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私のスペイン900km巡礼記 in 2023春 #29 【27日目】巡礼路に現れた楽園のような休憩所〜アストルガで再びガウディ建築見学

こんにちは、ナガイです。今日はサン・マルティン・デル・カミーノからアストルガ(Astorga)へ向かいます。
前回の記事はこちら。

天気予報(アストルガ) 曇り 最高気温23℃ 最低気温10℃

5時半起床。まだ咳が残る。これは風邪ではなく喘息と言えば、もう少しまともな薬がもらえるだろうか、とふと思いつく。試しにアストルガの薬局で聞いてみよう。
6時出発。裏の勝手口から外に出た瞬間、目の前に一面の星空が広がっていて驚いた。

歩き始めてすぐに右足首の痛みを感じる。数日前から少し違和感を感じ始めていたが、それがいよいよ本格的に痛み始めてきた。まだ歩くのに支障が生じるほどではないが、少し気を使った方がよさそうだ。今日は早めに出られたのでゆっくりめに歩こう。

この時間でも車の交通量はまずまず多い。確かに国道沿いの道は面白みに欠ける。リスクを取らないから面白くない道しか歩けない、まるで自分の人生のことのように思える。東の空が明るみ始めた。

何やら塔が見えてきた。7時半にオスピタル・デ・オルビゴ(Hospital de Órbigo)の町を通過。昨日アニータ達が滞在していた場所だ。確かに町並みが美しく、規模もそこそこ大きいので滞在するのによさそうだ。

長い橋を渡った先にレストラン兼バルがあったので朝食を取ることにする。

Palmeraというパンとアメリカーノを注文。4.50ユーロ。橋の見えるテラス席で鳥の鳴き声を聞きながらコーヒーを飲むという出来すぎたシチュエーションに小っ恥ずかしくなる。

再び出発。ここ最近になって平べったいというか、鐘楼の幅が狭い教会をよく見かけるようになった。この地域の特徴なのだろうか。

8時半過ぎにビジャレス・デ・オルビゴ(Villares de Órbigo)の村を通過。
巡礼路に沿って歩いているとガレージの奥に男性が座っており、何やら手招きされる。どうやらクレデンシャルにスタンプを押してくれるそうだ。誘われるがままにガレージの奥へ入っていき、スタンプをもらう。クレデンシャルを返してもらう時にクラッカーを2枚くれた。0.50ユーロを寄付。

今日は曇りの予報だったが、日が出てきたのでサングラスをかける。

9時過ぎにサンティバニェス・デ・バルデイグレシアス(Santibáñez de Valdeiglesias)の村を通過。

ここの教会の鐘楼も薄型だ。家並みを見ながら歩いていたら道を間違えていたことに気づき、正しいルートへ引き返して村を抜ける。

今日は少し暑い。天候もそうだが、今日のルートはまずまずアップダウンがあり、風景もそれなりに変化するので前半の頃の道を思い起こさせる。

10時半頃、何やらキャンプ場のような場所に差し掛かる。何人か巡礼者がおり、その中にウリーとアニータもいた。どうやらここは寄付制の休憩所のようだ。

惜しげもなく食べ物や飲み物が置いてあり、まるで楽園のようだ。ウリーとアニータが遠慮なく飲み食いしているので、自分もいちご、バナナ、ヨーグルト、スイカ、飴を食べ、1ユーロを寄付。アニータが休憩所の運営者と思しき男性と話をしており、彼の首や手にひらがなや漢字のタトゥーが入っていたので写真を撮らせてもらった。

それにしてもここまで充実していると感動すら覚え、きちんと対価を払いたくもなる。この休憩所はスペイン巡礼の隠れ名スポットだろう。休憩所を出発し、ここからはウリー、アニータと一緒に歩く。

アニータに急性気管支炎で咳が止まらなくて困っているという話をすると、彼女が使っている吸入薬をくれた。実は彼女の仕事は医療関係で、吸入薬の使い方や用量まで丁寧に教えてくれた。その吸入薬はまさに自分が探し求めていたものだったので、相談すべき相手はごく身近にいたのだ。

11時過ぎにサン・フスト・デ・ラ・ベガ(San Justo de la Vega)の町に到着。
ここの教会は比較的新しく建てられたのだろう、モダンなデザインの建物だ。

12時半前にアストルガへ到着。ここでアルベルゲへチェックインするためにアニータとウリーと別れる。最初に私営のアルベルゲへ行ったが、なんとなく雰囲気が合わなかったので公営のアルベルゲへ行くことにした。

急な坂を上ったところに公営のアルベルゲがあり、チェックインする。宿泊代は7ユーロ。チェックインを済ませて部屋へ向かおうとすると、レオンのアルベルゲで薬をくれた韓国人の男性と会った。「体調は大丈夫?」と聞かれたので、アニータからもらった吸入薬を見せて「これがあるからもう大丈夫だよ」と答えた。

