障がいを持つ子も持たない子も一緒のクラス(自閉症の子が小学校の6年間で大成長)
息子の通ったイギリスの公立小学校は、1、2年生、3、4年生、5、6年生が同じクラスに混じっています。1クラスは25人。クラス替えは2年ごとです。
息子が1年生で入学した時、ある自閉症を持つ2年生の男の子と同じクラスになりました。J君と呼ぶことにします。
J君のそばにはいつも優しい笑顔の女性がいました。彼女はオックスフォードシャー州の予算でつけられた補助のスタッフです。彼女の役割は、J君のそばにいて、J君がみんなと一緒に過ごしやすいようにアシスタントをすることです。ただ優しく見守り、本人がどこかへ行こうとしたら名前を呼んで「こっちよ」と誘導したり、戸惑っていたら声をかけて安心させてあげたり、ほかの子どもたちとのコミュニケーションを必要に応じて手伝ったり、ということをされていました。
また、クラス全体の子どもたちにも目を配り、必要なサポートをしていました。
毎日教室まで息子を送り届ける(イギリスでは小4まで保護者の送り迎えが必要)のですが、いつも教室にはJ君の姿がありました。お休みすることはほとんどなかったと思います。
おしゃべりはあまりしないようでした。補助スタッフの方に見守られながら自然にクラスに溶け込んでいました。
この小学校では、おそらくイギリス中の小学校が似た感じだと思いますが、冬休みの前にクリスマスコンサートが行われます。家族は1枚1ポンドの入場券(PTAへの寄付金になる)を買い、鑑賞します。
息子が5年生のときのクリスマスコンサートは、J君は6年生で、彼にとっては小学校生活最後のコンサートでした。
それは地域の少し大きなホールで行われました。ミュージカル劇です。
6年生たちは他の学年よりも少し大きな役をもらいます。
J君は本当にすばらしかった。言われなければ自閉症を持っているとは誰も思わないでしょう。
幕が上がり、数名のナレーターが登場した中にJ君の姿もありました。
無口だったJ君とは思えないような、しっかりとした声で、セリフを話すのです。
劇は進み、後半にJ君がまた登場しました。今度は詩の朗読です。よどみない、よく通る朗読の声がホールに響きました。
そして三度目のJ君の登場、コーラスでは、美しい声でソロを歌い上げました。
J君の小学校生活を知っているみんなが彼に魅了されました。拍手と大歓声が送られました。その会場の反応にJ君は嬉しそうに笑顔を返しました。そこには気持ちのやりとりがはっきりと見えました。
6年生になったJ君は、今夜のクリスマスコンサートの観客の心を全部さらって行きました。彼のお母さんは客席で涙を拭ってらっしゃいました。
たまたま自閉症を持って生まれて来た彼は、行政予算で付けられた専属の補助スタッフと一緒に1年生からずっと普通にみんなと一緒にすごしてきただけで、なんでも出来る人に成長しました。いや、元々なんでも出来る子だということを、わたしが知らなかっただけなのだ、と思いました。
障がいをもった子どもを普通学級で一緒に育てるインクルージョン教育(日本語は統合教育)は、このJ君の場合は、特別なクラスや養護学校に分離しないことで、地域にお友達も彼の成長を知っている人もたくさん出来ました。子どもたちはいろんな個性があることを日々学びながら成長でき、必ずや暖かい社会の一員となるだろうと思うと、社会にとって有益で、大変合理的な工夫だな、と思いました。
J君は小学校卒業後は地域の公立中高一貫校(セカンダリースクール)へ進学して行きました。
今でも街でたまにJ君やJ君のお母さんを見かけます。
笑顔で挨拶を交わします。そんな地域のお友達や知り合いに囲まれ、これからも彼は成長して行くでしょう。将来どんな大人になるんだろう。どんな仕事に就くのかな。とっても楽しみです。
最後にこの動画をご紹介します。
社会全体が自閉症という個性を持ったひとたちといつも一緒にいられるようになりたいですね。
あなたなら どうする? -自閉症児と出会ったらー https://youtu.be/6qPj7J8Bho0
それでは、また。
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