調子の良い鍛冶屋
私が小学校低学年の頃、家に、CDラジカセとガラス扉のラックが届いた。ラックには、クラシックCDが50枚ほど納められていた。母が、ストレス発散のためか、または音楽のある暮らしに憧れたかで、通販で買ったのだろう。CDラジカセは、黒色で角ばっていた。ラジカセは、その後時代と共に、角の丸いデザインになっていったと思う。
クラシックCDの中には、誰でも知っている有名な曲から、ん?という曲まであった。何度も聴かれるCDもあれば、なかなかビニールの封が切られないCDもあった。
私は、「調子の良い鍛冶屋」が好きだった。
眠りに入るまえに、聴きたい音楽。特別何かが思い浮かんだりしないけれど、身体に染みやすい明るさがあるように感じた。
幼なじみの友達は、ピアノで、「調子の良い鍛冶屋」を弾くことができた。
彼女に調子の良い鍛冶屋の話をしたら、「それ弾けるよ」と言われる。ある日の学校帰り、彼女の家に行った。
私はピアノを習っていたけれど、挫折しやめていた。幼なじみの弾くピアノの音を聴きながら、もし私もピアノを続けていたら、これが弾けるときがきたのかなあと、考えた。幼なじみの家には応接間があり、ピアノはそこに置かれていた。撫でると色の濃さが変わる、毛足の短い布のソファセットは、座るときいつも少し緊張した。夏は、冷房がよく効いている部屋だった。
クラシック音楽に詳しいわけではないのですが、好きな曲。
ヘッダー写真は、私の大好きな夏の友達、
「やわらか赤城しぐれ練乳ホワイト」さんです。
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