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Jimin【Set Me Free Pt.2】の振り付けが本当にFreeで脱帽だった件
あはっ、
あはっはっはっははははっっは!!!!!
すいません。あまりに、あんまりに、あまりにもだったので!つい!笑いが!!
「このダンスは凄すぎて、わたしの言語になる感性の範囲を超える」。前回匙を投げたが、ジミンくんのダンスを見て、【Set Me Free Pt.2】、「目がバグる感じ」は、一体何だろう、何なのだろう、もうちょっと、もうちょっと見れば分かるかも…と思ってて…!!
ひとつには、コントラストなのじゃないか。と、わたしは漠然と考えた。
ジミンくんのゆっくりな動き
ジミンくんの素早い動き
群舞とユニゾン
これが入れ子になるので、なんだが残像を見ているみたいな感じ。ジミンくんの印象の輪郭とでもいうのか、が曖昧になる感じ。すごく不思議な、初めて感じる感じだったんだよね。
でも、そんなレベルのことじゃない。
圧倒的なバグ感…。
わたしね、今この曲ピアノで弾いてみようかと思って楽譜に起こしてるんですけど、そうすっと色んなことが分かりまして…。
このダンス、楽譜に書けるわ。そしてものすごく厳密に、音符とシンクロしている。
♯1
序章
ダンサーの人に、「目にも止まらぬ速さの動きを体で表現して下さい」と言うと、いくつかのパターンのうちの一つに、「ものすごくゆっくりな動きの間に、急に素早い動きを差し込ませる」がある。
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これ出だしですけど。ここ、冒頭から「…な、なんだこれぇ…!!」だったじゃん。
これ、何故かというと、音のないところにダンスのきっかけがあるので、まずここからして、拍感が一瞬消えかける。動きのインパクトと合わせて、ここからして、すでに、すっかり飲まれてしまう。この異世界に。この異世界の片隅に。
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イントロ。群舞がとても分かりやすい4カウントで進行しています。が、ジミンくんは4倍の長さでひとつのモーションを取っています。
このイントロの8小節は、ジミンくんだけが重たい水の中を歩いているようなムード。これ…ゆっくり動きながら、全身がどこも止まってないって、確かすごく難しい動きですよねえ…。
うねうねの中に包まれていたジミンくんが目覚めると、群舞は元気に活動中である。と、そんなシーン。
まあ、ここまでは良いのですよ。厳密に言うと小さな「…?!」が入るのですけど、まあ良いです。
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ここから歌が始まります。歌が始まるタイミングで、突如ユニゾンになります。フロントにジミンくん、控えに群舞が密集して壁のようになってるので、レリーフに埋め込まれてるような、何とも言えない不気味さ、圧がありますね。衣装の色が同じであること、手の出ている分量が同じであることで、この効果はよりインパクトを増している気がします。
さて。ここからがパクチー独自の理論です。
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ここでこういう図を出すと、喜ぶ人と嫌がる人がいるので、こういうアプローチが嫌いな人はごめんなさいなんですけど…。
「4ビート」は、4カウントでひとまとまり、「1小節」と数えます。最初のジミンくんのゆっくりした動きは、「4カウント」で「1歩」。つまり、全音符(1小節丸々伸ばす)で一つの動きをしていることになります。その時の群舞の「えいっえいっ」という動きは、基本的には「4分音符」です。
これが、歌の始まりでユニゾンになると、全員が「16分音符」の細かさで振りが入ります。
ジミンくんは、全音符単位から16分音符単位へ。
1倍から16倍の速さへ。
いきなり転換することになります。「16」って数字にするとすごいですね…!
このシーンの「えっ、お、おわぁ…なに!?」ってのは、この「16倍」というドラスティックチェンジだったんですね。とてもゆっくりな動きから、急に早い動きになる。群舞が最初に、はっきりした4分音符を全身で刻むことで、その後にする早い動きとのコントラストが際立つ。かつ全員が一緒の動きであることで、さらに効果が強まる。と、そういうことだったのではないかと。
この「緩と急のコントラスト」は、その後いろんな箇所に現れます。
#2
ユニゾンとユニゾンとアンサンブル
この「壁」のシークエンス、後半の4小節。ここもわたしはなかなか心臓がざわわっとしたんですけど。
なんで、なんでなん。この「ざわわ」はなぜ!?
