【#003後編】グルーデコで教室開講/百貨店販売徹夜の毎日/新サービス誕生の裏側
― フランス刺繍アーティスト maison de jolie amie 中村 亜佐美さん ―【後編】
フランス刺繍アーティストで、maison de jolie amie の講師でもある中村 亜佐美さんにお話をうかがいます。中村先生は現在兵庫県西宮市でフランス刺繍教室を開講されています。刺繍との出会い、軌道に乗せるまでの苦労話や、新サービスの誕生秘話、コラボ企画など詳細に深く掘り下げてお話をいただきました。クラフトに興味のある方は必見!今回は後編。
(前編はこちら)
<ピックアップインタビュー>
(前編のつづき)
(細川)そもそも刺繍をする前は何をなさっていらしたのですか?
(中村)認定講師というのがこのお教室の世界にはいろいろなジャンルであるんですよ。
私が最初にやったのが、すごく簡単に講師の資格が取れるというのがあって、当時10万円を出せば取れたんです。グルーデコっていうんですけどね。クリスタルなどのゴージャスな雰囲気のパーツを使って台座に飾り付けていくクラフトなんです。
(細川)(実物を見て)へぇ~!きれいですね!!こんなの作れるんですか!?
(中村)すごく簡単に取れるんですよ!資格が。だからそれから始められる方が多いと思います。一時その世界では流行ったんです。誰でも先生になれるというので。
私は、そのグルーデコの技術と他のクラフトなどの作品のコラボをしたかったんです。いろいろな作品でコラボさせたら楽しいなと思って始めたんですよ。
だから、インスタの初めの方の写真はグルーデコの作品なんです。
(細川)ほんとだ!うわぁ~、キラキラしてきれい!
(中村)これを習いながら、ゆくゆくは先生もやってみたいなぁっと思って。お教室をやるんだったら、まずまず出来そうかな?と思い、試しに教えることをやってみようかな?と思ったのがきっかけですね。
当時息子がアメフトをやっていたので、チャームを作ったりしていたんです。こんな感じで。
(細川)(写真を見て)うわっぁ、すご!!
(中村)他の父兄の方からも、作って!という依頼があって、作ってたんですよ。
そしたら、たまたま父兄の方が百貨店の関係者の方がいらして、限定で百貨店で販売することになったんですよ!
(細川)すごいですね!!
(中村)1週間限定でね!
(細川)すごいですねぇ。(感嘆)もう、当時から立派なクリエイターじゃないですか!!
(中村)だから、インスタをカタログとして使っていたの。
(細川)へぇ~。素晴らしいです。
(中村)でも、すぐに売り切れてしまって。生産が追い付かなくて、徹夜の毎日でした。
その時に、モノを作って売るより、技術を教えた方が自分の体も楽だし、向いているなぁと思ったんです。
(細川)なるほど!その時は刺繍のレッスンは?
(中村)ちょうどその時にカリキュラムも終了して、教えられるようになっていたので、刺繍の教室を始めました。
(細川)ということは、製作活動はずっとやっていらっしゃったということですね。
(中村)いや、でも子どもが小さいうちは、小学生くらいまでは子どもに全力投球でしたね。
(細川)じゃ、その前は、グルーデコをされる前に刺繍をやっておられたということですか?
(中村)それは、子どもがまだ幼稚園のころです。子どものママ友が刺繍の先生をしておられて、見たことのないすごく素敵な刺繍だったので、2、3年習いました。その先生はすごいですよね!?その時代ネットも無い時代ですしね。作風がとても素敵で。ホテルで2年に1回展示会を大々的に行われるほどでしたから。その先生の作風が私の作品に活きているところがあるかも知れませんね。
(細川)すごいですね!子供の頃から習っていたわけではなくて、ご結婚なさってから、そこまで習得されたわけですから。
(中村)子どもの頃から創作活動は好きだったんです。小学生のころから編み物したり、ミシンを使ったり。だいたい何でも我流でチャレンジするタイプなんです。手仕事が好きなんです。だから、それが今、活きてるといえば、活きてるんだと思います。
極めてはないんだけど、何でも作っちゃうので、カタチにはしちゃいますね。
額装だけの刺繍とかではなくて、BAGやブローチや、お洋服などさまざまなものに活きてますね。
カルトナージュを始めたきっかけも、刺繍をミシンで巾着袋とか、BAGとかだけで作っていたら、幅が広がらないので、何か活かせないかなぁと思ったのがきっかけなんです。そしてカルトナージュを始めたら、刺繍との相性がすごく良くて。それでまた幅が広がったんです。
(細川)カルトナージュに刺繍をするのは、先生のオリジナルなんですか?
(中村)いえいえ、それはもう既に色んな方がやっていますよ。でも、その作風ですよね。その相性が良かったということですね。
今、カルトナージュの先生と、お洋服の洋裁の先生に習っているんですけど、すごく好みが似ているので、呼吸がばっちり合うんです。こういうものを作りたいというと、外さず作ってくれるので。だから、コラボレーションして一緒に仕事ができるんだと思います。
私たちはこだわりも強いので、その感覚が合うというのはすごく大事なんです。
(細川)そうでしょうね!アーティストが3人ですからね。
(中村)それで、3人で話しているうちに、コラボ企画した作品を売りましょう!という話になってきているんです。しかも安価なものではなくて。
安いものをたくさん作って売るのではなくて、高くてもいいから、もうここでしか手に入らな「いいモノ」を作って、みんなに喜んで頂けるように。そういう活動もしていこう!と。
(細川)それが、今後の目標ですか?
