多。
ウロウロ歩いているとある神社にたどり着きます。『櫛田神社』。
のち聞いたら定番スポットらしいのですが、小澤はその時『地元にも似たような神社あるよなあ』と勝手に思っていました。不届きものでございます。
力試しに用いられる、力士くらい強くないと持てない石『力石』、樹齢1000年を超える『櫛田の銀杏(ぎなん)』など様々あるなか、小澤はあるものに興味を惹かれます。
『不老長寿の水』
説明によると飲んだらめっちゃ長生きできるらしい。
ここで思うわけです。めっちゃ長生きしたい。
今は飲めないらしいのですが当時近くにいた巫女さんに聞いたら『そこの柄杓を使ってください、口つけて大丈夫です』と飲むことができました。
いざ。
記憶が曖昧なのですが看板にはルールが書いてあって。『1杯目自分のことを、2杯目家族や友人のことを、3杯目一族のことを思って飲みなさい。』
とのことです。
よしと柄杓いっぱいに溜めた水を口に運びます。まずは自分のことを思ってグッと飲み干します。電池飲んでるみたいな味がします。人が飲むものじゃない、瞬時にそう感じました。長生きどころか生命の危機すら感じるこの水。
しかしここでやめるわけには行かないのです。家族友人一族が俺の不老長寿を待っているのです。この時、みんなのために村人代表で秘境にやって来た若者感満載の小澤は飲むことをやめません。
2杯目、3杯目と電池を飲み干します。
これでみんな長生きじゃ!!!わーいわーい
喜びついでに何気なくもう一回看板をみます。ルールが書いてあります。
『一口は自分のことを』
一杯ではなく一口でした。みんなが単四電池ちびちび飲んでる時に、小澤は単一電池丸呑みしてたのです。愚か者でした。
あの時みた巫女さんの『あいつめっちゃ長生きしたがってるやん。。』的な目線を小澤は忘れることはないでしょう。
日も暮れはじめ、小澤はその日の宿を探しはじめます。