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また図を用意しました。ごめんなあ…いつも分かりやすい話を書きたいと思ってるのに、どうしてかいつも小難しくなってしまう…わたしは、こういう風に考えるのが、好き!なんだ!!
一段目の薄いオレンジひとマスが「4分音符(=1カウント)」です。歌の「I never stop」のところは、このようなリズムです。3連音符が入った細かい音のまとまりと、「ぴー」と「りー」で韻を踏む長い音。それが2セット。
ふつーは、カウントしようとすると、
4・4・4・4
で数えます。
しかしこの部分では、歌のリズム構成に合わせて、ダンスのカウント、「4×4」の計16拍の内訳が、
1・5・3・5・2
と、大分複雑なことになっている…!しかし、複雑ではあるが、それは理由なく複雑なのではなく、メロディラインの音楽的な構成に、なんと、合っている。
ちなみに伴奏ははっきりと「4・4・4・4」で進行しています。音楽的には普通に違和感なく聞こえる、「ふつー」の自然な進行です。
ここで、「メロディーの構成とダンスのカウントを合わせる」ことで、ジミンくんと群舞がユニゾンになるタイミングが、薄いグレーで縦線を入れている「4」の区切りと、全然関係のないところにきています。何かがすっごくズレたまま進行しているような、でも何が違和感か分からない…その原因はここにあった。「ざわわ」の原因はこれだ。
ジミンくんが踊る、ボーカルとのユニゾン。
ジミンくんと群舞のユニゾン。
伴奏の拍感と、ダンスのカウントが作るアンサンブル。
音楽のスコアにもう一本ずつ、「ジミン」と「群舞」の段が存在しているかのようです。この「ジミン」と「群舞」と楽曲が、一致したり、一致させずにアンサンブルさせることで、目に見える情報と、聞こえてくる音楽が複合している。視覚と聴覚と、緻密に連動して構成された作品を形作っている…。
だが…
トリッキーなカウントは、ここだけに留まらない…!!
#3
this is tricky…
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みんな大好き「迷路」のところだと思うんですけど。
ここでも「…?!あれ、今…」と、一瞬すぎて自分の感覚がおかしいのかと思う。ここ、
群舞が、「あーえーあーえー」の韻のコーラスとユニゾンで腕を上に上げています。3回あります。1回目と2回目は「あーえーあーえー」の「あ」で上げいるのですが、3回目は「えー」で上げてるんですよ。
……………なぜッ!!!!!!
そのため、ここの迷路のシークエンスは、このようなカウントのまとまりで振り付けが構成されていると考えることが出来ます。
「ふつー」は、
4・4・4・4|4・4・4・4 (=計32拍)ですが、
迷路の部分では、
4・4・4・5・7・6・2 (=計32拍)
と、いう内訳になっているのです(ボーカルのフレーズに合っている)。興味のある人は数えてみよう!すっきりするはずだ!
実はわたしが小さな「…?!」があると書いたイントロ、ここでも4のサイクルが一瞬ずれるタイミングがあるのです。
…そんでね。でもね。
本丸はこっちなの。
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中間、サビのクライマックス、「Set me free」のリフレインと、「おえおっおえおっ、おえおっおっおっ」の合唱が入る部分です。すごくパワフルで胸に迫るシークエンスです。
ここの群舞のカウントは
7・7・2・6・2・5・3
になっています。
見たことない、見たことないよこんなの、む、無茶苦茶トリッキーだな…!!!