(中村)そうですね。今も、カルトナージュキットはカルトナージュの先生とのコラボ企画ですが、新たに3人のコラボ企画を進められたらいいなと思います。
(細川)なるほど、いいものが出来そうですね!
(中村)常になにか出来ないかなぁと頭には考えていて。カルトナージュキットもレッスンでは使っていたんですけど、ネットとかで販売できないかな?って考えてたんです。でも、実際たいへんじゃないですか!?
(細川)でも、刺繍のカルトナージュキットは昨年11月に発売したら、すぐに反応ありましたよね!?供給が追い付かないほど…。先生たちにはニーズに響く何かを持っていらっしゃるんだろうなと思います。
(中村)やっぱり、出すときには妥協はしたくないんですね。カルトナージュのトランクキットなんかも、すごく時間はかかりましたけど、出来上がったものはパーフェクトに近い仕上がりになっているので。だから、本当に「いい」と思わないと動けないというのはあります。
今回のキットもいいものが出来上がったんですが、キットだけでは作れないだろうなと。動画レシピが必要だろうなということで、動画も作成しました。
(細川)キットとともに、先生の動画が見れるのは、すごく価値が高いですよね!?
(中村)生徒さんがその動画を見て、きれいに作ってこられるんですよ。それを見て、私も自信につながりましたね。
それで、キットはキットでやるんだけど、今度は実は完成品の方がニーズがあるのかなぁと思い始めて…。
(細川)なるほど。新たなキット展開はしないけれども、新しく完成品の販売をしていこうということですか!?
(中村)そうそう。今までのモノは充実させつつ、新たに完成品を出していくということです。
このカルトナージュトランクキットは本当に自信作で、知ってほしいです。だから、これを知ってもらう、拡げることに注力したいですね。みなさん!知ってほしいです!!
そして、作家活動をしていこうと思っています。
実は、自分は作家じゃないなと思った時期もあるんです。色んな事をやっているので、ひとつのことを極めている人は作家さんだと思いますが…。いろいろ自問自答して…。自分は作家になりたいのか、大きな商売をしたいのか、何がしたいんだろうと思った時期がありました。いろいろやってみて、疲れもして、さまざまな経験をして。今は作家活動、モノづくりでいいものを、作品を知ってほしいと思うようになりました。
もちろん、レッスンは一番重要ですし、作品はレッスンの中から生まれてくることもあるので。生徒さんも感想や、ご要望をおっしゃっていただけるので。ただ、レッスンを詰め込み過ぎてしまうと、創作活動が出来ないですしね。
(細川)そうですね。今までさまざまなことを実践されていますものね。楽しみです。
(中村)今まで、アトリエを持ちたい、ネットショップをしたい、キット販売したい、と心に思っていたことが実現してきているので、思っていると自然と自分の動きもそうなるのでしょうね。
うまくいくかはわからないけど、目標を持って進んでいきたいと思います。
(細川)今日は貴重なお話、知らない世界がたくさんありました。ありがとうございました。
(中村)ありがとうございました。
ー インタビューを終えて ー
私も、好きなことを職業にできる人はうらやましいなぁ、と昔は考えたものだ。人には好きと嫌い、得意と不得意があり、職業も①好きで得意な職業、②好きだけど得意ではない職業、③好きではないが得意な職業、④好きでもないし得意でもない職業、この4つのマトリックスで考えられる。
以前テレビで「今でしょ!」の林修先生が、国語の講師をしているのは、好きではないけれど、得意だから、とおっしゃっていたことを思い出した。
得意ということがいかに自分と周りに有益かを説いていらした。
まさに、中村先生は、数少ない①の好きで得意な職業に就いておられるなと。
結婚して、お子様を育て上げられてから、刺繍と出逢い、またほかの技術も学び、自分でアレンジして作品を作り、教えるまでになられたのは驚きでしかない。本当のプロになられたということを意味しているが、その原動力は納得が行くまでやり続けることだ。プロである限り、中途半端な作品を世に出さないこと、試作を重ねることに努力を惜しまない。インスタグラムや、ネットショップの写真にしてもそうだ。一度すべて取り終え、バランスを取って見てみた時にイメージと違えば、今までの努力や時間は関係なく、新たに時間と労力をかけて撮り直していらっしゃる。
一般的な考え方としては、スケジュールを管理しながらやるべきことを消化していくことが仕事と考えがちだが、かくいう私もまさにその考えを改めなければならないと思わされた。
いつも、着地とゴールを自身で(勝手に)決め、そこに向かって邁進している。
中村先生のアスリートにも似た、ストイックな努力と安易な着地点を設定せず、次から次へと新しい目標に向かって邁進する姿は、私の目標そのものでしかない。
maison de jolie amie は、兵庫県西宮市にある刺繡教室。リュネビル刺繍と呼ばれるオートクチュール刺繍といった本格的な刺繍から、フランス刺繡などさまざまな刺繍作品を作ることができる。また、一般的な額装のみならず、洋裁やバッグ、カルトナージュやグルーデコといったアクセサリーなど豊富な経験から刺繍作品とのコラボレーションを提案。昨年には、刺繍やカルトナージュをキットとしてインターネット販売も手掛ける。また、アーティストとしての活動も活発で、ネットショップでも「Asami Nakamura Handmade」として作品販売も行っている。作品の数々はインスタグラムでチェック。
maison de jolie amie
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