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【考察】小説 夢の雫と星の花~YOASOBI 「あの夢をなぞって」歌詞の意味とは?~

この記事はネタバレです。小説 夢の雫と星の花を既に読んだ後で読むことをお勧めします。と、同時に私自身が一章づつ考察していくために使います!引用はフラグかな?と思う部分もしていきます。また、単純にYOASOBIの『あの夢をなぞって』が好きな人も楽しめる内容になっています。まだ聞いたことない人、聞いてみて!本当にハマってしまうくらい名曲です。


ちなみに、曲を聴きながら読むとより楽しめます。(ポチっと押してから読むとより面白いかも?)


この曲はある小説をもとにして作られています。それがこの小説。

【プロローグ】

主人公の双見楓が花火大会で一宮亮という男の子に告白される夢を見ます。

私は子どもの頃から予知夢を見ることができた。双見家の女性はみな様々な形で未来を予知できるらしい。私は夢を見るという形で未来を予知することができた。
私は彼のことが好きだ。でもそれを隠したくて、皆の前では少しきつく当たってしまっていた。そんな彼が私のことを好きだったなんて

彼女は彼のことが好き。そんな彼に告白されることが予知夢に表れて、彼女は照れや嬉しさで頬を赤らめます。

【第一章】

未来予知にはひとつ欠点がある。予知した通りの未来にならなければ、予知能力を失ってしまうということだ。これは祖母から聞いた話だった。祖母も未来予知ができた。祖母は予知夢という形ではなく、1分先の未来が脳裏に浮かぶというものだったらしい。

代々予知夢を見ることができる家系に生まれた彼女は祖母から「予備夢が現実にならなければ、予知能力を失ってしまう」と聞かされます。

「予知したことは変えることができる。ただし一回だけ。変えてしまえば予知の能力を失ってしまうからね。その一回は大切な人を助けるために使いなさい」と。
小学生の時に川に落ちそうになった私の手を掴んで助けてくれたことがあった。今みたいに。それが彼を好きになったきっかけだった。

小学校の時に、彼女は彼を好きになります。

そして花火大会当日。この彼女の語りがこの物語への壮大なフリになっています。

もしこのまま(彼からの告白がなく)花火が終わってしまえば、私は予知能力を失ってしまう。そして、将来大切な人を助けられないかもしれない。そう思うと夏の暑さの中でも背筋がゾクリとした。
もうそろそろ最後の四尺玉が上がる時間だろう。その時に気が付いた。もし彼に告白されなければ、私は予知能力を失うだけじゃなく、彼と付き合うこともないのだと。そんなのは嫌だ。私は彼のことが大好きなんだ。

一章はここで終わります。さて、彼女が取った行動は?ラストは?

【第二章】

16歳の夏。7月27日。音見川の花火大会。街を見下ろす風撫で丘。1発の大きな花火が光のカーテンのように目の前いっぱいに広がっている。隣には君がいる。君の声が聞こえた。

「好き」

 俺は君に告白される。

これは6歳の時に男の子(一宮君)がいた夢。そう、男の子も予知能力があった。

昔は1000年も先の予知をした人もいると祖父には聞かされたことがあった。

※これは後に再掲します。(多分)

そこから先は、小学校の時に亮が楓を台風の中助けるシーンの描写があります。亮は予知夢で楓を助けるシーンがやってきたと思い、楓を追います。

頭の中はこの子を守らないといけないという正義感に溢れていた。

楓は台風の中、花の入った瓶を取ろうとして川に飲み込まれそうになります。さっと手を差し伸べる亮。

楓が指さした場所にあったのは、瓶だった。木の枝にひっかかかってクルクルと回転している。中にはピンクの花が入っているようだった。
瓶の所々に土が付いているものの中に入っていた薄いピンクの花は萎れることなく5枚の花びらをいっぱいに広げていた。

【第三章】

高校生になった授業中、亮はまた予知夢を見ます。

 7月27日、音見川の花火大会。街を見下ろす風撫で丘。楓と一緒に空を見上げる俺がいる。でも四尺玉が上がった時、告白したのは俺だった。
場面が切り替わる。知らない部屋で楓が眠っている。楓はベッドの上で目を覚ますと部屋の入り口近くの壁に掛けられていたカレンダーに目を向けた。そして、仰向きに戻ると「2週間後」と言った。

同時に二つの予知夢を見るわけです。

6歳の時にした予知とは違い俺が楓に告白していたこと。これはおかしい。同じ四尺玉が上がる場面で、楓が告白する予知と俺が告白する予知。これら二つの予知が存在するなんておかしい。