一般的に、「4・4・4・4」の4つのまとまりの1拍目は、「強拍」と言って、一番アクセントを感じる音です。しかし、このダンスは強拍からずれにずれまくったところにダンスのアクセントが入るんですよ。この強拍の感じが、後ろに引き伸ばされる感じに、大きな緊張感、緊迫感が生じるのだと思います。(注:ただし、今更ですけど、拍の感じ方は人によって違うので、別の人が数えたら、違う内分けになることは全然あると思います。あと、ダンスの人たちが全然違うカウントの仕方で練習しているってことも、全然あると思うんですけど…「これが正しいカウントだ」という話ではなくて、「こういうカウントだと考えると、わたしは振り付けの意味が分かった」ということです。よろしくお願いします。)
であるのに。この振り付け。複雑に見えて、実は、
ボーカルの「Set me free」とのユニゾン。
コーラスの「おえおっおえおっ」とのユニゾン。
ブラスの「バッ・・・ババーっ」とのユニゾン。
ベースの「どどどど」の細かい刻みとのユニゾン。
で出来ている。
この曲の「コーラス」「ブラス」「ベース」は、特徴的なリズムで、この楽曲中、何度も出てきます。振り付けにもはっきり入っていて、一度気づくと、とても分かりやすいと思います。そもそも、音楽の構成は決して複雑ではありません。むしろすごくシンプルと言っていい。
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サビ部分で繰り返される「コーラス」「ブラス」「ベース」は、それぞれこのようなパターンで繰り返しています。
ダンスが「コーラス」「ブラス」「ベース」とユニゾンする時、こっちとったり、そっちとったり、入れこれで複雑に食いつなぎながら、7拍なら7拍の、6拍なら6拍のシークエンスを作っている。複雑に見えながらも、迫力のある一体感があるのはそのためです。サビの群舞は、コーラスの「おえおっ」と、ベースの終わり部分「8分音符×4」「どどどど」の組み合わせで出来ています。
まあ…これらのフレーズは全部がシンコペーション(フレーズの始まりが1小節の中の途中から始まる)で繰り返されてるので、楽譜にしたとて分かりにくいのは分かりにくいんですけど。
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そして、ジミンくんは、自分のボーカルをなぞってゆっくり動きます。この長いモーション。力で引き伸ばしたような、圧のかかった動き。ものすごく訴えるものがあるシーン。そのジミンくんと群舞のコントラストが、美しいアンサンブルのようになっています。
と、このように、
音楽の拍感とずれたところに、ダンスの振りの起点がある。
聞こえてくる音と厳密に一致している。
音楽と群舞とジミンくんが、緻密にアンサンブルを作っている。
すごいな〜…これ…。文字にすると「ああそう」。「分からん」。ですが、本当にすごいことですよ!Free…!自在…!パクチー、これに気付いて、思わず大笑いしました…!これ、「4」じゃない。「4」じゃないどころか「5」、「7」…!!!!!ポップスに、奇数は本当に滅多に出てきません。超!レア!これがもう、自在に、あちこちに使われまくってる。
複雑ながらも精巧なコレオの、重厚でパワフルで、「い、いったい何が起きてるんだ・・・」と、一見して分からないながらも圧倒させる、
その要素は、緻密に配された、これらだったんじゃないかと。
#5
群舞は何を表現しているか
と、このようにカウントを追ってみると、まあなんとすっきりすることでしょう。わたしだけですか?わたしだけでしょうかね。これで何が起きているか、あんなに分からなかったことが、だいぶ分かってきました。
そこで、また改めてこのダンスを、楽曲を見てみると、
まあ…
ああ…
すごいな…
歌詞の言葉を土台にして、ダンスがその100倍くらいのことを語っている…。
ここから先は「こう見えた〜」というパクチーの個人的な感想なので、皆さんもいろいろそれぞれ感じていることを大切にして下さいませ。わたし、つい言い切る癖があるので主張が強く聞こえちゃうと思うんですけど。実際のところはどうだっていいんです。正解がないから楽しいんです。ロールシャッハテストみたいなもんで。
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イントロ。とにかく重い足取りが、比重の重い水の底を歩いているような、彼だけがたった一人、ヘビーでダークです。
すると、冒頭の蠢いているもの、
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これ自体が独自の生き物みたいで、この生き物がざわめいたり、叫んだりしたりしている。ジミンくんは、この重たい生き物を常にまとわりつかせて、その重さを感じながら生きているのか…?これは、ジミンくんにまとわりついている重たい生き物との対比のものがたりなのか…?
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歌の始まり。ジミンくんの感情をミラーリングしたり、波紋のように影響させたり、振り切ろうとしてもそこに存在する、なにものかたち。ジミンくんに影響を受けて形を変える。これはジミンくんが振り切りたい恐れや不安。潜在的な、名前のつかないジミンくんの部分なのではないか?
