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運命って何ぞ?『7FATES』のインタビューが良かった

こんにちは!パクチーです。

12月現在プロモーションが行われているBTSの謎の企画『7FATES』。その全貌は未だ明らかになっていないものの、プロモーションの一貫でメンバーそれぞれが同じテーマでインタビューに応える動画というのが上がりました。

短い動画ながらも「運命とは?」「メンバーはどんな存在?」という難しい問いに端的に答えてくれて、とても興味深く、素晴らしかったので、彼らの話していることについてもう少し深く理解していきたいと思いました。

それでは1人ずつ順に見てみたいと思います。

7FATES with BTS | Interview | V

Q.Vが考える運命とは?
かくれんぼをするように、簡単には自分の姿を見せてくれないのが運命だと思います。これが運命なのかと思えば、またなくなって消えてしまったり、またこれをつかんだと思えば、またその分もっと逃げたり、結局はかくれんぼをしながら、僕たちを前進させ続けるのが運命だと思います。

Q.Vにとってメンバーはどんな存在?
この道に入ったばかりの頃は焦る気持ちもあったと思います。そういう瞬間ごとにSOSを出すように呼べる存在がそばにいるメンバーでしたし、その合図に気づいてくれるのがメンバーだと思いますし。だから僕たちはここまで道に迷わずに来られたんだと思います。

7FATES with BTS (방탄소년단) | Interview | V

さて、そもそも「運命」とはなんぞや?というところからして、このもやっとした取り留めのない、曖昧な漠然とした、しかし大きな悠然と立ちはだかるものがある。FATE。運命。宿命。避けられない命題。

日常の生活の中でこの「運命」「命題」が重要な要素を占める割合はそれほど多くはないと思うが、「これが運命だ」と、「これが自分の命題だ」と、だからこれでいい、これを選べば大丈夫、こうすれば解決する、と、魔法の鍵のように何もかもを導いてくれる、運命、自分の運命が何か分かったらいいのに、そんな全てを帳消しにする力を持っている、 そんな期待をしてしまう言葉。

しかし本当にそうだろうか?

Vくんの言葉は、そんな「運命」について、非常に彼らしく、過不足なく、イマジネーション豊かに説明してくれていると思った。絵本のように。謎解きのように。子供から大人にまで通じる言葉で。

Vくんの考えでは、ゴール、目的地があるとする。その道の過程にあって見え隠れしながら自分を前方へ惹き付ける力を「運命」とする。迷いがあり、確信はなくとも、自分を動かす力。

そこに存在はしているが、自分自身にとって明らかでない、はっきりとした実感のないもののような捉え方は、ジミンくんと少し似ている。

7FATES with BTS | Interview | Jimin

Q.JIMINが考える運命とは?
運命は探し出すべきものではないかと思います。運命が決まっていると思えば楽ですが、現実はそうではないので。その世界の中でちゃんとした道を探す時より、道に迷い彷徨う時のほうがもっと多いと思うんです。また、迷ったからといって諦めたら、運命もその力を失ってしまうと思いますし、その代わり、探し出してみせると思えば、迷ったすべての時間も運命になると思っています。

Q.JIMINにとってメンバーはどんな存在?
いくらでも共に道に迷う準備ができている人たちだと思うんですが、その道が怖くないと思えるのは、いつでも笑って泣いて共に歩んでいける、そばにいるこの方たちのおかげだと思います。

7FATES with BTS (방탄소년단) | Interview | Jimin

Vくん、ジミンくんの2人が語る「運命」を、「命題」と置き換えると分かりやすいような気がします。自分が生涯をかけてやり遂げたいことは何だろうか。はっきりと一言で言い表せるようなものに、早い段階で出会う人もいれば、なかなか出会わない人も多いはず。

しかし見つからない人には、見つからないなりに、さまざまなことにトライして、結果人生の後半で見つけたやり甲斐のあるものが、これまでの全ての経験を余すことなく必要とするものだったりする。「命題」が目に見える形になくても、何も諦める必要はない。「迷った全ての時間も運命になる」。

ジミンくんの2つの問いに対する答えは、「迷っても怖がらず、笑って泣いて歩め」、なぜなら「迷い彷徨う時の方がもっと多い」からだ、という力強いメッセージを感じます。そして共に迷い、あるいは迷ったままにしないでいてくれる人たちがメンバーであるというのを、Vくんとジミンくんが共通して持っているのが素敵だなと思いました。Vくんの、SOSの「合図に気づいてくれる」というのも、彼がメンバーをどういう存在だと思って心の中に置いているかが想像できて、胸が温かくなります。

