備忘録 22-10-19
貪(むさぼ)らざるを以って宝と為す
――以不貪為宝
『左伝』
むかし、宋の国の子罕(しかん)という宰相は、このことばを座右の銘にしていたという。こんな話がある。
ある男が粗玉(あらたま)を入手して子罕に献上しようとした。子罕が断ったところ、男は、
「玉造りの職人に見てもらいましたら、磨けばたいそうな宝石になるとのこと。それであなた様に差し上げようと思いまして」
子罕はこう答えたという。
「我は貪らざるを以って宝と為す。爾(なんじ)は玉を以って宝と為す。もし以って我に与えば、皆、宝を喪(うしな)うなり。若かず人ごとにその宝を有せんには」
後段のくだりを訳せば、そなたが宝としているその玉をわしにくれてしまったのでは、 そなたはせっかくの玉を失い、わしもまた、自分の宝としている「貪らず」を失ってしまう。だから、そなたもわしも、それぞれ自分の宝を大切にしているほうがよいだろう、というのだ。
以上、「中国古典一日一言」(守屋洋)より
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