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潜在的な恐れや不安は、ジミンくんの思考を、内臓の繊毛のように、少しずつ少しずつ、出口のない方へ送っていく。やがて行き詰まるところまで。
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追い詰められたところで、ジミンくんは迷路を蹴散らします。不安を追い払う。一瞬自由になったように見えます。蝶を自由に。ジミンくん演じるジミンくんは、蝶を、自由に(set me free)するためにそこにいるんだな…。蝶を閉じ込めている、恐れ、不安、無意識、思考する檻。蝶を檻から救い出すのは、このジミンくんの役割なのか…。
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漠然とした不安を押しのけた時、立ち現れてくるのは「自分」だ。結局、最終的に自分を攻撃するのは自分だ…。無意識レベルでもやもやしている存在とは別に、明確に自分を貶す者。
この「自分」に、ぐっと地に押し付けられる。
それでも立ち上がらなくちゃならない。
それでも体を上に向かって伸ばさなくちゃならない。
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散らしたように見えたもやもやは、じわじわと迫って、気づけばふたたびジミンくんを取り囲んでいる。それでも力一杯声をあげようとし続けなくてはならない。
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隙を見つけて抜け出す。必死だ。めいいっぱいだ。渾身でこのまとわりついているものから、足掻こうとする。
ジミンくんの表情を見ていると、これがどれだけ真摯な戦いかが伝わってくる。本当に胸が、辛くなる。
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抜け出した、と、束の間思うのに、追いつかれている。
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そして捕まって、中へ。もやもやはジミンくんを取り込んで離さない。
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ここ、ブリッジって言うんですかね。ジミンくんが、影との対話を、対話の仕方を、覚えていっているように見えるシーンです。…わたし、「恐れ」「不安」って言ったり、「もやもや」って言ったり、「自分」って言ったり、「影」って言ったりしてますが、いいんです。イメージを固定しないほうがいいんです。
ここ、だんだん従えていくんですよ、影を…。
パワフルな振りは、攻撃的な内容の歌詞のリズムと、ほぼ完全一致しています。影と遊ぶ。影と戯れる。影に憩う。こいつらは一部なんですよ…。
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完全に囲まれているジミンくん。囲まれていながら、このジミンくんはラフなんです。動きから重さが抜けて、楽なんです。囲まれていることを楽しんでいる風すらある。ヤケな感じもある。
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ジミンくんをコピーするのが4人。
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ジミンくんの動きをトレースするのが8人…。だんだん従えていく…。
やがてすべてがコントロールされ、一瞬蝶が、再び開放されたかに見えます。
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その直後、立ち上がってくるのは、さっきより高い壁です。さっきより多い視点。より高く、強固に、自分を阻む自分。
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しかし明らかに違う。ここでジミンくんは、全部の自分を見回して正体している…。見据えて、全部を認識している。
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「狂わないために狂おうとするんだ」。ここの振り付け、わたし好きです。ここも、言葉のリズムと振りのタイミングがぴったり一致しています。「重要なことを言っている」ということを、身体で表しているように見える。
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ここで手を下に押さえつける動作で、群舞の頭ががくっと押さえつけられたようになります。
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そこから、拳を引っ張り上げ、全てが拳を上げ、全ての自分を従えて、群舞が、ジミンくんをバックアップする振りに変わる。
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美しく、秩序だって構成された構造。「そこにあるんだけど、コントロールしている」という状態に見えます。すごいパワー、飲まれてしまうくらいの。だけど、影について彼はもう理解している。
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ここ、圧巻です。ジミンくんがコーラスを、つぶやきのような「Set me free」を口ずさんでいるのも印象的です。彼の願望。彼の欲。彼の希望。彼の希求。Set me free。
というかそもそも、この360度円形で見せる構成も、すっばらしいですね…!カメラワークの動きでさらに躍動感というか、勢いをなまなましく感じます。
このパワフルな振り付け、「ジミン万歳ジミン万歳」、に見えます。影たちはジミンくんにパワーを与えているように見えます。が、重要なのは、ここでジミンくんは、ここでも囲まれていて、影から自由になっているわけではないということです。
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だから、こうなんですよ…!やっぱり捕われるんですよ、足元から、逃げられないくらいに隙間なく…!!!!
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すっかり覆われて、埋もれて、見えない…!!!!!