7FATES with BTS | Interview | j-hope

Q.j-hopeが考える運命とは?
運命は悟ることだと思います。日々生きていく上で、自分の運命とは何かを感じたり考えたりすることはほとんどないですよね。でもある決定的な瞬間が訪れたら、その瞬間を本能的に悟るような気がします。そうして人生の重要な瞬間に確認することになるのが運命だと思います。道標のようなものだと言いましょうか。

Q.j-hopeにとってメンバーはどんな存在?
お互いがお互いに簡単に与えられた存在ではないと思います。長い時間お互いを探し続けたので、こういった時間を共に過ごせるんだと思います。僕たちはお互いの鏡です。僕たちはお互いから自分を探します。だから自分を見るようにお互いを見ながら、力を出してまた一歩進んでいるように思います。

7FATES with BTS (방탄소년단) | Interview | j-hope

対してJ-HOPEくんは、どーーーん!と今いる場所に「運命」とでっかく書いてあるのをよく分かっているような印象を持ちます。

彼は「運命」という要素を、答え合わせのように要所要所で「こっちで合っている」と確認する「機能」のように捉えています。例えば彼は、2017年にコールドプレイのスタジアムライブを見に行った。客席で「自分もこういうステージが出来たらいいな」とビジョンを持つ。2021年、コールドプレイと一緒に楽曲を作り、一緒にステージに立つとなった時、あの時客席で生まれた青年の思いが、これ以上ない形で帰結した時、「自分は間違えずにここまで運命に沿ってこれた」という感覚を、「バチッ」とその瞬間、持ったのではないか?「悟る」とは、頭で理解することでなく、感覚として理解することらしい。

「ああ、こちらの方向で合っていたんだ」「ここまでの方向は自分自身の命題に沿っている」「運命が後押ししている」と感じる、道標。この道で合っているよ、というサイン。

J-HOPEくんがメンバーに対して、時間をかけて構築してきた結果の財産であるように表現しているのが、彼ならではの愛おしさの表現に感じられた。他者がリフレクションである、自分を写す、こんなにもタイプの違う他者がいて、そこから分かるのは自分自身だということについて、完全に理解し、その仕組みを肯定して「力を出す」様がすごい。精神性が高すぎる。

7FATES with BTS | Interview | SUGA

Q.SUGAが考える運命とは?
僕は運命は試練ではないかと思います。運命は現状に甘んじることができないようにするような気がします。運命だと確信した瞬間にまた新たな質問を問いかけ、運命じゃないと思ったら、またヒントをくれるじゃないですか。運命は自分自身で正解を作っていく試練だと思います。

Q.SUGAにとってメンバーはどんな存在?
過ぎ去った時間が長いと思えば長く、短いと思えば短いですが、ハイライトだけを集めたら、すべて簡単に成し遂げたように見えるじゃないですか。でも実際に、その時間の裏側を見ると本当に長かったと感じます。人生は試練の連続ですし、お互いについて、自分について絶えず問い返して疑問を抱かせます。そういった不安と疑心を抱く瞬間に、挫けることなく歩かせ続けてくれた人がまさにメンバーたちだと思います。

7FATES with BTS (방탄소년단) | Interview | SUGA

「命題」に沿っている実感があっても、時折、停滞、壁が現れる。八方塞がりのように感じる。「命題」に沿って生きることを諦めれば、こんな苦労しなくてもここから脱せられるのに…とすら思う。あるいはこんなにも壁が打ち崩せないのは、自分が「命題」から逸れているのか?

命題に沿っていると、時折起こる「試練」。

これまでの経験を総動員し、思い込みを捨て、向き合えないまま来た部分と向き合い、壁を乗り越えるまで何度でも試行錯誤しながら自己の中を整理する。その結果、「正解」が作られる。不安と成長痛の中で、周囲のサインを読み解きながら、ヒントを得ながら、新しい「正解」を「作る」。壁を打ち崩した後の自分は、これまでとは違う新しいバージョンの自分になっている。「試練」は厳しいが、大幅なレベルアップをもたらすボーナスステージのようでもある。

最終的に「運命」が自分に必要とするレベルにまで達することのできるように。その全体の仕組みのことを彼は「運命」と感じているのかな、と、わたしは思いました。

「人生は試練の連続」。SUGAくんはこのプロセスを何度も体験し、何度も乗り越えている。その部分に実感を持って「運命」と名前をつけた。自分に、互いに疑問を抱いた時、メンバーとは、挫けることなく自分を歩かせてくれる、励まし、慰め、見守り、寄り添い、認め、愛してくれた人たち、なのだろうな、なんて素敵なんでしょう…。

