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『ウルトラマンA』を観ました。(21話〜30話まで)

凡例のようなもの

 以下の感想は視聴当時(2020年8月30日〜2020年10月13日)にふせったー(指定した箇所を伏せ字にしてツイート出来るツール。追加で長文も付けることが出来る)を使用してツイートしたものです。省略した句読点の追加や、語句の統一程度の推敲はしましたが、ほぼそのまま掲載しています。

 今回は第21話から第30話までの分を扱いました。

 全体的にネタバレや、感想を読む方が視聴していることを前提とした内容です。まだ未視聴の方は、その点をご留意ください。

『ウルトラマンA』第21話を観ました。

 乙女座の天女、美しかったですね。

 乙女座の超新星爆発によって故郷を逐われた乙女座の精が、TACの竜隊長を訪ねてくるという内容でした。

 乙女座の精はヤプールに助けられたことにより、竜隊長の夢に現れたり、住まいを訪れて「お手伝いに雇って欲しい」と願い出たりしました。竜隊長は自分が独り身であることと、乙女座の精が身元不明の状態であったがために、その願いを丁重に断ります。乙女座の精は仕方なく彷徨った先、大きな屋敷で青年に気に入られて、雇い入れられます。

 その気に入られようが大変なもので、大変美しいうえに気立てが良いものだから、最初に「君は僕の妹だと思えば良い」と言ったかと思えば、彼女が天女にも等しい存在だと知るなり「君は僕の天女だ」「明日僕は、彼女に結婚を申し込む!」とも言い出します。

 わたしはこの青年の言動を見て、江戸川乱歩の『幽霊塔』を思い出しました。高等遊民の青年が、自分の新居であり、古くから原住民に「幽霊塔」と呼ばれる屋敷の謎や事件を解明するため、気高く賢いヒロインと共に果敢に挑んでいくという内容です。主人公の青年とヒロインの性格も、今回『ウルトラマンA』に登場する青年と天女の性格も相反する部分が多いのですが、ひとつだけ共通点があります。

 それはヒロインに結婚を申し込もうとするというところです。『ウルトラマンA』では上記の通りですが、『幽霊塔』では主人公の青年に対してヒロインが

「光雄さん(※主人公の青年)、あなたはあたしのために、いろいろのことで言葉に尽くせないほど骨を折ってくださいましたわね。(中略)あたし、この御恩をどうしてお返ししたらいいのかしら」

と訊ねます。それに対する主人公はこのように返答しようとします。

それは造作もないことですよ。僕と結婚さえしてくださればいいのです。

 実際には諸事情があって、それを口にすることはありませんでした。けれども「美しい女性を見たら結婚を申し込もうとする男性」が一定数居ることに、個人的に驚きがあったのです。

 しかし彼女にはヤプールに差し向けられた刺客という面も持ち合わせていました。最初に竜隊長の住まいに現れたのも、ヤプールによって攻撃をする目的で導かれたためだったのです。天女はヤプールの差し金で超獣に変化すると、屋敷を破壊して周囲を破壊し始めます。青年は「天女かと思えば超獣だ、僕は気が狂いそうだ」と泣き叫び、隊長の一件もあって忌み嫌っていたTACに対して助けを求めたのでした。

 結局、超獣はウルトラマンエースによって天女に戻され、はくちょう座に送られることになりましたが、その直前にも青年は天女に対して言います。

「どうしてそんなに大きくなってしまったんだい?」

この青年の天女、そして彼女が化けた超獣に対する態度に対して、わたしは納得がいきません。美しい女性に対して、結婚を申し込もうとするほどに惚れ込むのは、この際まあ良いことにしましょう。でも見かけが変わった途端に心を翻すのは、少し納得がいかないのです。竜隊長はあの女性のことを「夏の夢」だと言っていましたが、青年は夢を見過ぎていたのかも知れないと思わざるを得ません。

『ウルトラマンA』第22話を観ました。

 美川隊員の突然の死に驚愕しました。

 事故とは言え、炎上する自動車から転がり出た山中隊員が、倒れている美川隊員の身体を抱いて、一言「死んでる……」と言った時には、呆然として言葉も出ませんでした。何の前触れも無く、突然に命を絶たれてしまったのです。『ウルトラマンA』のヒロインのひとりである美川隊員が死んでしまったことの衝撃は計り知れません。この先の『ウルトラマンA』におけるヒロインは、残されるところあとひとりになってしまったのです。そのヒロインのひとりである南夕子隊員が、この先立派に続投する保証は、前情報(twitterなどのweb情報や、講談社『ウルトラ特撮 PERFECT MOOK』)からしてありません。戦いにおいて女性の立ち位置ほど大きく揺らぐものも無いのに、大丈夫なのかと考えました。