今日は暑かったからかシャワーが気持ち良かった。洗濯も済ませ、14時前に町へ出かける。

アルベルゲの目の前には教会がある。教会の前に設置されているガラスの屋根は下にある遺構を保護するためのもののようだ。

町を歩いているとアルベルゲの前のものとは別の教会や、広場にはアストルガ市役所がある。そこそこ大きい町のようだ。

スーパーがあったので立ち寄って水とクッキーを購入。2.61ユーロ。

十分歩いたのでバルでランチを食べることにする。

「ランチに食べられるものはある?ボカディージョとか」と聞くと、店員の女性がボカディージョはないがサンドイッチはあるという。英語版のメニューでボカディージョをサンドイッチと訳しているのを見たことがあるので女性の言っている意味が分からなかったのだが、まあいいやと思いハムとチーズのサンドイッチとコーラを注文した。そして、しばらく待って出てきたのがこれ。

トーストにロースハムとスライスチーズを挟んだ、確かにサンドイッチだけど…なるほど。店員の女性の愛想がやたら良く、食べている自分に「パーフェクト?」と親指を立てて聞いてくるので、こちらも親指を立てて「パーフェクト」と答えるしかなかった。4.20ユーロ。

一度アルベルゲに戻り、昼寝をしてから17時過ぎに再び外出。

何度目の正直か分からなくなってきたが薬局へ行く。今度は「少し前に風邪を引いてたんだけど、それは治って今は咳だけが…」という回りくどい説明はせずにシンプルに「喘息の薬ありますか?」と聞いた。そして、ダメ押しでアニータにもらった吸入薬を見せたところ、すんなり同じものを出してきてくれた。これだよ、ずっと欲しかったのは…。今回はさすがに急性気管支炎になることを事前に予測するのは困難だったが、海外だと薬の入手が容易でない場合もあるため、持病の薬は可能な限り日本から持参するのが望ましいのだろう。47.91ユーロ。

ようやく咳問題に解決の目処が立ち、晴々とした気分になったところでアニータから聞いていたガウディ建築を見に行く。アストルガのガウディ建築は司教館として建てられたもので、現在はレオンのカサ・ボティネスと同様にミュージアムとして見学できるようになっている。入場料は巡礼者割引で5ユーロ。

絵から飛び出てきたようなかわいらしさを感じる外観で、その独創的なファサードはいつまで見ていても飽きない。

中に入ると外から見た時とはガラッと印象が変わる。とりわけ2階にあるCapilla(Chapel)と名付けられた空間は入った途端に息を呑むような美しさだった。

レオン大聖堂といいガウディ建築といい、世界には生で見るべきものがあることを知ったこの数日間だ。外に出るのが惜しかったが、先ほどちょうど同じタイミングで見学に来ていたクリスティアーノと会い、彼から大聖堂は19時半に閉まるよ、と教えてもらったのでそちらへ向かうことにする。出口でクレデンシャルにスタンプをもらう。

アストルガの大聖堂はこれまたものすごい大きさで、ファサードはブルゴス大聖堂やレオン大聖堂に勝るとも劣らない壮麗さだ。

内部の見学は巡礼者割引で5.50ユーロ。クレデンシャルにスタンプをもらう。平日18時過ぎに見学に来ている人は少なく、ほとんど貸切状態で回ることができたが、中は別に見なくてもよかったかなという感じだった。

大聖堂を後にし、先ほど行ったのとは別のスーパーでオレンジジュースを購入。2.59ユーロ。夕食をどうしようか考えていて、ふとレオナルドに連絡してみようかと思いワッツアップを開くと、なんと彼から昼頃に「アストルガにいる?」と連絡が来ていたことに気づく。うわーやっちゃった、と思い急いで彼にお詫びの連絡をする。彼はすでにアストルガの一つ先の町にいるらしく、明日はフォンセバドン(Foncebadón)に行く予定とのこと。今日会えたらおすすめの日本の音楽を教える約束をしていたので、日本のバンドだとenvyが好きだという彼なら気に入ってもらえるかなと思い選んでおいたGEZANのアルバム『狂』のSpotifyのリンクを送る。他にも何枚かアルバムを選んであったが、「僕たちはまた会えると信じてるから、残りのおすすめはその時のために取っておくよ。シカといい夢見てね!」とメッセージを送った。

レオナルドからの連絡を見逃していたことに落ち込み、ディナーの店を探す気力もなくなってしまった。アルベルゲの近くの公園のベンチでチョコレートクッキーとアニータにまずいからあげると言われてもらったスイカのグミを夕ご飯代わりに食べた。

満腹になったのかよく分からないままアルベルゲに戻ると、ちょうどシヴが出てくるところだった。「ディナー食べたの?」と聞かれて「いや、実はこれ(チョコレートクッキー)しか食べてないんだよね」と答えると、「これからディナー行くところだから一緒に行く?」と誘ってくれた。誘ってもらえて嬉しかったのだが、中途半端にお腹が膨れてしまっていたため「次回行こう!」と言ってお断りしてしまった。なんだか今日は色々とタイミングの合わない日だ。
部屋でフィンランドから来たクラウスと話をする。彼のことは昨日サン・マルティン・デル・カミーノのボカディージョを食べたバルで見かけたり、今日も道を間違えた途中の村で休憩しているのを見かけたりして認識していたが、とても話しやすい青年だった。彼も明日はフォンセバドンまで行くつもりだそう。
明日からはいよいよイラゴ峠、オ・セブレイロ峠という難関が続く最後の山場が始まる。気を取り直して明日からの巡礼に臨もう。22時過ぎに就寝。

歩いた距離
今日22.8km 合計517.6km 残り262.8km

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