7FATES with BTS | Interview | RM

Q.RMが考える運命とは?
運命を一度「道」だと考えてみましょう。道を歩く時に、あの高い空だけを見たり、速く走るだけでは道から逸れてしまうじゃないですか。すぐ目の前に置かれた道端の石ころや誰かの足跡を見ながら歩いていくと、その道をうまく進める気がします。そういった意味で、僕たちの一番近くにあるもの、自分で探してこそ見えるもの、それがまさに運命だと思います。

Q.RMにとってメンバーはどんな存在?
これまでの時間を振り返ってみると笑うことも多かったし、大変な時も多かったです。僕たちは大変な時でも、冗談であれ冗談抜きであれ、自分たちで笑いの種を作って絶えず笑いました。笑ったら、また立ち上がって歩いていく力が生まれるんですが、僕たちはお互いにとって、一緒ならどんなことがあっても、それでも笑いあえる友達なんじゃないかと思います。

7FATES with BTS (방탄소년단) | Interview | RM

RMくんの話し方、とても豊かで大好きです。何度でも「運命」について思考を繰り返したことのある人の話に聞こえました。

「運命」は足元にある。遠くの実感のない大きなものを目標に歩いてしまうと、道を見失うよ、と、それはもしかしたら「運命」のもたらす無欠のイメージかもしれません。その時々で見つける、今、現実の自分の目が映しているもの、リアリティのあるもの、見つけて手に取れるもの、「運命」と通じているのはそれらの方だ。

SUGAくんが「運命じゃない」のを判断するのに使う「ヒント」。RMくんが言う「その道をうまく進める」ためのリアリティ。道端の花、歌の歌詞、眼前の人との会話、たまたま目に飛び込んだCM、雑誌のページ、思いついてやってみること、思いついて行ってみること、誰かの残した足跡、作品、感情の記録に、感謝したり、愛おしんだり、ぼーっとしたり、RMくんは、そんな一見脈絡のない点と点、その集合体が運命と呼ばれるものじゃないか、あるいはそういう精神状態が運命を順当に歩むのに適している心持ちなのじゃないかと。

大変な時はある。座り込んでしまう。それでも立ち上がって歩いていく力は、「冗談であれ冗談抜きであれ」、つまり本当には面白く思えなかったとしても、一緒に絶えず笑うことを続けたところにあった。メンバーとは、それをしてきた人たちだ、という。ああ、心の底から、強く、たくましい人たちだと思う。

7FATES with BTS | Interview | Jin

Q.Jinが考える運命とは?
うーん…僕は運命はあると思います。でも定められたものというよりは、選んだことが運命ではないかと思います。結局運命は未知の世界で選んだ最も重要な一つだと思います。数知れない分かれ道の中で、結局自分の選択により探し出した一つの道が運命だと思います。

Q.Jinにとってメンバーはどんな存在?
僕たち7人にはそれぞれの人生があり、それぞれの人生において大切なものがあります。似てる部分があれば異なる部分も確かにあるんじゃないかと思います。それでも最も重要な決断をする際には同じ選択をしてきました。同じ選択をしたというのは結局同じ場所を見ているということなので、ある意味この広く広い世の中で、一番似た者同士がお互いなんだと思います。

7FATES with BTS (방탄소년단) | Interview | Jin

ここまでの5人によって、「運命」という、まるで一本の道のように思えるものの中に、実は迷い道があって、抜け道があって、それが「運命」から抜け出てしまう道なのかも分からなくて、過程には常に不安が寄り添う、小さなサインを見つけ続けるくらいしか確実に進む方法はない、というようなことが語られていました。

ここで突如ふわっとするのがジンくんらしい。

その枠組みが、ばーーーんと取っ払われてしまいました。

つまり、あなたの選んだものが「運命」で、それでいいんだよ、という考えです。あなたとはどこか別のところに、「運命」という既に完成された何物かがあるんじゃないんだよ。一番いいと思うものを選んだんなら、それが「運命」である。逆に言えば「運命」という言葉にそれ以上の意味はないとも取れます。あなたがきちんと選んで、生きて織りなすものは、トータルして「運命」と呼ばれているものを包括している。あるいは「運命」が「人生」を内包しているのだろうか。