 しかし、そんな美川隊員は宇宙人の手によってすぐさま命を吹き返します。本当にびっくりしました。けれども傍らには宇宙人の人間態がおり、TACを油断させるために彼女が利用させられているのは、容易に察せられました。美川隊員は休暇を取って宇宙人と逢うなど、徐々に距離感を縮めていきます。その様子を観て、わたしは「宇宙人に操られているのだろうか」と気が気でなりませんでした。

 でも美川隊員が操られているわけではないというのは、すぐに証明されます。宇宙人を調査するために使われるペンダント型の装置を渡す任務を、自ら買って出たのです。美川隊員は、単に彼のことを自分の命の恩人として見做していただけでした。

 けれども彼の潔白を信じる美川隊員の思いは虚しく裏切られることになります。敵であることが分かった瞬間の彼女は、やはりそれが信じられないといった様子でしたが、しかしはっきり敵対することが決まった時の美川隊員は立派でした。私服ながら大型の銃を持って宇宙人の前に立つと、それをぶっ放したのです。その表情は戦士そのものでした。普段から爆発物などの危険物をブローチとして持ち歩き、男性陣にも負けるとも劣らない覚悟を以って任務に臨んでいる、あの美川隊員がそこにいました。

 最後には南隊員と並んで歩く様子も表現され、TACの一員として戦う女性隊員達の友情も示されました。この回は特に美川隊員が翻弄された話でしたが、ここまでカッコ良い美川隊員を観たのは初めてです。

『ウルトラマンA』第23話を観ました。

 突然の新興宗教に笑えば良いのか危機感を持てば良いのか分からず、反応に困っています。

 そう考えたのは、きっとわたしが平成初期の生まれだからだと思います。ちょうどわたしが生まれたすぐの頃に地下鉄サリン事件が起き、幼少期に至っても関連する事件の捜査や裁判が続いていました。わたしは地方の出身で、キリスト教の教会すら見掛けなかったので、自分に馴染みの無い宗教や思想には恐れと不安しかなく、神社や寺社を母体とするもの以外の宗教に対する認識は、後になって学校で習うなどして少しずつ変わっていきました。

 とは言え、『現代用語の基礎知識 昭和編』によれば、1973年頃から終末論が流行し始めたということらしく、ヤプール老人の流布した説はそういった社会背景を反映したものになるのだろうと考えます。

 使われていた「お前は俺を信じなさい」という謳い文句は、ハナ肇とクレイジーキャッツの「学生節」のオマージュとのことでした。なので、あの様相は『ウルトラマンA』の娯楽志向な作風も鑑みれば、笑って反応すべきなんだろうなと考えます。

『ウルトラマンA』第24話を観ました。

 ヤプールは本当に滅んだのでしょうか。

 前回は予期せずヤプールがウルトラマンエースに決戦を挑んで行き、自分のホームグラウンドであるはずの異次元での戦いに持ち込んだはずなのに敗れてしまいました。あまりにも突然の出来事であったのと、負の感情を利用する作戦を多用するヤプールが怨念の籠もった捨て台詞を吐いて砕け散ったので、本当にヤプールが滅んだ気がしません。

 今回はそれに引き続く形で、マザロン人の暗躍が描かれました。マザロン人は負の感情とはいかないものの、子供に大きく立派に育つよう願う母親の思いを利用して、超獣を生もうとしていました。

 生まれようとしていた超獣の鳴き声が、赤ん坊の泣き声なのは怖かったです。BGMには聖歌が流れ、母親を賛美する台詞をマザロン人が叫ぶのと相俟って、凄まじい演出になっていたと思います。

 そんな中をまさに鬼の形相で踊り狂う母親を正気に戻すのは、その子供です。投げつけたヤプールの欠片が額に直撃することによって、マザロン人の呪縛から解放されたのですが、親の掛けた呪いを解く子供の形を観た気がしました。

 けれども、最後の場面で子供と北斗隊員と南隊員が揃って母親を振り返る時、結局母親の表情が観えないままになってしまうのが、いちばん恐ろしかったです。あの時の母親は笑顔だったでしょうか。怒り顔だったかも知れない気もするのですが、神のみぞ知るところとなってしまい、恐怖が残っています。

『ウルトラマンA』第25話を観ました。

 南隊員の大活躍、格好良かったです!

