アート作品 「好み」の値段_アートエデュテイメント#08
アートエデュテイメントについて、主にビジネスを熱心に進められている方々を読者として想定してお話してきています。
アートフェア
先日、現代アートのアートフェアに行ってきました。アートフェアとは、アート作品を扱っているギャラリーが集まり、作品を展示販売する催しのことです。
アーティストにとっては新作発表の場であり、コレクターやギャラリストにとっては情報交換の場、一般客(私はここに該当)にとっては鑑賞の場でもあります。ちなみに、アートフェス(アートフェスティバル)という、似たような言葉もありますが、こちらは、主に地域で開催される、アート作品を介した交流イベントを指すケースが多く、「売買」を目的とするアートフェアとは、開催の意図が大きく異なります。
そう、作品の「値段」を確認しながら、アート作品を鑑賞できるのが、アートフェアの特徴ということになります。これ、面白いと思いませんか?
アート作品は購入するもの?
「アート作品を購入されたことはありますか?」 と聞かれて、「はい」とよどみなく答える人って、どれだけいらっしゃるでしょうか。
有名なオークションで、「名品」がとてつもない価格で落札されたなどというニュースなど聞いていると、アート作品の売買なんて、住む世界の違う人の話かなと思ってしまいます。勿論、市井のコレクターのような方もいらして、アート作品を購入するという行為も徐々に広がっているようですが、まだまだ少数派。
まして、美術館に「買い付け」の感覚でアート作品を観に行く人は、まずいませんよね。アートは「売買」の対象としては捉えにくい存在であるのが、一般的な感覚だと思います。
価値の市場
さて、冒頭の三つの「金額」。一体これは何かと言うと…
私が欲しいなぁ(購入出来たらいいなぁ)と思った作品のお値段です。有名作家だから、流行っているから、将来的に高く売れそうだから、といった理由ではなく、単純に、「あ、この作品、家に置いてあったらいい感じだなぁ」と思って選んだ三つの作品です。私にとっては、ある意味同等の「価値」を持っているわけですね。
と、こ、ろ、が、アートフェアの会場では、私にとっては似たような「価値」を持つ作品の値段が、二桁ほどもばらついていたわけです。ギャラリストやコレクターからしたら、てんで美術市場をわかっていない素人さんということになりますね。
値付けとは?
あなたならどう答えますか?
例えば私が「生涯年収で決めるとしたら、圧倒的にピカソの勝利。だって、ゴッホって生前は一枚しか作品売れなかったし」とか、「一作品あたりの売買価格はゴッホのほうが高いから(何せピカソは作品数が多い)。断然ゴッホ!」とか言っても、なるほどそれは納得…って思う方は、ほとんどいないのでは。
自分の思う「偉大」に、正直、正解なんてないと思いますし、そもそも比較する意味があるのかどうかもわからない、ナンセンスな質問に思えます。
そう、自分の感覚に対して、「値付け」といった直線的な数値指標、言い換えると決まったロジックで順位づけすることって、実は不可能なわけです。
〈アートフェアはアートエデュテイメントの場〉
ということで、アートは一つの価値、例えば「貨幣価値」だけで測れないということが、アートフェアに行くと、とてもよく実感できます。同時に、「売買」という行為を通じて、価値観が具体的にぶつかり合っている美術市場の様子も、感じ取ることができます。
いやぁ、すごい刺激と不思議に満ちた場所です。気鋭の作家さん達とお話しできる機会も、結構ありますしね。
「アートは美術館で観るもの」と思っている方。「ギャラリーなんて敷居が高くてとても入れない」と躊躇している方。ぜひぜひ、アートフェアに足を運んでみてください。下手なマーケティングや経済の書籍で学ぶより、「値段」の持つ深遠な意味を探し当てる(かもしれない)機会になること請け負います。(笑)