それからおかしいことがもう一つ。どうして楓が目を覚ます場面を予知したのか。告白の場面と楓が目を覚ます場面に関連があるとしたら、今見たのは楓が俺に告白される夢を見るという予知だったのではないだろうか。

自分が予知をできるから考えてしまうのだろうか。もしかして楓も予知ができるのではないだろうかと。

楓が『亮が私に告白する』という夢を見るシーンを予知したのでは?と亮は思います。(ややこしいですが、プロローグで楓が予知夢を見た時のことを過去の亮は既に予知していたということ)

父親に予知のことを相談する亮。

双見家はもともと巫女の家系なんだよ。うちと違ってもう神社は無くなってしまっているんだけど、そういう家系だから有り得る話だな。
音見川の花火大会は何十年も前から毎年開催されている伝統ある花火大会で、うちの先祖の神主がこの町の発展と霊を鎮めるために始めたのがきっかけだったらしい。

亮は自分が見た予知夢(亮が告白する夢、楓が告白する夢)を現実にするために、花火大会で二つの大玉を上げられないか祖父に相談します。一旦は頓挫するも、あきらめずに花火師に会いに行きます。

一宮という名前を出すとすんなり会ってくれることになった。

【第四章】

花火師に会うと、なんて花火師はどうやら亮が来ることを知っているようだった。

「何か理由があるようですが、お話いただけますか?」
「予知をしたとか?」
「鈴木家は昔、双見家の巫女に仕えていた一族なんですよ。だから一宮家の方の予知のことも伝え聞いています」
今から約1000年前のことです。この地域には二つの神社がありました。一つは一宮家の一宮神社。そして、もう一つが双見家が巫女を務めていた双見神社です。その当時から二つの神社の神主と巫女には予知の能力がありました。昔の方がその能力は強く血が薄まっていくにつれ、しだいに弱くなっていったようです。その双見神社の巫女に仕えていたのが、私の先祖でした。これはその先祖の時代から鈴木家に伝わる話です。一宮家の神主と双見家の巫女は恋をしていました。それは禁断の恋でした。なぜなら双見家は代々婿養子をとることで双見家の女性に宿る予知能力を継承していたからです。一宮家の男を婿養子に取ることは一宮家にとっては予知能力者を失うということ。双見家の女性が一宮家に嫁に行くということは双見家にとっては予知能力者を失うということ。お互いの家にとって、2人の結婚は避けねばならないものでした。その当時の双見家の巫女は特に予知能力が強く、人の過去や遠い未来を見通し、さらには時代を越えて影響を与えられるほどの能力がありました。その予知能力のことを本人は『夢の雫』と呼んでいたそうです。なんでも眠ると、夢の中で色んな場面が映った雫が雨のように天から沢山降ってきて、見上げた目に雫が落ちると、その雫に映っていた世界が見えるからだとか。彼女は1000年後の未来には星のように光る花が空いっぱいに咲いていると言ったそうです。鈴木家が代々花火師をしているのは、彼女の予知を守るためでもあります。もちろん彼女はもうこの世にはいませんが、その予知を守るのが、鈴木家の役目になったのです。結局、2人の恋は叶いませんでした。一宮家の神主の方が、双見家の巫女に別れを告げたからです。家を優先したようですね。悲しい話です」

大切な部分なので、全部引用しました。あえて今は説明しないでおきます。

1000年後の未来を予知した巫女の祠へ行くと、大玉の花火の玉があります。

鈴木さんが鍵を開けて扉を開くと先ほど宮守煙火で見たような花火の玉が奥の方に鎮座しているのが見えた。
なぜそうなったのか私にも分からないのですが、宮守煙火ができてから、毎年、その時代に作れる一番大きな花火の玉をここに奉納するようになったようです。それから双見家の人間が必要になったらこれを使うようにと伝わっています。一宮さんの予知も双見家に関わることのようですから。

無事に二つの大玉を上げることを約束できた亮は、花火大会の2週間前の日、楓に話しかけます。

ここで4章は終了。

【第五章】

7月19日、亮は予知夢を見ます。

今日7月19日、朝8時18分。通学路。俺は走っていた。目の前には楓の背中が見えている。視界の隅には軽トラックも映っている。道路に飛び出していく楓。俺は楓に向かって手を伸ばした。

予知夢のおかげでトラックにひかれそうな楓を助けることができた亮は、そのタイミングで花火大会に誘うことに成功します。

そして花火大会当日。亮はさらに予知夢を見ます。

今日7月27日。午後6時35分。音見川。花火大会打ち上げ場所。花火師達が立ち尽くしている。鈴木さんもいる。花火を打ち上げるための筒が、地面に転がっている。場違いの不良5人組が笑いながら去っていった。

