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涙と愛、欲が止まらない

最近、「青野くんに触りたいから死にたい」という漫画を読んでから私のツイートがうるさくなってきた。誰かに何を言われたわけじゃないけど流石にくどいのでどこかブアッとこの気持ちを吐ける場所がないかな、と探していたらこのサイトに辿りついたのでちょっと吐き出させてほしい。今回はこの作品のテーマについて。

私はとてつもなく心を動かされた作品に出会ったとき、友人に感動を分かち合いたくて勧めてみるけれど、「読みたい!」と思わせる語彙力も表現力も乏しいといつも思う。だからこれを漫画を知らない状態で読んでいるのならまず無料分、このリンク先で読むことをお勧めする。何も知らない未来の読者かもしれないあなたの心を動かすような紹介を私はできない…!ただ、そんなあなたに言いたいことがある。
これはギャグ漫画じゃないから気を付けて!

興味本位で一巻を読んだ人の感想を少し調べてみた。すると「ラブコメかと思った」「ギャグ漫画だと…思う。ギャグマンガ日和と絵が似てるし」なんて感想が見えた。
正直、衝撃を受けた。無料分のシーンなので言ってしまうが、私自身は青野くんが枕と重なって優里ちゃんと抱き合っているときの「わたしの匂いだ!」という優里ちゃんの言葉から「これは只者じゃねえ…!」と身構えたから。
その後、幽霊と人間という立場をうまく利用?してふたりは幸せそうに生活する。ベッドシーンがある映画を見ながら優里ちゃんは「これはいい雰囲気になってしまうのでは」なんて思う。触れないのに。そんな中で青野くんは豹変して、優里ちゃんに体の中に入る許可を宣言させる。どう考えても普通じゃない。でもこれをギャグだと思って読んでいたのならそういう見方もあるのか…と面白い発見ができた。人の感性は様々だ。



※この先はネタバレを含みます※


愛は間違えること

いろんな人の感想を読んでみたが、私が抱いた感想は純愛漫画。それも、恋心を知っている人間ほど深く、深く刺さるような、痛い愛を描いている。最初、この漫画の終着点は、悪霊になりかけて優里ちゃんを殺そうとしている青野くんが成仏して、優里ちゃんがひとりで歩き始めることだと思っていた。いずれそれを選ばなくてはならないときが来る。それが正しい選択なのだろう。でも、ふたりは間違え続けているのだ。

事故で藤本くんに憑依した時、キスをするべきではなかった。人の身体なんだから。でも止まらなかった。
藤本くんに憑依した青野くんと行為しようとするべきではなかった。何故ならおそらくそれがトリガーとなって藤本くんは優里ちゃんに恋心を募らせている。優里ちゃんと青野くんは藤本くんに罪悪感を抱きながら、それでも気持ちは止まらなかった。
四つ首様編のとき、夢の中で優里ちゃんはすぐに「お腹がすいた青野くんに食べられる」と正常な理性が働いている時に相談して逃げるべきだった。だって痛かったんだから。だって青野くんは辛い思いをするんだから。でも止まらなかった。一緒にいたいから。
etcetc…

結局ふたりはお互いの為に苦しみながらも間違えることを止められない。それが恋だから。もう既に何度も間違えて後悔を続けている優里ちゃんは青野くんに「ぐちゃぐちゃになって間違えて」と言ってしまっている。青野くんも「すでにそう」と肯定している。私はこのシーンを見て確信してしまった。「ああ、ふたりはどこまでも間違えて、愛を突き進んでいくんだ」と。

こう見るとこの作品は間違えることを愛だと表現しているような気がする。
後悔もするし、次はしない!と考えながらも次に選択する瞬間は理性で抑えられない想いが爆発している。だからこの作品のタイトルは「青野くんに触りたいから死にたい」なのだ。分かっていても止められない。彼女は青野くんに触れるなら死にたいと思い続けるだろう。


純愛と性描写

この作品には性描写がちらほら挟まれる。一話の台詞から察するにふたりは、青野くんが生きていた頃はまだハグもしていなかった。でも憑依して優里ちゃんに触れられることに気づいた時、優里ちゃんが藤本くんの身体なのに青野くんに気づいた時、彼はキスして押し倒した。舌までいれて、藤本くん曰くおっぱいの下を触っていたらしい。その瞬間を描いたものにはキスしたくらいしか分からなかったのだが、こんな事を純愛漫画でちゃんと後のシーンで解説されている。初見は「えろ!思春期男子!えろい!」といいねボタンを連打していたが、今になってみればその説明は必要か?と疑問に思った。
その答えにはっきりと気づくのは、夢の中で同棲しているふたりがいちゃいちゃしながら涙を流すシーン。性行為の直前みたいな生々しい会話と描写に私も涙が流れた。言っておくとエロ漫画で涙を流したことは殆どない。
この下手すればエロ漫画の導入と間違われそうな入浴前に女の子の服を脱がして胸を触るシーンはただのエロ要素じゃない。何故なら作品のタイトルには青野くんに触りたいと、優里ちゃんの願いが切実に表れていた。きっと今となっては青野くんも同じ気持ちで、話が進むごとにお互いその欲求を膨らませていた。
純愛といえば手を繋ぐくらいでいっぱいいっぱいなイメージだが、ふたりにはそんな余裕もない。触れられるならどこまでも、繋がれるなら誰の身体でもやりかねない。そんな危うい性の欲求をまっすぐに描いている。
私はFateの間桐桜と衛宮士郎を連想した。士郎は他ふたりのヒロインと違ってすぐに桜と深く繋がって愛を確かめ合っていた。(原作は分からないから違ったらごめんなさい)誠実で汚れたことが嫌いそうな士郎が?と一瞬びっくりしたが、でもこの二人ならと納得した。士郎と桜も、青野くんと優里ちゃんも間違えていることを自覚しているから。
話が若干逸れたが、純愛というテーマを描くにあたって性描写は必須なんだ、と青野くん達を見て気がついたのだ。相手の為といいながらお互いの気持ちを止められないし、どこまでも繋がりたい。そんな危うさとまっすぐどこまでも育ち続ける恋心に、読者もふたりに共感して、涙を流して恋をする。


涙と愛、欲が止まらない

触りたいのにどこまでも触れないし、ずっと一緒にいたいけどふたりは違う下敷きにいる。いずれ離れないといけないことは分かっていてもきっとふたりは間違え続ける。触れる手段があるならそれを選んでしまうのが青野くんと優里ちゃんだろう。
私としてはこのふたりがこれからも間違うのを見たいし、間違った結果誰かが不幸になっても二人が幸せならどこかで安心してしまう自信がある。それでもいい。いいよ。そう思わせてくれる作品。
願わくばいつまでも一緒にいられますように。


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