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東京書店巡りで感じたこと。

永らく日本では個人が新刊書店を営むのはありえない、といわれてきた。それはずっと街の書店を中心に新刊書店の廃業が相次いでいたからだ。
それはおよそ20年ほど続いてきた。
原因にブックオフなどの新古書店が進出してきたこと、図書館が充実してきたこと、売場面積500坪以上の大手メガストアの拡大、そしてAmazonを筆頭としたネット書店の攻勢。
掘り下げると携帯電話の普及、ゲーム機の進化、スマホなどが日常に必須とされ、時間とおカネを奪われてしまったことなど。
ライフスタイルは旧世紀と新世紀で大きく変わったことが考えられている。

ところが絶滅危惧種と思われた街の本屋がここ5〜6年で増えている。店主はおもに30代〜40代と比較的若い。しかしながらほとんどが古書販売だ。

こんな状況にもかかわらず、ずっと変わらないのが出版流通のしくみ。
「定価販売厳守」(再販制度)、「返品可能な委託販売」(一部買取条件あり〈業界では買切という〉の出版社もある)を信条とする、二大取次中心の総合取次が取り仕切る出版流通は、今もさまざまな制約だらけだ。20年ほどマイナス状態が続いているのにもかかわらず、だ。
ボクも長年業界にいたので、もちろん個人が新刊書店を営むのは自殺行為と思っていた。今回見てきたのはいずれも個人が営む新刊書店だ。話をきくと、「大手取次は個人を相手にしないので、『こどもの文化普及協会』『トランスビュー』『八木書店』などの取次会社を利用している。あと一部の商品は直取引」とのこと。
これらの業者は新進の取次会社というか出版流通会社である。これまで出版流通を担ってきた「大手・中堅・中小・零細出版社」→「総合取次」→「新刊書店」のモデルが常識とされてきたが、それはもう崩れつつある。
おそらく東京というメガシティだからかもしれない。本屋がひしめく街はいたるところにある。民度の高い土地だらけのようにも感じる。
独立書店の特徴は、トークイベントや、SNSなどで積極的に発信していること。さらには自分たちで出版物を発行したりしている。品揃えは店主オススメの本や、読書好きが頷く本がほとんどで、自由さが感じられる。
店主たちはポジティブでホントに楽しそうだ。
本屋繋がりというコミュニティの架け橋になり、本好き・本屋好きがひとつのインディーズ文化を作り出すのだ。
これらはこれまで大手書店や地域チェーン店がまったくしなかったことだ。
ここに隙間があったのだ。
今回の発見はありえない立地に独立「新刊」書店が増えつつあるということ。これまで街の書店に行ってきた取次主導の「金太郎飴書店」と揶揄される標準的な品揃えではおそらく無理でしょう。
リアルに本が好きな店主が選書するからできることだ。
裏を返せば「こんな本が売れてるわ〜」程度のリテラシーしか持たない人が出版流通に携わってきたから今の衰退を招いたともいえましょう。


独立新刊書店開業の流れが東京以外の地域に広がれば、日本の出版・書店「文化」が「産業」として復興するかもしれませんね。



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