第46話「蝶を夢む」ネタバレあり感想

「死の天使」回ですよー^^
さて、「夢む」は「夢見る」に等しい。
夢を見る、あるいはあって欲しいことを心に思い浮かべる。
例:「永久 (とこしえ) の天を―・むといえども」〈独歩・わかれ〉(goo辞書)
例文にクニキ〜ダくんが笑
いきなり森さんと喧嘩を始める与謝野さん。
蝶の髪飾りを手にして、フランシスとの待ち合わせ場所を目指す。

14年前、大戦末期——
太平洋城に突如出現した「常闇島」——、夜しかない無国籍島。
大戦末期の主戦場。
オーロラの電磁波が電子機器を破壊するため、島は前近代的な白兵戦が繰り広げられていた。

基地空母の造形にやる気がない。(原作漫画でいう「燕騎士シュバルヴェリッター」のこと)
他の描写が素晴らしいのに、空母だけどうしたのよ……。
原作漫画と比べると、常闇島の造形が大分異なるように思う。
漫画だともっと普通の島に思えるが、アニメでは奇抜な外見に変更されている。
常闇島の異常性を視覚に訴えかけているのかもしれないが、他にも意図があるのかもしれない。
相互さんは自然現象で生じた島か、それとも異能で発生した島か、と言っていたが、異能が関わっているかもしれない。
緯度が分からないが、まあそんなに寒そうでもないし、北方の凄いところではないだろう。
それなのにオーロラが常に渦巻いているし、何よりも昼のない常闇の島である。
島自体が動いて常に夜の位置にいる、なんて設定があっても面白かったよなあ。
ただ、ツッコミを一つ。
オーロラが電磁波を放射して電子機器を破壊するわけではない。
オーロラを生じさせるほどの強烈な太陽風(太陽フレアの放出)などを原因とした、荷電粒子が地上に降り注ぐときに電磁波を放つのである。順序がおかしい。
この辺りは『ガメラ2 レギオン襲来』でも見ている子供の方がよほど詳しいと思う。
つまり、「オーロラが電磁波を放つ」のではなく、「電磁波を生じる何かが起こってオーロラを発生させる」が正しい。
局地的に太陽風が吹き荒れるなんてことはあり得ないから、やはり何か超常的な現象が起きていると考えた方が都合が良いし、何よりロマンがある。
ロマンは大事だよ。

まあ、もう一つ、そのように考察せざるを得ない理由がある。この時代の軍事力でも、恐らく原始的な戦略爆撃機は開発済みだと考えられるので、特別な理由がなければ第四期冒頭で語られた探偵社設立秘話の時代、もっと本土は荒廃していなくてはおかしいのだ。日本は戦争に負けたのだから、戦略爆撃機でボコボコに本土を蹂躙されていないと、いくらファンタシーでも「そりゃねーよ」となってしまう。
そうしてみると、「戦略爆撃できなかった理由」というものを考えなくてはならない。
これは後ほど丁寧に語ってみる。

さて、負傷した兵士たち相手に「君死給勿」を発動する若き日の(若すぎる日の)与謝野さん(11)。
ところで、ここで重要な描写があると考えられる。
『君死給勿』の発動範囲である。
不楽本座にて軍警に追い詰められた際、自決を装って出来立てほやほやの(!)探偵社の死体を復活させたが、やはりある程度の近距離圏内にいる、複数の対象を同時に治癒させることが可能であるようだ。
これは重要なことではないだろうか。
不楽本座では背後の探偵社員を治癒したことから、視界に収める必要もなさそうである。
駄菓子屋の店番をしていた与謝野さんを、森鴎外がどのように見出したのかは謎である。
おおかた、勝手に異能が発動して困っていた与謝野さんを、言葉巧みに騙くらかして徴用したのではないだろうか。
そんなに外れていない気がする。ゲス、もとい、目的のためには手段を選ばない人だから。
そして「お兄さん」きましたね。
こちらも原作漫画と比べるとデザイン変更がなされている。より、弟である「彼」の造形に似ているように思うのだが、いかがだろうか。
彼は異能力者で、金属操作の異能を持っている。
蝶の髪飾りを出して与謝野さんに渡すのだが、そのひらひら舞って飛ぶ様子は、さすがアニメといったところで、大変に美しいし心を奪われる。