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浮き上がってくるのは、力の抜けた、何か一点だけに触れようとするジミンくん。
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そんなジミンくんを、なおももやもやが執着してくる。やがてすっかり力の抜けるジミンくん。ここで、彼は何かを捨て、代わりに何かが残る。そういう描写だと思う。
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気づくと、もやもやは皆、地に伏しています。ここは大変な、ドラスティックな転換です。この一瞬で何が起きたのか。もやもやは死ぬ。押さえつけるのでも、従えるのでも、翻弄されるのでも、パワーに変えるのでもなく、存在が消える。
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そう、だから、これは、違うステージにいる、違う段階のジミンくんに、生まれ変わっている。何かを捨て、ジミンくんは別のジミンにシフトした。そのジミンくんは、もやもやを自分の問題として持っていない。このジミンくんは、もやもやが存在しないジミンくん。
「Set Me Free」。
別の次元に自分を、ついに、置いた。今までの次元から、解放した。
「生まれ変わる?パクチーさん、そんな大袈裟な」。
…いや。これ、わたしスクショ貼るごとに解説書いてるけど、文末に全部(泣)入ってるから。読みづらいから書いてないだけで、毎文泣いてるから。例えて書くなら、Ver.2、Ver.2.1、Ver.2.5、Ver.2.8…ときて、Ver.3のリリース(解放)だから。
このダンスの何がすごいかって、テクニックがどうとか、もはやわたしは分かんないです。そういうアプローチ(自分が素人ながら)好きだけど、これ、彼に関しては、内面とダンスのシンクロ率が振り切れてるので、言語と塊のようにして、まるごと表現が入ってくる。すっごい苦しい、すっごい辛い、すっごい怒り、すっごい混乱、すっごい絶望、すっごい信念、すっごい情熱、すっごい許し。感情がテクニックを超えている。感情が、全部そのまま入ってきて、わたしは、
すごく感情が、いっぱいいっぱいに。
すごく感情が、乱される。
すごく感情が、満たされる。
群舞は、一体何を表現しているのか。
わたしは、ダンスが複雑なカウントで進行していることに気がついたところから、そんな視点で群舞を見ていると、ある気付きがあった。
群舞には、ペルソナがない。
ジミンくんが内面の感情をあらわにしているのとは別に、バックダンサーは、個々人の動きが感情が動機になっていない。すべてが「型」のようで、ジミンくんを動機にして、彼を反映して動いているように見える。
これは「ペルソナのないジミン」くんを表現しているのではないか。
内側で、誰にも他人に接することのない、誰も見ていない、ジミンくんの中にいる存在。
アーティストとして、アイドルとして、スポットライトを浴びて立ち続ける、それにまつわってはっきりと存在する自我の部分、人と接して作られていく「主人格」。
その下の階層で、存在している、名前のつかない「ジミン」。
それがあれだけ強く、あれだけ大きく、あれだけざわめき、あれだけ強固に、あれだけ密に、あれだけ屈強に、ジミンくんの中に生きている。
時に、檻のように機能する。
…檻は、しかし、保護でもあるんです。現状を保持する。学習を通して生まれた、痛みから彼を守るための機能。無意識に。
そう思って見ると、本当に、全ての構成が見事なんです。実によく分かるんです。何を描いているのか、群舞が何を表現しているのか、映画のように、ドラマチックに、細部にまで情報が書き込まれて、ドキュメンタリーのようなのです。「なんで、こんな、こんなすごいことが、表現が可能なんだ…?」というくらいに。
ということで。
このMVのダンスについてのお話を終わります。
今回、女性ダンサーと男性ダンサーの混合チームでしたが、「女性が女性的な振りをあてがわれていない」というのが、大きな特徴だったよね。振りに性差がなかった。同じ振りだった。
このバックダンサーがすべて男性だったら。
全く違う印象になったと思います。マッスルマッスル!みたいな印象になったと思います。女性らしさをアピールせずとも、女性が入ることで、単純に女性が画の中に存在するだけで、すごく自然な、柔らかさ、豊かさが生じるんだな、と思いました。中和。複雑さ。そういう女性の持つ要素。
逆に女性のみでも、また全然違った感じになると思いますが…。
要は、「どちらも自然に混ざっていることが、豊かで素晴らしかった」ってことです。
メイキングも素晴らしかったね…。ダンサーさんといるジミンくんって、なんだかとても自然体だね。集合写真も、すごくすてきな写真だと思う。
それでは、また!