備忘録 22-12-20
人を恃(たの)むは自ら恃むに如かず
――恃人不如自恃也
『韓非子』
人の力をあてにするな、自分の力をたのめ、というのだ。『韓非子』は、こんな話を例にあげている。
むかし、魯の国に魚の大好きな宰相がいた。噂を聞いて、国中の者がわれもわれもと魚を届けてくる。だが、宰相はひとつも受け取ろうとしない。ある者がわけを聞いたところ、こう答えたという。
「いや、なに、好きだからこそ断るのだ。受け取れば、世辞のひとつも言わねばならん。やがては相手のために法を曲げることにもなろうというもの。そんなことをしたら、たちまち免職だ。免職になれば、いくら魚が好物だからといって、だれも届けてくる者はおるまい。自分で買って食うこともできなくなろう。いま、こうして断っていれば、いつでも好きな魚を買って食えるではないか」
この宰相殿のように、「人を恃む」よりも「自らを恃む」ほうが、安全で、まっとうな処世だということは言えるかもしれない。
以上、「中国古典一日一言」(守屋洋)より
今日も一日顔晴りましょう。