 今回の事件は、南隊員が主導する形で活躍していたように観えます。相手のオリオン星人ミチルが女性だったこともあり、北斗隊員が前に出るよりも、気を使うこともなく強く出られたのかなと思いました。

 オリオン星人はオリオンガスを吸わないと生きていけないとのことでした。しかしあからさまに苦しい表情でビニール袋を取り出し、それに詰められた赤いガスを吸って気持ち良くなっている様子が出てきたのには驚きを隠せません。実際にそんなミチルの様子を見た男たちが、薬物目的で話しかけて来ていました。当時薬物乱用がどのような扱われ方をされていたのかは知りません。けれどもこれも映像表現の変遷の中の興味深い事柄のひとつだと思います。

 オリオン星人は1万3千年前に地球に飛来し、大洪水をピラミッドに立て籠もってやり過ごしたと主張していました。

 わたしは10数年前に個人的に世界の古代遺跡を紹介した本に夢中になったのですが、ピラミッドも例に漏れず興味の対象となりました。ピラミッドは現在、古代エジプト文明の王の墓だという定説が付いていますが、古代遺跡の本の中でその他の説として、「宇宙人が作ったもの」「大洪水を回避するための防波堤のようなもの」が列挙されていました。

 今回はピラミッドがオリオン星人が大洪水を耐えるために作ったものとして使われていますが、それらの説を使って考案されたものではないかと思いました。

 ストーリーの終盤で、倒れた北斗隊員を介抱しながら、ミチルが「(身分を偽り、嘘を吐いていたことを)赦してくれる?」と訊ねます。結局北斗星司隊員自身は回答しませんでしたが、戦いの最中にミチルが笛を吹いてスフィンクスを宥めたことで命を救われるなどしたこともあり、赦したように観えました。

『ウルトラマンA』第26話を観ました。

 本編中で竜隊長だけが、地球人の「ウルトラマンからの自立」を考えているように観えました。

 ヒッポリト星人が出現し、地球人に「ウルトラマンエースを引き渡す」よう脅迫にかかりました。TACが苦戦する中、北斗星司隊員と南夕子隊員は、いつも通りにエースに変身しようとします。けれども「ウルトラマンエースになってはいけない」という声と、ウルトラリングが光らないという、何よりの「ウルトラマンエースからの意思表示」があり、変身出来ませんでした。

 今のところ『ウルトラマンA』では、『帰ってきたウルトラマン』でやったような「ウルトラマンに変身するためには、人間の力でぎりぎりまで頑張り、それでもどうにもならない状況にならなければならない」という表現はありません。今回変身を止められたのは、ヒッポリト星人のことを何らかの形で知っている、ウルトラマンエースよりも上の実力を持った存在の啓示と、それを受けたウルトラマンエースの意思だったと考えます。

 上記に挙げた「ウルトラマンに変身するためには、人間の力でぎりぎりまで頑張り、それでもどうにもならない状況にならなければならない」という表現は、人間がウルトラマンの実力に頼らず、広い宇宙の中で生きていけるよう促すためのものだと思います。そのような考え方は、多くの場合「もし次に怪獣が出現しても、ウルトラマンの実力無しに人間だけの力で対処していかなければならない」という形で発露が見られます。けれども今回の街の様子は、「街に平穏が戻るなら、ウルトラマンのひとりやふたり、どうなっても構わない」というものです。

 いつもピンチになると、変身者という媒介を以って助けに入ってくれるので忘れがちなのですが、ウルトラマン達は宇宙からの来訪者なのですよね。人間の力でぎりぎりまで頑張り、それでもどうにもならない状況に限って、いつも助けてくれる。そんな親切な存在なので勘違いしがちなのですが、ウルトラマン達は犠牲にして良い存在ではないと思います。あくまでも、本来なら「怪獣が出現しても、ウルトラマンの実力無しに人間だけの力で対処していかなければならない」はずで、怪獣の対処をウルトラマン達の責任にしてはいけないと考えます。

 それに気づかない街の住民からは、ひっきりなしに「ウルトラマンエースをヒッポリト星人に引き渡せ」と抗議の電話が掛かり続け、TACの隊員すら諦めようとします。こんな中でも、竜隊長は「怪獣が出現しても、ウルトラマンの実力無しに人間だけの力で対処していかなければならない」という原則に気付き、ヒッポリト星人に対して徹底抗戦を主張しています。竜隊長の願いがTAC隊員達や、ウルトラマンエースに変身してしまった北斗星司隊員や南夕子隊員に届いて欲しいと思います。

『ウルトラマンA』第27話を観ました。

 ウルトラの父が初登場しましたね!