欧州列強が発明した異能力教義ドクトリンが戦争を変えつつある。
戦争に負けないためには、軍上層部に異能の有用性を理解してもらわねばならない。
森鴎外はそのために「不死聯隊」構想をぶち上げる。
……この辺の話は、『幼女戦記』を彷彿とさせるんだよなあ。
あれもまた、様々な教義が出てくるのだが、ターニャが新規構想の教義を次々開発することで、魔導兵としての有用性を示していくことになるわけで。
新しく、有用な教義を生み出すことができれば、相手がそれに対応するまでの間は黄金期間ゴールデンタイムになるので。

塹壕での戦いぶりは史実の硫黄島がモデルだろうか。
それにしても、榴弾砲に身体を引き千切られ、まるで悪夢から覚めるように、絶叫しながら起き上がるシーンの残酷さは異常。
この辺はいくらでも類例はあるだろうが、とりあえず僕の知ってる話だと『All You Need is Kill』ってところか。
あれはタイムリープものだけど、描写は完全にソレ。
死んだのに完全回復して復活、なんの怪我も残らない。
何度も何度も地獄の戦場へ……。
うん、嫌な予感しかしない。
「異能力で身体は治ったけれど、心までは戻らなかった」

ああ、そして出たよ、正義のドッグタグ
ドッグタグが何か知らない人はググってね。兵士にとって超大切なものだから。
故郷の弟に会えなくなるところだったから……ううぅ。

そして嫌な予感は的中する。
戦況はどんどん圧迫され、兵士の「治療」回数は激増、異常な頻度で殺され、復活しを繰り返していった。
(厳密には死んでないんだろうけど)
「これじゃあ、殺すために治してるようなモンじゃないか……」
まあ、その通りである。
治癒系の異能で話を作ろうと思えば、どうしたってそういう地獄の話に行き着く。
もっとも、こんなものはまだ地獄の入り口でしかないのだが。
後ほど、究極の地獄——【やさしいせかい】をご覧にいれよう。

ここで森さんの教義解説。
サムライは銃と砲に敗れた。
その後は、戦車を怪物と正しく定義した国に虐殺された。
海戦では、航空機が主役になると見抜けなかった方が敗れた。
異能が戦争を変えつつある。

