我輩は介護をやめるはずである。
我輩は10年間続けた正社員での"介護職"を辞めた。
後悔は一切ない。
と言い切ることができれば良かった。
しかし、現実はそう簡単にはいかない。
我輩は"うつ"状態で仕事に行くことができなくなり休職、そのまま有給消化という形でフェードアウトしていくようにそっと"介護"という仕事から離れた。
正直辞め方としては良くなかったし、納得できていない。引き継ぎもまともにせず、逃げるように辞めていったと、側から見たら思われてもしかたがない。
現場で実際に働いていた我輩がひとり抜けるだけで迷惑をかけることは日頃の忙しさからわかっていた。残された職員のことを思うと申し訳なさは残っている。
そして、なにより後悔しているのは利用者に何も伝えられていなかったことだ。利用者の立場からすると、ある日突然ひとりいなくなるわけだ。最初は「休み」とでも言っておけば済ませることができるが、それもずっとは通すことは難しい。
そもそも"コンプライアンス"というものがあるため、辞めること自体公表しないことになっている。仕方がない。
それでも時折、利用者さんの顔や言動がふと浮かんでくるときがある。我輩はやはり後悔しているのだろう。
もっとも人間というものは忘れやすい生き物なので、すぐ忘れられるだろうし、我輩も次の環境に身を置けばきっと忘れてしまうのだろう。
我輩が"介護"という仕事についた理由。それはただ単に"向いているかな"というものだった。正直"やりたいこと"は心の奥底にあった。そこからはずっと目を背けていた。
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