 TACは地球という他人の星のために死んだウルトラ5兄弟を目撃し、「ウルトラマンエースをヒッポリト星人に引き渡すべき」という言動をしたことを反省していました。未だにTACの降伏を主張する街の住民達にも、竜隊長自ら「これは星人とTACとの戦いではなく、星人と人間との戦いだ」と意識の改革を迫ります。けれどもヒッポリト星人は強いのに、勝てる見込みはあるのかと疑う意見は根強くありました。竜隊長の「ヒッポリト星人にも命がある。私にも命がある。命と命を交換すれば、勝てる」「ウルトラ5兄弟以上の力を出さなければ、負ける」という壮絶な覚悟が重いです。

 そんな激しい戦いの中、TACとウルトラ5兄弟の危機にウルトラの父が舞い降りました。彼はヒッポリト星人の攻撃からTAC隊員達を救い、エースを蘇らせました。一度はヒッポリト星人を圧倒しますが、M78星雲からの長旅の疲れが祟り、命を落としてしまうのは惜しかったですね。けれども、そこは『ウルトラマンA』というだけあって、最後の力をウルトラマンエースに受け渡せたのは良かったと思います。TACとの共同作戦も上手くいきました

 TACは「エースが勝った……」と言っていますが、これはウルトラマンエースとTACの勝利だと思います。

 戦いの後、ウルトラの父はウルトラ5兄弟によってM78星雲に運ばれて行きましたが、本当に死んでしまったのでしょうか。あまりに大きな存在の突然の登場と死に、戸惑いを隠せないのが本音です。機会があれば、またの活躍を期待したいです。

『ウルトラマンA』第28話を観ました。

 さようなら、南夕子。さようなら、うつくしいひと。

 南夕子隊員との突然の別れが描かれました。南夕子隊員の正体に関しては何の伏線も無く、今回突然「実は超獣ルナチクス抹殺のために地球に派遣されてきた月星人のひとりでした!」と言われて戸惑うばかりです。

 今までの『ウルトラマンA』の中での南夕子隊員は、ウルトラマンエースの半身となる前は看護師として働いていたこと、地方出身なので実家の造りも古めかしいことなど、地球人としての過去もそれなりに描写されていました。今まで満月が浮かぶ夜空も何回かは描写があったと思います。月星人のひとりだったという事実は、今回初めて登場したことで、南隊員の秘密にしていては不思議な場面は何も無かったのです。

 けれども南夕子隊員の口振りからは、月星人の切実な事情が説明されました。月も地球と同じような環境だったこと。けれども超獣ルナチクスに地中のマグマを残らず吸収され、岩石ばかりの死の砂漠と化してしまったこと。生き残った月星人は僅かな太陽のエネルギーを頼りに冥王星に逃れ、南隊員のようにルナチクスに対処する者が地球に派遣されて来ていること。

 きっと南夕子隊員にとっては、激動の一年足らずだったはずです。派遣されて来て何十年かは分かりません。しかし地球で看護師として働いてきて、突然、超獣に対抗出来るウルトラマンエースの力を、北斗星司隊員と共同という形ではありますが使うことが出来るようになったのです。これは待ちに待った好機となったでしょう。

 でも、超獣ルナチクスを滅ぼした後も地球に残ることは出来なかったのでしょうか。今までの『ウルトラマンA』のストーリーでは、地球での子供時代もバックストーリーとして紹介されています。地球人としての生活基盤もしっかり整っていますし、生きていくことは可能な筈です。何より、ウルトラマンエースに変身出来る能力を持つ数少ない人間のひとりなのです。

 しかしそこで重要になるのが、ウルトラマンに変身するための条件です。

 前にも感想に書いた通り、「ウルトラマンに変身するためには、人間の力でぎりぎりまで頑張り、それでもどうにもならない状況にならなければならない」のです。わたしは、ウルトラマンは人間が自分自身の力で怪獣や宇宙人に対処出来る力を得るまで地球を庇護してくれる、宇宙よりの来訪者だと思うのです。最終的に人間はウルトラマンから自立し、自分達自身の力で宇宙を切り拓く力を得なければならないのです。