だが、ここについては正直異論がある。文ストの考察とは関係ないので、ここは読み飛ばしていただいて構わない。
サムライだって銃も砲も使いこなしていた。単純に外国にはテクノロジーの差で破れた。それらを国産化できなかったし、射程や威力で大きく劣る装備が主力だったから。もちろん、銃だって時代遅れだった。
それでも、戊辰戦争では旧幕府軍が当時最新鋭のガトリング銃で新政府軍を薙ぎ倒した記録が残っているらしい。
戦車の有用性は、恐らく帝国陸軍も分かっていた。ただ、強力なエンジンも開発できなければ、十分な燃料も確保できなかった。教義の差で敗れたというよりは、やはりテクノリジーで敗れたと、僕は思う。それに資源力。
海戦で航空機が主力になったのは、これは必然ではなく偶然である。
マレー沖海戦という戦いで、日本が世界で初めて、航行中の戦闘艦を航空攻撃で沈めた。
タラント空襲や真珠湾攻撃で「停泊中の」戦艦は沈められていたが、「航行中の戦艦」が沈められたのは初めてだった。戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と巡洋戦艦「レパルス」が沈んだが、これは当時の英国の最新鋭艦であった。チャーチルにとっては、WWIIにおいて最悪の記憶となった戦闘である。
この時は、英国東洋艦隊の侵攻を阻止するために、急遽かき集めたポンコツ攻撃機と爆撃機で決死の攻撃を日本側がかけたのだが、山本五十六連合艦隊司令長官ですら「プリンス・オブ・ウェールズは大破が精一杯」と覚悟していたそうだ。もちろん、山本と言えば、日本の海軍航空戦力とは切っても切れない人物である。
最後の連合艦隊司令長官、小沢治三郎は沈みゆく「プリンス・オブ・ウェールズ」と司令官トーマス・フィリップスを悼み、「我々にも同じ運命が訪れる」と発言したのだとか。小沢は生き残るが。
それに、日本にも航空用兵の専門家はいた。例えば、第一航空艦隊第二航空戦隊司令官、山口多聞少将と、その盟友である源田実中佐。山口少将は準備不足を嘆きながらもミッドウェー海戦に参加、最初の奇襲を「飛龍」で生き残り、決死の反撃を行って敵空母「ヨークタウン」に甚大な被害を与え、味方潜水艦に撃沈させる功績を上げたが、その後の波状攻撃でフネと運命を共にした。
この時の艦隊司令官は「あの」南雲忠一中将であり、航空艦隊であるにもかかわらず、南雲の専門は水雷畑(要するに魚雷戦のスペシャリスト)という悲劇が起こっている。
完全に年功序列型人事なのだが、それと対照的に米海軍はハルゼー大将とスプルーアンス大将が交互に艦隊を指揮。
特にスプルーアンスは少将から何十人も序列をすっ飛ばした大抜擢だった。
余談だが、ハルゼー指揮の時とスプルーアンス指揮の時で、艦隊の名称を変えるという欺瞞作戦もやった。
ハルゼーは空母艦長はパイロット上がりに限るという不文律を理由に、老齢に差し掛かってからパイロット資格を取った程の猛将で、二人とも航空戦力に精通した優秀な将軍であった。
要するに、アメリカは別に先見の明があったわけではなく、「航空部隊は凄いぞ」ということを日本海軍に学んだわけであり、アメリカのとんでもない工業力(大戦後期には冗談ではなく「週刊軽空母」をやらかして、毎週空母を新造していたバケモノである)と、柔軟で信賞必罰の人事に日本は敗れたと言える。加えて、情報戦も日本は弱かった。が、決して、日本に先見の明がなかったわけではない。
(とはいえ、八木レーダーの話を持ち出されると、僕もそりゃ日本が悪い、としか言えないけれど)
もっとも、『紺碧の艦隊』で高野五十六が述懐するように、工業力に勝るアメリカに、航空機の攻撃力を教えてやったのが間違いだった、とも言えるが、最初に言ったようにこれは偶然だと思っている。

閑話休題。
そんなわけで、日本が旧式の教義に囚われて戦争に敗れたとは、僕は思わない。
そして、伝声管である。
「誰の心にも限界はある」。
ガシャン!
「君は正しすぎる」。
さあ、死んだばかりだ。
まだ間に合う、『君死給勿』を使うんだ!(鬼畜の所業)

思うに、軍上層部の多数派ではなかろうが、一部は間違いなく異能の有用性を知っていたと思う。
でなければ、この兄の部隊がここまで酷使されただろうか。
まともな「心ある」軍人であれば、とっくに部隊を交代させていたはずである。
与謝野さん以外は、ね——。
森鴎外の「不死聯隊」構想は、もう軍上層部としては検証は終わり、実証実験の段階に進んでいたのではないだろうか。
それにしても、森鴎外、強いね。メスで銀狼の刀と渡り合うって。政府最強の暗殺剣士と戦って互角って、あんた絶対に医者じゃないよ。どこで鍛えたらそうなるんだい。
マフィアの首領になるために武力は十分条件ではないけれど、必要条件だと思いました。
武力があっても首領になれるとは限らないが、武力がなければ首領にはなれません。
何が、「武では敵いませんので」だ。十分強すぎるわ。

そしてポポさん、いや、乱歩さん……格好良すぎる。
確かに『超推理』は強烈にして強すぎる。
『君死給勿』ですらも霞んでしまうほどに。

そして、恐らく次回、猟犬の5人目が判明するのだろうな、と予想。

さて、戦場で心が壊れてしまうというのはよくある話で、例えば『ゴルゴ13』の「装甲兵SDR2」で、気持ち悪くなるぐらい、しっかりとはっきりと描かれている。
完全に安全で、司令部の命令だけを聞いて、まるでゲームで人を撃つように攻撃する、乗り込み型のロボット兵器——SDR2。そんなバケモノが登場するのだが、この話がまあ『バトル・ロワイアル』も真っ青の、テロリスト同士による殺し合いゲームなのである。そこにゴルゴが巻き込まれ、なんて話なのだが、要点を言うと、たとえ自分で殺そうという意思がなくても、まともな人間にとって、人を殺すということは相当なストレスであり、PTSDを発症して狂ってしまうまでが鮮明に描かれる。