「自分の選択により探し出した一つの道」であることが、「運命」から遠ざからないために、ジンくんが教えてくれる、必要な方法であると言えるかも知れません。

メンバーについてのジンくんの答えは、本当にリアリティがあってはっとします。彼はメンバーを、「重要な転換期を一緒に踏み換える人たち」と認識しているんだなということが伺えます。

7FATES with BTS | Interview | Jung Kook

Q.Jung Kookが考える運命とは?
運命は唯一、変えることのできないものだと思います。生活環境や条件はいくらでも変えることができますし、意図したわけではないのに変わることもありますよね。でも絶対に変えられない唯一のものが一つずつあると思います。僕にとっては7人が一緒にいることがそうですし、それがない人生は想像もできないので、それが僕の運命で、その運命に従って走っているように思います。

Q.Jung Kookにとってメンバーはどんな存在?
この世には簡単なことはないと思います。僕たちも途中でくじけたりもしました。僕たちがここまで歩いてこられたのは、お互いに取り合った手のおかげだと思います。もちろん、こういったことを忘れてしまう時もあります。その度に僕たちにとって重要なのは遥か遠くの夜空ではなく、まさに今、この場所で互いの手を取り合う僕たちなんだということを思い出します。

7FATES with BTS (방탄소년단) | Interview | Jung Kook

最後にジョングクくんです。彼の語る「運命」は、他の人たちが語るものと少し性質が違うように感じます。彼は「運命」という漠然としたものについて、何か普遍的なイメージを持つように答える積極性よりも、自分の中の動かし難いかたまりに「運命」と名前をつけたのだ、ということを教えてくれているように聞こえました。

彼が「7人が一緒にいない人生は想像もできない」という時、もしかしたら彼にとって「7人が一緒にいる」ということは、「7人が一緒にアイドルの仕事をする」のとは別の意味があるのかもしれないな、とふと感じました。彼が言語化していない部分において、もしかしたらジョングクくんは7人でいることで初めて自由になる部分があるのかもしれない。あるいは彼がいることで、初めて7人は完全に機能するのかも知れない、と思ったりしました。

BTSのそもそもの始まりは、目標があって組まれたチームだったかもしれない、研究生が入れ替わりながらメンバーが固定していったことで分かるように、会社が設定したあるゴールのために、ジョングクくんの隣にいる人たちはそこにいるのだった。あるいは自分自身の目指す目標のために。

しかしどんなに素晴らしいゴールを描くことも、そこに向かって努力することも、それがどんなに歴史的で価値が高そうに見えたとて、メンバーと手を取り合って今そこで感じることの方が自分にとって現実だ、と「分かっている」ことが、どれだけ豊かで重要なことか。

メンバーたちがゆりかごのように機能しているから、ジョングクくんは「遥か遠くの夜空」に重圧を感じずに済むのかも知れない。メンバーたちはゆりかごを保とうとすることで、自分の中の何か柔らかいものを間接的に守ることが出来ているのかもしれない。その役割を「運命」と表現するならそう言える、と思ったりした。

そしてFATE(運命・命題)とは何なの

「そもそも、運命って何なの」「自分の運命、命題、人生の目的、何のために生まれたのか分かったらいいのに」。ここまで、7人の語る「運命」について、7つの視点から多角的に見ることが出来たことで、「運命」について、その全容がおぼろげに形作られたような感じが、しませんでしたでしょうか。

「自分の命題が知りたい」というのは、わたし自身が、時折、うっすらと、時折強く、思っていたことでした。そしていろいろ考え、感じてみて、今思うのは、

運命を生きるのに、必ずしも自分の運命を知っている必要はない

ということでした。自分の「運命」について、知っていることが重要なのじゃない。何を、「自分が次に起こすこと」の指針にするか、そのアプローチのフィードバックを身の回りの様々なものから、「すすめ」「とまれ」、そのサインを拾えるか。

自分の命題に沿っていると、時に大きな課題にぶち当たります。

これを避けるためにこの道そのものを諦めたら、自分の力も、サポートしてくれた自分以外のものの力も、半減するか極端に弱まる、八方塞がりの苦しい過程。その時起こるこもごも、プラスとマイナス、全て味わい尽くすためにそのイベントは起こることがある。

マイナスの中にもプラスがあるのを見つけられるようになっていくのが、経験の強みのような気がします。彼らの中にも、そんな強さと、半端ない経験値の多さを感じます。

どこまでも追いつかない、まだまだ追いかけていたい人たちです。


それでは、また。
良いお年を!!




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