 ここで問題になるのが南夕子隊員の出自です。南夕子隊員は自分を「超獣ルナチクスを滅ぼすために派遣された月星人」「それは月の兄である地球を救うためにもなる」と言いました。南夕子隊員も、地球を守るために月から来訪したひとなのです。

 また、わたしが問題にしたいのは、南夕子隊員はウルトラマンエースの力を超獣ルナチクスを倒すための復讐として使用した、とも取れるのではないかということです。月は超獣ルナチクスに滅ぼされたと言います。月星人が自分達の故郷を滅ぼした超獣を抹殺しようとするのは、復讐と同義なのではないかと思うのです。だとすると、南夕子隊員は自分が得たウルトラマンエースの力で以って、ルナチクスに復讐したことになります。

 なので南隊員は、これからも地球でいつも通りに暮らせるとしても、自分達の復讐に北斗星司隊員やウルトラマンエースを加担させた咎を負うことになるのではないかと推測します。それを重荷に思うかは別としても、ウルトラマンエースに変身することをこれからも続けていくことは疑問に思ってしまうのですよね。南夕子隊員はウルトラマンエースに変身するための力を放棄、北斗隊員に譲渡することによって、その責任を取ったのではないかと考えます。

 どちらにしろ、地球人としての彼女は死んでしまったと思います。月星人としての姿を他のTAC隊員達に現し、超人的な能力で地球を去ってしまいました。南隊員のTAC隊服を燃やすことによって、擬似的ではありますが葬式も行われました。

 これからウルトラマンエースとして単独で活動を行うことになる北斗星司隊員を、見守っていきたいと思います。

『ウルトラマンA』第29話を観ました。

 諦めない心を持った時、ウルトラの星が見えるようになるのですね。

 南夕子隊員がTACを抜けて以来、多くのことが変わりました。

 まず、メインヒロインが抜けたことにより、その役回りが美川隊員に代わりました。

 わたしにとっては、美川隊員はヒロインというより、TACのお母さん的存在でした。男性陣に負けない決意と覚悟を持ち、危険物をブローチに秘めて携帯しています。それはヒロインというにはあまりにも強く、主人公である北斗星司隊員に拘らず隊員全員を見守っている印象が強いので、美川隊員が「ヒロイン」と言うには少し違和感を感じます。

 けれども『ウルトラマンA』はあと半年間分あります。この状況が続いていけば、美川隊員がヒロインというのも、慣れていくのかも知れません。

 その他にも、登場人物に新たにダン少年が加わりました。今回の話では、それがメインに描かれたと言っても良いでしょう。

 ダン少年は母親を早くに亡くし、父親も交通事故で失っていました。その父親の死がトラウマになり、父親が付けた自分の名前に良くも悪くも拘りを見出すようになっていました。

 けれども彼は、「〝ウルトラの星〟が見える」という特異な能力を持っていました。この能力は普通の人間は持たないらしく、ダン少年の他にはウルトラマンエースに変身することが出来る北斗星司隊員くらいしか居らず、「星が見える」と安易に主張すれば嘘吐きとされる状況でした。そのダン少年すら、諦めの心を持ってしまった瞬間に〝ウルトラの星〟が見えなくなるのです。

 〝ウルトラの星〟は地球から遠く300万光年離れたM78星雲にあるとされており、地球と同じく普通の惑星ではあるけれども、プラズマスパークと呼ばれる人工太陽があるので、輝きを見ることが出来るのだと推測します。ただ300万光年離れているので、その輝きを見ることは難しいと思います。地球も自転をしているので、昼夜を問わず見えるのも良く考えてみればおかしい気もしますが、「〝ウルトラの星〟が見える」というのは概念的な部分もあるのでは無いかとも思いました。

 ダン少年は上述の通り、嘘吐き呼ばわりされ続けたショックで諦めない心を忘れて、一時的にウルトラの星が見えないようになってしまいます。しかし地上を破壊しようと試みた地底人に立ち向かい、追い詰められたことで諦めない心を思い出します。そうして彼は再びウルトラの星が見えるようになり、「ウルトラ兄弟の6番目の弟」として、北斗隊員に認められました。これによって、ダン少年は『ウルトラマンA』のストーリーの登場人物に加わりました。