なんとなく、嫌な予感がした人は大正解。
原作漫画の第23巻では「大司令ワンオーダー」を巡る戦いが繰り広げられるのだが、「SDR2」ってまさに、大司令の目指した【やさしいせかい】である。
罪悪感のないまま人間を殺していけばどうなるのか。
罪の意識に悩まされない?
そんなバカなことがあるはずがない。全員、心がぶっ壊れるに決まっている。
そういうリスクに気付いて封印したのではなく、現場指揮官ではなく軍上層部が使うとヤバいから、——というのは、いくらなんでも大司令のリスク評価が甘すぎると思う。
というか、一回使えばそのヤバさが分かると思うのだが、まともに評価試験もしなかったのだろうか。というか、少しでも考えれば、そんなのすぐ分かるだろう!とツッコみたいのだが。
文ストの世界では、若干、マッドサイエンティストが幅を利かせすぎだと思う。

そこで僕は、完全無欠の「やさしいせかい」を目指したよ。完璧なる不死聯隊。
大司令で兵士を動かし、動けなくなった兵士は『君死給勿』で治療する。
『大司令』×『君死給勿』のパーフェクトコラボ!
わぁ、とんでもない地獄だ!
……まじで鬱になってくるよ、この妄想。

心が痛くなってきたので、最後に楽しい妄想をしよう。
なぜ、日本は戦略爆撃されなかったのか。
もしかして、常闇島のような島々がたくさんあって、ぐるりと日本を取り囲んでいたのでは?
当然そうなれば、爆撃機は飛べないことになる。
『ベクシル2077日本鎖国』では日本はハイテク技術を用いて鎖国体制を敷くのだが、同じように完璧に日本本土を「機械からは」守ることができていたのではないか。偶然かもしれないし、何らかの方法で日本は防衛策を見つけたのかも。
であれば、必死に戦ったのはなぜか。
欧州列強の異能兵器を恐れていたのでないかな、などと邪推してしまう。
さっさと講和を結ぶために、継戦主義者を暗殺したのも、それならば納得がいく。
日本は「神の国」であり、二度の元寇を「神風」が撃退した。
史実的にはただの台風なのだが、ロマンを感じるならば、神風を吹かせた=超異能兵器を開発した、なんて妄想も自由ではある。
ちなみに田中光二の『超空』シリーズの中には、元寇の時代に駆逐艦「神風」がタイムトリップしてしまい、二度と元の世界に戻れなかった代わりに、元の艦隊をボッコボコに蹂躙する話がある。神風が神国を救ったって話ね。
僕は結構好きなんだけど。

やっぱり、軍上層部の中には、異能に精通した人たちがいたのではないかなーと考える方が自然だと思う。
問題は、常闇島が自然現象、偶然の異能の暴走、計画された異能兵器のどれなのか、と言うこと。
いくらなんでも、自然現象でこれはないな、と考えていいだろうか?笑
さすがに、この時代に狙って常闇島を生み出せるような理論を日本が確立していたならば、戦争に負けていなかったような気もするし、異能が人口に膾炙していない点を考えても、偶然の産物と捉えた方が無難か。
Twitterで述べたけれど、異能の特異点(特に自己矛盾型の無限に繰り返せる異能の場合)は、ブラックホールに等しいと考えられるから、常闇島はホワイトホールに相当するような「何か」の産物だと嬉しい。
理論的にはブラックホールがあるなら、ワームホールを通じてホワイトホールに出るはずだから、世界のどこかでホワイトホールが開いていても不思議はない。
無限にエネルギーを生み出すのが特異点なのだがら、その逆ならば無限にエネルギーを「喰う」ことがあっても面白いと思う。その時に、電磁波を放射してオーロラを生み出し、電子機器をぶっ壊してしまう……のであれば、結構、話の辻褄はあってしまうのである。そんな理論は聞いたことがないのが残念だが。
電磁波はどこからやってくるのか?
それが分かれば、あるいは常闇島に昼がない理由も分かるかもしれないし、オーロラの謎が解けたり、さまざま、面白いことが分かるのだろう。
一応、無限にエネルギーを喰らうのであれば、太陽エネルギーも消失して夜になってしまうと考えるのも不可能ではないが……。

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