花火大会が不良のせいで中止になってしまうかもしれないという夢です。

花火大会が中止になれば、楓も予知能力を失うことになる。

焦った亮は花火打ち上げ場所に向かいます。

予知を変えるということは、自分で未来を選び取ることだ。予知通りに行動することはできない。

亮は五人組の不良を止めることに成功します。その代わり、予知能力を失います。

楓との待ち合わせ場所に向かいます。待ち合わせた二人は丘へ。花火を見る最中で目が合いますが、無言のまま。

四尺玉が打ち上がるのはそろそろだ。息を飲んだ。

ひゅーという一際大きな音が鳴り、オレンジ色の小さな光が空へ向かって上がっていく。
いくつものオレンジ色の光の筋がゆっくりと落ちていく。隣で楓の声が聞こえた。

「好き」

ここでやっと、一章で終わってしまった楓の視線に戻ります。

彼に告白されるという予知なんて無視して、ただ好きだと彼に伝えていた。
予知は現実にならなかった。私が好きだと告白した瞬間に、予知が変わってしまったのか、それとももっと前に変わってしまっていたのか。彼に告白されることはなかった。代わりに私はこの時だけは、ただただ素直に好きだと伝えることができた。
彼に告白されるという予知が現実にならなかったということは、彼は私に告白するほど私のことを好きではないのかもしれない。だとしたら、私はこの後フラれてしまう。

再度、亮の視線に変わります。

楓に告白された。予知は現実になった。あとは楓の予知を現実にするだけだ。

亮はもう予知能力を失っています。初めに予知夢の矛盾を解決するために行っていた様々な努力はもう意味がない。

第三章の記載に戻ります。

楓に予知ができるとしたら、俺は予知を変えてしまったのだろうか。だとしたら、俺は予知能力を失ってしまうのだろうか。

そんな思いに駆られて大玉を二つ用意した亮。でももうその努力は実らない。自分は予知能力を既に失ってしまった。

予知が現実になった嬉しさよりも、好きだと言われて単純に嬉しいという気持ちの方が強かった。あとは楓の予知を現実にするだけだ。

願いがここで変わっています。楓を守るために。

そし二発目の花火が上がります。

花火の方に目をやる。オレンジ色の光の筋の中をキラキラ光るのは楓の予知で見たピンク色だ。
「好きだよ」

楓がこちらを向いた。驚いた表情をしている。状況が呑み込めていないようだ。

第五章はここで終わり。あとはエピローグです。

予知能力を失ったら失ったでどうってことはなかった。他の人と変わらなくなっただけ。これからのことは自分で決めていく。

二人は花火を見た丘に登ります。

あの時は暗くて気が付かなかったが、隅の方に小さな花畑のような一角があり、そこにはピンクの小さな花がいくつも咲いていた。
「こんな所に花が咲いていたんだな」
「うん。これはね、星の花って言うんだよ」
「正式名称は私も分からないんだけど、お母さんが教えてくれたの。ここには昔神社があって、うちの先祖はそこで巫女をしていたらしいの。今は違うんだけどね。その時からこの花はここに咲いていたんだって」
覚えてるかな? 小学生の時に私が川に落ちそうになったのを亮君が助けてくれたこと。あの時、亮君が川から拾ってくれた瓶に花が入っていたでしょ? あの瓶に入っていた花はここに咲いている花と同じ星の花だったんだ。

「なんで星の花って言うのかなぁ。お母さんもお祖母ちゃんも分からないんだって。この花って薄いピンク色でほんのり光っているようにも見えるけど、それで星の花って言うのかなぁ」

1000年前からここに咲いていたのだろうか。星の花が風に揺られる姿は小さな花火みたいだった。


注意深く読むと気が付きますが、ここで説明します(やっとここまでこれた)。というより、小説はいろんな見方がありますので、一つの考察だと思ってもらえればと思います。(解釈は人それぞれです)

1000年前、二人の男女が恋に落ちました。しかし、将来を添い遂げると片方の予知能力が失わてしまうことから、二人の恋は実りませんでした。

結局、2人の恋は叶いませんでした。一宮家の神主の方が、双見家の巫女に別れを告げたからです。家を優先したようですね。悲しい話です

1000年後の未来を予知できた巫女と神主は、将来結ばれることを約束します。それぞれの子孫に願いを託して。

なぜそうなったのか私にも分からないのですが、宮守煙火ができてから、毎年、その時代に作れる一番大きな花火の玉をここに奉納するようになったようです。それから双見家の人間が必要になったらこれを使うようにと伝わっています。一宮さんの予知も双見家に関わることのようですから。