 『ウルトラマンA』にダン少年が登場人物が加わったのは、南夕子隊員が抜けたことによる穴を埋めると共に、子供番組として、視聴者である子供達に自分の存在を『ウルトラマンA』の世界観に投影するための媒介を用意するためだったと考えます。上に書いた通り、ヒロインの枠は美川隊員で塞ぐことが出来ますが、今までの『ウルトラマンA』には子供の視点が足りなかったように思われるのです。

 前年までやっていた『帰ってきたウルトラマン』に比べて、『ウルトラマンA』には他のウルトラ兄弟の登場する場面やギャグ的要素も多く、娯楽志向らしいところが見受けられます。しかし子供向けと呼ぶには、ストーリー中の子供の登場がゲスト登場を除いて少ないように思われました。『帰ってきたウルトラマン』には坂田次郎くんがレギュラー参加していたのもあって、それは歴然とした差として見いだされます。

 半年で登場人物が入れ替わったのもあるので、これからの『ウルトラマンA』は今まで観たものと違った志向のストーリーが展開されるものと考えたいです。そういうことも踏まえて、『ウルトラマンA』第一部が終わり、これから第二部が始まるものと見て、これからの回を楽しみに観ようと思います。

『ウルトラマンA』第30話を観ました。

 〝ウルトラの星〟は導きの星なのですね。

 前回の一件以来、ダン少年は「ウルトラ6番目の弟」であることを鼻にかけていました。ウルトラの星が見えることはダン少年の励みになった一方で、子供達の中では自分だけがウルトラの星が見えるという特別性を得たことで、自分を選ばれた人間だと思うようになってしまったのでしょう。「ウルトラ6番目の弟である」ことを他の子供達に自慢していたことで、ダン少年は超獣の爪を取ってくると宣言することになってしまいます。あまりにも無茶なことを言ったダン少年の目には、最早ウルトラの星は見えませんでした。

 わたしは前回の感想で、『「〝ウルトラの星〟が見える」というのは概念的な部分もあるのでは無いか』と書きました。それは「300万光年離れているので、その輝きを見ることは難しい」ことや、「地球も自転をしているので、昼夜を問わず見えるのも良く考えてみればおかしい」ことが考えられたからです。

 しかし、前回嘘吐き呼ばわりされ続けて弱音を吐いたダン少年にウルトラの星が輝かなかったこと、そして今回「ウルトラ6番目の弟」であることを証明するために超獣の爪を取ってくるという無茶をしようとしたために、ダン少年の前にウルトラの星が輝かなかったことで、「〝ウルトラの星〟が見える」ということが、光がM78星雲から地球へ届くかどうかではなく、発達途上にある少年の成長を促し、正しい道へ導くための道標であることが表現されました。ウルトラの星は正義の基準を示す光なのです。その光は正しい心を持った者が勇気ある行動をすることを祝福するものなのですね。

 ダン少年が今回の行動を反省し、超獣の爪の代わりに今回の事件を記憶する印を手に入れたことを誇りに思った時、再びウルトラの星は輝きました。あの輝きは、ダン少年の正しい心を祝福する光だったのでしょう。

 ところで、今回北斗隊員は、超獣の前に救急車や暴走族を通してしまったことを咎められて、謹慎処分になってしまいましたね。最初の救急車の時、美川隊員が北斗隊員を責める山中隊員を止めに入りましたが、暴走族が被害を受けた時、最早誰も弁護してくれませんでした。

 わたしはどうしても、「あの時、南夕子隊員が居てくれたら」と思ってしまいます。南夕子隊員がTACを去ってしまった今、北斗星司隊員を弁護し、支持してくれる最後の頼みの綱が切れてしまったも同然です。南夕子隊員は、自分達がウルトラマンエースであること、同じTACの隊員であること、大人の身分であることを北斗星司隊員と共有出来る仲でした。ふたりはウルトラマンエースの半身同士であるために、同じ考えを共有し、責任を共同で背負うことすら出来ました。けれども、それが出来る人間はもういません。もうひとりのヒロインである美川隊員は北斗隊員と同じ考えを共有するには至りません。ダン少年ではTACの立場も大人の身分も共有できません。何より、ふたりはウルトラマンエースの半身を分け合った仲では無いのです!

 前回の感想ではヒロイン枠に美川隊員がいること、登場人物に子供が加わったことを好意的に捉えようと努力しましたが、未だに南夕子隊員の存在感が大きく残っており、埋めるには時間が必要なことを痛感しました。ふたりのストーリー的キャラクター像の掘り下げを期待したいです。

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