大好きなぬいぐるみと一緒に授業を受けた息子
「学校には勉強に関係のないものは持って来てはいけません」
日本の学校ではふつうに言われることですね。
下の息子にはお気に入りのぬいぐるみがあります。
Mr Beanに出てくるテディベアです。
テディベアだから、てっちゃんという名前です。
5歳のときにイギリスに来て、イギリスの小学校1年生に通い始めたころの息子は、まだ英語がよくわからなくて、お友達とも自由にお話ができません。毎朝不安そうな表情で学校へ通う日々でした。
イギリスでは小4までは保護者が登下校に付き添いをする決まりなので、わたしも教室の入り口を入ったところまで同行します。
クラスの補助の先生が笑顔で迎えてくれますが、息子はどうしても朝は寂しくなってしまって時には大粒の涙がこぼれることもありました。
そんなある朝、息子はこの「てっちゃん」を持って登校しました。
わたしたち親子を見ていた補助の先生が、
「Do you want to keep this Teddy with you?(ぬいぐるみと一緒にいたい?)」
と息子に話しかけました。
授業に関係ないものは当然親が預かって持ち帰りだろうと思っていたわたしはちょっとびっくりしました。
息子にあらためて日本語で、
「『てっちゃんと一緒にいたい?』って訊いてくれたけどどうしたい?」
と訊くと息子は思いっきり頷きます。
補助の先生はニッコリと、
「じゃあ、一緒に勉強しましょうね。」
と言って、息子の手にテディベアを持たせました。
息子は嬉しそうにてっちゃんと一緒にじぶんの席につきました。
午後3時、学校へお迎えに行くと、息子がニッコニコで教室から出て来ました。彼の胸には丸い金色のステッカー(シール)がついていました。
「これ何?」
「ぼくがんばったからもらったの」
(イギリスの小学校では「よくできました」の意味で胸にステッカーをくれることがあります)
そして息子が抱いているてっちゃんの胸にも赤いシールが。
「あれ?てっちゃんにもステッカーついてるね、これどうしたの?」
「うん、一日中静かにしていい子だったからステッカーもらったんだよ。」
もうこれ聞いて泣きそうになりました。ぬいぐるみが静かにしていたからいい子だって。
なんてあったかいんでしょう。
このことをツイッターでお話ししたら、フランスではぬいぐるみ禁止ですと教えてくださった方がいらっしゃいました。同じヨーロッパでも国によって違うんですね。イギリスではOK。
息子の小学校では、ぬいぐるみと一緒に学校に行きたければ、何年生でも、いつまででもOKらしかったですが、息子はてっちゃんと一緒の登校を「もうぼくひとりで大丈夫」とじぶんで決めるまで、半年くらい続けました。
てっちゃんは息子にとって本当に大事なお友達で、毎晩抱っこして寝ていました。
ある夜、息子が、
「ママ!てっちゃんがいないの!」
と深刻な顔でやって来ました。
家中どこを探しても見つからない。
もしかしたら学校帰りに寄ったスーパーに忘れたのかも知れない、ということになり、夜の9時に、夫がそのスーパーに行きました。
そこでの会話が最高でした。
夫が店員さんに、
「テディベアの忘れ物ありませんでしたか?」
と訊くと、その店員さんはマネジャーのところへ行き、
「This gentleman is looking for his teddy bear.(この紳士が彼のテディベアをお探しです)」
とまじめに報告したそうです。
イギリスのひとたちにとって、テディベアやお気に入りのぬいぐるみはとても大事な存在です。ボーイスカウトのキャンプの持ち物リストにも「テディ」が堂々と入っているくらいです。なので大の大人がテディベアを探しているというシチュエーションも全然ありなようでした。面白かったです。
なくなったテディベアは翌日学校で発見されたのでよかったですが、夫のほうは、夜寝る前に大事なテディベアを探しに来た大人としてスーパーの方々に覚えられてしまったであろうことはちょっと気の毒でした。ふふ。
今回も最後までどうもありがとうございました。
ではこのへんで。
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