双見家と一宮家の子孫に願いを託した巫女と神主は、将来結ばれるために花火を奉納するように代々受け継ぎます。

また、神主は花火大会を実施するように語り継ぐ。

現世で結ばれることのできなかった二人。

彼女は1000年後の未来には星のように光る花が空いっぱいに咲いていると言ったそうです。

未来で好きな人と結ばれたいと思った巫女。そして愛する人を守り抜けなかった神主。

巫女は将来結ばれることを願いに乗せて、丘のピンク色の花を瓶に詰めて川に流します。(考察ですが、巫女は失恋のショックから瓶とともに身投げをした可能性が高いです。その証拠に、こんな記載があります。)

音見川の花火大会は何十年も前から毎年開催されている伝統ある花火大会で、うちの先祖の神主がこの町の発展と霊を鎮めるために始めたのがきっかけだったらしい。

そしてーーーー台風によって氾濫した川から流れてきた瓶を拾った楓。1000年後の未来では好きな人と結ばれたいという巫女の願いが1000年の時を経て子孫に届きます。

小学生の時に川に落ちそうになった私の手を掴んで助けてくれたことがあった。今みたいに。それが彼を好きになったきっかけだった。

川に落ちそうになったことがきっかけで亮を好きになった楓。その時に拾ったピンク色の花が入った小瓶が、亮のことを好きになるように楓に魔法をかけたのかもしれません。

そして、思いを受け取った楓が、まず花火大会で「予知能力のことなんか気にせず、思いを伝えればよかった」という巫女の願いをかなえます。

私は彼に好きだと告げていた。彼に告白されるという予知なんて無視して、ただ好きだと彼に伝えていた。

予知能力を優先させたかつての二人。子孫の楓は予知能力よりも相手に気持ちを伝えることを選びます。

そして亮も、気持ちを伝えます。今度は彼女を守るために。気持ちを伝えるために。1000年前の神主ができなった、愛する人を守るという行為をやっと実現させることができたのです。

この物語は、それぞれの子孫に願いを伝え、それを1000年越しにかなえていくラブストーリーになっています。楓と亮のラブストーリーのようですが、実は1000年前の巫女と神主の実らなかった恋が叶う話なんです。そう考えると、要所要所の主人公の二人のセリフが、それぞれ神主と巫女のセリフと重なって鳥肌が立ちます。

予知能力を失ったら失ったでどうってことはなかった。他の人と変わらなくなっただけ。これからのことは自分で決めていく。

愛するとは何か、一番大切なことはなんなのか、そんなことを神主と巫女の恋、そして楓と亮の恋が伝えているような気がします。

だいぶ長くなったので、終わりにします(疲れた。。)

と思ったのですが、この小説をもとにした歌の歌詞を載せます。

夜の空を飾る綺麗な花
街の声をぎゅっと光が包み込む
音の無い二人だけの世界で
聞こえた言葉は
「好きだよ」

夢の中で見えた未来のこと
夏の夜、君と、並ぶ影が二つ
最後の花火が空に昇って消えたら
それを合図に

いつも通りの朝に
いつも通りの君の姿
思わず目を逸らしてしまったのは
どうやったって忘れられない
君の言葉 今もずっと響いてるから

夜を抜けて夢の先へ
辿り着きたい未来へ
本当に?あの夢に、
本当に?って今も
不安になってしまうけどきっと
今を抜けて明日の先へ
二人だけの場所へ
もうちょっと どうか変わらないで
もうちょっと 君からの言葉
あの未来で待っているよ

 誰も知らない
二人だけの夜
待ち焦がれていた景色と重なる
夏の空に未来と今繋がる様に開く花火
君とここでほらあの夢をなぞる
見上げた空を飾る光が今照らした横顔
そうずっとこの景色のために
そうきっとほら二つの未来が
今重なり合う

 夜の中で君と二人
辿り着いた未来で
大丈夫想いはきっと大丈夫伝わる
あの日見た夢の先へ
今を抜けて明日の先で
また出会えた君へ
もうちょっと どうか終わらないで
もうちょっと ほら最後の花火が今
二人を包む 音の無い世界に響いた
「好きだよ」

普通に聞くと楓の思いを歌っているようですが実は1000年前の巫女の願いの歌になっています。(歌詞の太文字を追ってみてください)

MVの右上の数字は、1000年の時を経て結ばれる二人を表しているものではないかと思います。

もしPVが伸びれば、歌詞版を書いてみます(^^♪ 


↑後編↑


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